貴方は恩人で友人。
「お二人とも、そろそろ弾吸楽談会が始まります」
瑶晩が告げる。
「行きましょうか」
琴を丁寧に包み背負いつつそう言うと。
「そうだな」
微笑むと今度は並んで話し出した。
昨日も来た会場へ着くと、すでに多くの修行者達が集まっていた。ガヤガヤと騒がしい中、よく通る声が席の案内をしていた。
「白虎からお越しの方はこちらです」
その場で立ち止まり案内の人へ聞いてはいないだろうが礼を言う。そして白噬明は朱玲叡の方へ向き直った。白噬明が言葉を紡ごうとするがそれより早く彼の口が開く。
「ここでまたお別れだな」
「そうですね」
「まぁ、どうせ観客席から見えるけどな。兄さんは何番目に出るんだ?」
「ふふ、確かにそうですね。私は三番目に出ますよ。姉上と合奏するんです」
そう伝えると彼は微笑んだ。三番目と言う言葉を確かめるように口に出し楽しみにしていると言った。去り際にちゃんと見てるから。と手を振って朱家の席の方へ歩いて行った。
「……師兄」
朱玲叡がその場を後にしても去っていった方に顔を向けてた。そうしているとそれを見かねてか瑶晩が口を開いた。
「どうかしましたか?」
「彼とはどういった関係なんですか?」
「彼は──」
向こうへ目をやると遠くで紅色の服が揺らいでいた。白噬明はひと呼吸置いてから「彼は」ともう一度言い続けた。
「私の恩人で友人です」
「なるほど。ですが師兄。そうは言っても朱家の人達です。警戒しておいた方がいいかと思います」
瑶晩が真剣な眼差しで白噬明を見つめる。確かにあまり朱家とはあまり仲は良くない。よく絡まれたりするため彼が心配するのも無理はない。しかし白噬明はそんな心配はしていなかった。
「わかっています。大丈夫ですよ、それに──」
言いかけたところで先程のよく通る声に遮られた。
「皆様。改めてお集まりいただきありがとうございます。これより宗主様から開催のお言葉を頂き、その後に宴を開始します。では、宗主様お願い致します」
そう言うと昨日と変わらぬ微笑みと共に始まりの挨拶をした。しかし白噬明の視線は朱宗主には行かずに朱玲叡に止まていた。彼はこちらには気付かず静かに宗主の話を聞いている。話が終わるとまたあのよく通る声が最初に曲を披露する仙門の名を呼んだ。それも微かに聞こえた程度だった。
「青龍氏。お願い致します」
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