第22話 土壇場の覚醒
「———ハハハハハ! 楽しいな! 俺はまだまだ強くなれる!」
「俺は全く楽しくないがな……!!」
高笑いを続けながら1つ1つに『侵食』の特性が篭った魔力弾を無数に放つヴォイドロード。
侵食の打ち消し方法は、魔力を侵食が侵食しきれない程注げばいけるが、相当な魔力が必要になってくる。
……くそッ……今はまだ何とか均衡状態を維持しているが……時間が経って不利になるのは間違いなく俺なんだよな。
しかし、俺の頭には全くと言っていいほど奴の倒す方法が思い付かない。
いや、1つだけあるにはあるが、肝心の溜める時間がそもそもないので撃てないのだ。
「せめてもう1人居れば……」
「———なら僕に任せて」
その言葉と共に、突如俺とヴォイドロードとの間に巨大な竜巻が出現する。
竜巻は侵食を飲み込みながら真っ黒に染まっていく。
「アーサー!? お前如何して此処に!?」
「そんなの言ってる時間はないよシン。まずは目の前の敵を倒さないと」
「あ、ああ、そうだな」
俺は雷を無数に放ちながら、学園を守る積乱雲に更なる防御魔法を掛ける。
今回はアイツの攻撃を防ぐのではなく、俺の攻撃の余波が学園に届かない様にするためだ。
「シンには何か作戦があるんだろう?」
「ああ……一応あるにはあるんだが……如何せん溜めに時間が掛かる……」
「大丈夫だよ。僕とアウラで何とか足止めして見せるから」
アーサーが力強くそう宣言すると共に、アウラがこの世界に顕現する。
すると、今にも崩壊しそうだったヴォイドロードを閉じ込めている竜巻が一気に勢いを取り戻し、周りの雲や雷なども飲み込んでより巨大化。
しかし———
「く……まさかこれほどまでとは……少し予想外だね……」
竜巻は瞬く間にドス黒い魔力によって侵食され、霧散する。
それと同時にドス黒い魔力弾がアーサーを狙って放たれ、おおよそ人間の回避できない速度で襲いかかる……が、俺が割り込んで雷を放ち撃ち消す。
「ありがとうシン———《神風刃》!!」
『《神風刃》! 本当におかしいですね……何故邪神がこれ程の力を……』
俺と入れ替わる様にしてアーサーとアウラが全てを切り裂く神の風刃を放つ。
その瞬間———見えないはずの風がハッキリと可視化する程に魔力の篭った風の刃が、俺の雷も雲も、奴の魔力弾すらもまるで豆腐の様に両断してヴォイドロードに迫る。
「コレはマズいな……」
ヴォイドロードは流石に笑みを消して受け止めるのではなく避けた。
しかし———風の刃は逃さない。
「っ!?」
2つの風の刃は直角に進行方向を曲げ、ヴォイドロードを追随。
コレには流石に驚いた様子のヴォイドロードだったが———
「あまり———舐めるなッ!!」
全身からドス黒い魔力を噴き出し、幾重にも重なって風の刃から身を守る防壁となる。
それにぶつかった風の刃は、何重も切り裂いていくが……10層辺りで消滅した。
しかし、ドス黒い魔力は泊まることを知らず、徐々に空間自体を侵食し始める。
更には———
「来い———俺の眷属」
侵食された空間から、奴に取り込まれたのであろう無数の邪神が現れる。
それの強さは様々で、一瞬で滅ぼせる雑魚から、最初に出会った邪神程の強さのモノや、強い者ではロキ程の強さの邪神まで姿を現し始めた。
唯一の救いは、全員に理性というものが存在せず、狂乱状態に陥っているところか。
「シン……」
「ああ……ゲームにはこんな攻撃方法無かったぞ……土壇場で全く違う技出してくんなよ……」
俺は一先ず雑魚から雷雲を操作して滅ぼす。
雷鳴が鳴り響き、まるで雨の様に雷が降り注ぐ。
その威力は凄まじく、中位までの邪神ならば瞬殺出来るほどの力を有していた。
「「「「「「「ガァアアアアアア———ッッ!!」」」」」」」
悍ましい悲鳴を上げながら消滅していく邪神達だが、あくまでそれは雑魚ばかり。
強力な邪神達は雷を受けても死んでおらず、更には身体が刹那の内に再生していた。
「くそッ……本当に面倒だな……」
「《風ば———っ!?」
「アーサーッ!! チッ、邪魔だ!!」
アーサーが魔法を発動しようとした瞬間にヴォイドロードが放った魔力弾がアーサーの肩を貫く。
肩から血が噴き出し、アーサーはその痛みに思わず顔を歪める。
俺は助けに行こうとするものの、魔力弾が全方位に展開されており、邪魔で迎えない。
そんな中、アーサーの下にヴォイドロードが接近し、貫手でアーサーの心臓を貫こうとする。
「———アーサーッ!!」
「く……」
「コレで1人———グハッ!?」
ヴォイドロードの手がアーサーの身体を貫かんとした瞬間———白銀の光と共にヴォイドロードが突如吹き飛ぶ。
それと同時に目の前に白銀の髪を靡かせる少女が現れる。
彼女からは俺と同等の格を感知した。
「ははっ……流石俺の推しだな……」
この土壇場で精霊同化を成功させた我が偉大なる推しに目を向けた。
「———私がいる限り絶対に誰も殺させはしないわ」
白銀のドレスに身を包んだヘラが鋭い瞳でヴォイドロードを睨んでいた。
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