丁寧な先生
「まずはここに手を置いてください、こっちの手で……そうです」
「次はここまで弾いてみましょうか。もう一度ゆっくり弾きますから、見ててくださいね」
彼は
「あ、そこの音はそれじゃないです。それはもう一個下の弦がそうです」
「兄さん厳しいね……えーと」
一音ずつゆっくり覚えていき、その部分をなんとか引き終えた。褒める
「あれ、
彼が尋ねると
「
「本当か⁈ ありがとな」
「この油条、美味いな!」
「そうですね。
「うん……なになに? 美味しい食べ方があるのか?」
「美味しいかはわからないですけど」
「私はこうして食べるのが好きなんですよ」
そう言うと、
「へぇー……」
彼にしては、歯切れの悪い様な曖昧な返事が返ってきた。
「……どうかしましたか?」
「あ、いや。何もないよ」
そう言っていつもの様に彼は笑った。しかし。
(何か今、壁を作られた……?)
そうは感じたものの朝餉を摂るとまた練習へ戻りそんなことを考えるよりも
「ひ、弾けた! 一番だけだけど……」
「いえ、そんな。弾けただけでも凄いですよ」
「ははっ、そうか?」
照れくさそうに視線を逸らすと
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