琴の白先生
「──そうなんですよ! 師兄は本っ当にすごくて」
「じゃあ、今度お兄さんに見せてもらお〜」
二つの声は部屋の前まで来ると話し声は止んだ。そして戸を叩く音が部屋に響く。
「
体をゆっくりと起こすと、昨日より調子が良く体が軽いことに気づいた。
「おはよう。起きてるよ」
扉越しにそういうと今度は
「おはよう! 白のお兄さん。暇だから来ちゃったよ」
「朱さん? 暇って……貴方は出ないんですか?」
そう言うと外から大きな笑い声が聞こえてきた。
「ははっ! 俺はそういうの苦手だから出ないよ。ていうか出させてもらいないからね」
すると彼の隣にいるであろう
「どうしてですか?」
「うーん、恥ずかしい話なんだけど笛でみんなを気絶させたことがあってさ、あとは琴は弦が切れたり、それと太鼓には穴あけたりとか……はは。それ以来、楽器は一回も触らせてもらえてないよ」
「ふふ、そうですか。では機会があれば私が教えますよ」
と言うや否や、
「よかったですね! 朱公子。師兄は教え方も凄く丁寧ですし、きっと上手くなりますよ。何より師兄のことは一流なんですから、本当に凄くてこの前も━━」
その後はすごいすごいと自分を褒め称えるので、居た堪れず顔が熱くなるのを感じた。それと戸越しで良かったと心底思った。顔が赤くなったのならきっと彼に揶揄われるだろう。
「ふ、二人とも、私は支度をしてきます」
「まってるよ」
「わかりました!」
しばらくして、
「おっ、兄さん来たな」
「お待たせしました。
「丁度、
それを聞いた
「それなら昨日一緒にいた涼亭がいいと思うけど……何するの?」
「それはついてからのお楽しみです。
「では、行きましょうか!」
「お、うん」
「兄さん?」
「見ていてくださいね」
にこやかに笑うと、弦をそのしなやかな指で爪弾き音を奏で始めた。流れ出した音は懐かしく誰もが知っている曲。小さな子供に聞かせるような曲が透き通った琴の音で奏でられてゆく。曲が終わると白噬明(ハククウメイのは
「まだ時間があることですし、私が少し先生になるとしましょう」
「え? 兄さん。それってどういう……」
立ち上がるなり
「琴を教えます!」
「えぇ、無理だって。兄さん俺弾けないし、弦が切れたら困るだろ〜?」
「大丈夫ですよ。片手で弾ける曲ですし、それに……私も貴方に何かしてあげたいんです」
「……そういうことなら、どうぞよろしくお願いします」
「はい!」
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