第3話僕の人生

テレビ電話に映るのは母親と妹で、母さんは父さんが蒸発してから女手ひとつで育ててくれた。


はじめは、最近どう?とか頑張ってね。といういつもする話だったが

次第に母さんの表情が暗くなったのを感じた。


「実はお母さんね、失業したの」

「え?」


それからの内容はこんな感じだったと思う。

高校は行かせられるけど、できれば大学には行かないで就職して欲しいこと。

お金はのことは気にしなくても、お爺ちゃんに援助してもらうこと。

他にも何か言われたかもしれないが覚える気力がなかった________。


僕はその地に足つかない状態のままバイトに向かった。


「いいかッこのご時世にお前を雇ってやってるのに、こんな仕事しよって!」

「ロボット代ケチってるからでしょ〜」

「うるさいっ!!!」


僕はバイト先でミスをしてしまい、店長に怒られる。

店長の奥さんはフォローしてくれたけど、やっぱり僕が悪いのは間違いなかった。


怒られること1時間。僕は給料の出ない時間を店長に怒られるだけだった。

深夜二時頃だっただろうか、僕は失業者のコミュニティを見つけた。


僕もああなるかもしれない。


母親が失業者になったことで、就職は困難な状況なった。

親が失業者だと企業は使えない奴だと判断される。それは日本独自の図り方かもしれないが日本にいる以上、郷に入っては従わなければいけないのだ。


そう考えながら、失業者のいる場所にある焚き火をぼうっと見つめていると。


「これ、買ってください」


まだ齢4歳ぐらいの子が僕に声を掛けてくれた。

僕は初めて躊躇してしまった。


___________そして僕は買わない選択肢をとった。


息をするのも忘れ走り出した。

マンションに来る頃には全身汗だくで肩で息をするほどだった。


僕は自分の思っている事に誇りを持っていたはずなのに

今はその言葉に押しつぶされそうになっていた。


思いやりの時代になればいい。


そんなの恵まれてたから言えるセリフだ。いざ自分が失業者側になった時、その落ちぶれようはどうだ。人を助けようともしないじゃないか。


死んでしまいたい。

ああ、皆こんな惨めな気持ちで生きてるのか。


カード型携帯が鳴り響く、こんな時でも携帯を見てしまう自分が嫌になった。


【世界を救うにはどうしたらいいか】


「?」


マザーから連絡が来たが、意味が分からなかった。マザーの誤送信?なんだ?アンケートだろうか。でも僕はおぼつかない思考でメッセージに返信した。


【皆死ねばいい】



その翌日、東京にミサイルが降るのを僕はまだ知らない。

TVでは僕がミサイルを打ったテロリストになってるってことも。

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