第19話 隠れ最強&神霊VS原作厨&???の最終決戦

「———こっちはこれで大丈夫か?」

『そうじゃな。あのアーサーとか言う小童も神霊契約者じゃし、教師も来たしのう』


 俺達は教師達に運ばれるヘラやヴィルヘルムを上空から見守りながらも、どんどん魔力を広げて、先程逃げたあの転生者を探す。

 取り敢えずこの森には居ないのは確認済みなので、更に魔力を広げてみる。

 

 悪魔学園には居ない……か……ならもっと広く……。


 俺は固有精霊界からも魔力を引き出して更に捜索範囲を広げる。

 今まで半径10キロ程度までしか感知した事がなかったのに、今は既に100キロを超えており、正直頭が痛い。

 いつもの10倍の範囲を感知しているから当たり前と言えば当たり前なのだが……マジで頭が割れそうな程痛い。

 平衡感覚も段々無くなってきた。


「うっ……マジでヤバい……は、吐きそうにもなってきた……」

『お主大丈夫か!? 一体どれ程の範囲を感知しておるのじゃ?」

「……100キロだ……この森意外と広いんだよ……爺さん……交代だ……」

『お主……人の身でよくそれ程の広さの感知をしたのう……お主本当に人間か?』

「失礼だぞ爺さん。俺は歴とした人間だ」


 顕現した爺さんが、何故か露骨に引いた様な表情をする。

 確かに100キロは俺でも凄いと思うが、これくらいなら出来る人普通にいるはずだ。


 現にアーサーくらいなら余裕でやってのけそうだしな。

 風属性だから、感知が得意なキャラでもあったし。


『神霊契約者は人間ではないのじゃ……人外じゃよ———っと、見つけたぞい』

「よし、散々ボロクソに言われた気がするが、それは後でにしよう。先ずはあの転生者をぶっ飛ばしに行くぞ」

『何か対策はあるのか?』

「まぁな」 


 俺は爺さんの案内の下、あの転生者が居るらしい精霊学園に一瞬で戻って来る。

 どうせ魔力が使えなくなるので、魔力の残量気にせずぶっ飛ばしたら、《雷人》になっていないのにマジで亜光速くらいの速度が出た。


「爺さん、本当に精霊学園に居るのか?」

『勿論じゃ。何人たりとも儂の目は誤魔化せんぞい』


 ほんの少し心配だったので、一応自分でも感知を発動してみると……確かに奴の気配があった。

 同時に奴の正体も分かってしまった。

 

「……なるほどな……通りで転移魔法が使えるわけだ……」

『何か分かったのかのう?』

「ああ」

『じゃが……一体どんな方法で奴と渡り合うのじゃ? 魔力を失えばお主は勝てぬぞ?』

「……彼奴はあの能力は禁忌目録アカシックレコードの能力だと言っていた」


 禁忌目録は世界の理に干渉するもの。

 しかし決して万能ではなく、この世界以外で使うことは不可能なのだ。


 つまり———この世界とは別の世界に連れて行けば良い。


『———我が呼び掛けに応じ、異界へと続く扉を開け———ゲート』


 俺は記憶した奴の魔力を俺と爺さんの固有精霊界に接続させ、固有精霊界のゲートを開く。

 瞬間———固有精霊界に繋がるゲートがこの世界に現れ、校舎ごと飲み込むと———


「あ……? 此処は……何処だ?」

「初めましてで先程振りだな……ルイ。いや———自身の身体がカイに見える様に幻術を掛けていた原作厨さん?」


 入場を許可された者———つまり原作厨だけがこの空間に残る。

 そして残ったルイの身体が朧げとなり、その中から全く知らない人間———原作厨が現れた。


 そう———俺がこの手でカイを殺したその時から、もうこの世界に主人公は存在しないのだ。

 ただ、死んだ主人公に代わって、原作厨が禁忌目録アカシックレコードで自身の身体を幻術で変化させると、皆の記憶を書き換えただけである。


 ルイ改め原作厨が驚きの顔で俺に訊いてくる。


「……どうして分かったんだ……?」

「———魔力の質だ。この世で魂と同じで唯一不変な存在だ。お前は巧妙な幻術は魂を覗ける神霊すらも騙せられるらしいが……流石に全ての魔力までは隠せなかったようだな」


 まぁ魔力は多ければ多いほど隠蔽するには厳しくなるからな。

 俺も既に魔力を抑えることを半ば諦めている状態だ。


 更に———先ほどの奴の姿を見て確信した。


「———お前の持っている禁忌目録アカシックレコードの力って、あの世界以外では使えないんだろ? 使えるのなら、お前に掛かった幻術も解けるはずがないからな」

「…………良く分かったな」


 そう言いながらも、先程から奴はずっと余裕そうな笑みを剥がさない。

 まるで、今でも自分の方が格上であると確信しているかのように。


「……その余裕そうな面、俺が2度と浮かべれないようにしてやる———《雷人》」


 俺は奴に不気味に思いながらも《雷人》を発動して、自身の身体を雷に変換する。

 更にこの空間は全て俺と爺さんの魔力なので、俺が雷人化すると、空間中の稲妻が激しく唸りを上げて俺の身体に流れ込み、より俺の身体を強化した。


「———ふふふ……ははははははっ!」


 しかし、原作厨は俺の姿を見て嗤う。


 まるで———俺の抵抗が無意味だと嘲笑っているかの様に。


「……何がおかしいんだ?」

「いや……たかが神霊程度で俺に挑むなんて馬鹿だな……と思っただけだ」

『———神霊程度だと?』


 流石の爺さんも原作厨の全ての精霊を侮辱する言葉には些か堪忍袋の尾が切れた様だ。

 爺さん———本気になったゼウスは、全身に俺以上の雷電を纏い、雷で出来た杖———《雷神の罪杖》を何度が地面に突くと、空間中を包む程の蒼白の稲妻が発生する。


『小童よ……禁忌目録アカシックレコードを持ったからと言って、世界の守護者である神霊を舐めないことだ』


 流石だな。

 その身体から出る莫大な魔力と威圧感の影響で、空間の重力を強くしたかの様に身体が重くなる。

 俺は一度体験したことがあるので分かるが———相当苦しい。


 奴もいきなりの事に少し目を見開いて地面に膝を付いた。


「これは……ふむ、確かに神霊もに力を持っている様だな」

「『それなり……?』」

 

 俺達の顔が険しくなり、それと比例する様に黄白の稲妻と蒼白の稲妻が入り乱れて荒れ狂う。

 そんな中で———奴は再び嗤った。



「そうだ。———コイツには敵わない」



 ———瞬間、奴の体から、俺とゼウスの世界である固有精霊界に、見るだけで恐怖を覚える程の深淵を感じさせる底なしのドス黒い魔力が発生し、触れた稲妻を跡形もなく消滅させて世界を塗り潰していく。

 

『っ!? 儂等の世界が……侵食されている……!? まさか———最上級の邪神か!?』

「———正解」


 原作厨の言葉と同時に一体の邪神が現れる。

 俺はそれを見た瞬間に激情に駆られた。


 コイツは……原作を再現したかったんじゃなかったのか……!?

 なのに何故……!!



「———何故貴様がソイツと……ヘラと契約し、主人公を苦しめるラスボス———


———邪神ヴォイドロードと契約しているんだ……ッ!!」







 物語は佳境を迎える。


————————————————————————

 はい。

 と言う事でとうとう原作厨が何をしたいのか不明になってきましたが……遂に原作最強キャラのお出ましです。

 

 それを相手に、シンとゼウスは一体どうやって戦うのか……?


 是非お楽しみに!!

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