第9話 先輩方VS悪役と隠れ最強①
昨日の2話目の応援コメント、過去一で平和すぎて草
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次の日。
学年問わず、学園中がたった1つの話題で持ち切りとなった。
———『冷徹令嬢』が学園一部員の少ない武術部に入部。
因みに『冷徹令嬢』はヘラの2つ名だ。
常に素っ気なく、試験の時に恐ろしいほど無表情で試験官を圧倒したためにそんな呼び名が自然と定着していった。
そんな彼女が学園で最下位の武術部に入部という大ニュースは、たった1夜で学園中に知られることとなり、ヘラの教室は生徒でごった返しているとか。
挙げ句の果てには教師が何人も駆け付けて場を収めるまでに至ったらしい。
そんな大変な事が起こった日の放課後。
俺は教室の扉で、まるでお地蔵さんの様に固まっていた。
理由は単純明快。
「せ、折角同じ部活だし……一緒に行かない?」
その噂の中心であるヘラが、俺を部活に行こうと誘うという
ヘラは初めて友達を誘うという事で恥ずかしがっており、いつもの無表情が崩れていることから、更に俺の心臓に大ダメージが入り、人が余計に集まる。
「お、俺……?」
「? シン君以外同じ部活の人、いないわよね?」
「し———っ!?」
俺はヘラの爆弾発言に驚き、あたりを急いで見渡すが、アーサーが風魔法で声を聞こえなくしてくれたらしく、他の生徒達には聞こえていなかった。
「へ、ヘラ様……」
「ヘラでいいわよ。というか昨日からそう言っているはずだけど……呼んでくれないの?」
ヘラが少し悲しそうに眉を八の字に寄せ、しょんぼりとした雰囲気を纏う。
「………………ヘラ」
「はいっ」
先程の悲しそうな表情から一転。
見るからに嬉しそうに微笑を浮かべながら返事をする。
くっ……可愛過ぎる……!
何だよこの『可愛い』の根源みたいな生き物は。
俺が推しの可愛さに心臓を抑えていると、辺りがザワザワしていることに気付く。
何事かと思って皆の視線の先を辿ってみると……微笑を浮かべたヘラの姿。
普段ヘラは誰にでも、いつでも無表情。
そんなヘラが微笑を浮かべている。
それも男の前で。
———非常にマズい。
俺の頭が、僅か数瞬の間にその結論を出すと———
「———今すぐ一緒に部室行きましょう」
「ふふっ、シン君って意外と即断即決な所があるのね」
速攻でヘラの誘いに乗って、生徒の大渋滞から楽しそうに笑うヘラを護りながら生徒共をかき分けて部室へと直行した。
途中で推しの物凄く良い匂いがして危うく気絶しそうになったのは俺だけの内緒だ。
「…………どういう状態ですか、先輩方?」
「見ての通りだ! 学園一マイナーな我らが武術部に全盛期が来ているのだよ!」
「そんなわけないでしょ! どうせ皆ヘラさん目当てに決まってるじゃない! それじゃなかったらこんなマイナーな部活、シン君みたいな一部を除いて誰も入らないから!」
「……申し訳ありません、私のせいで……」
「「全然大丈夫! この光景が見れて幸せだから!」」
俺達武術部の部員は、部室の扉を叩く無数の生徒達を見ながらそんな事を言い合っていた。
やはりヘラの知名度は凄まじいモノで、同学年どころか、明らかに先輩だと思われる生徒も混じっている。
「……そのまま修練場に直行しようか。一応修練場にも更衣室あるしね」
アイリーン先輩が、頭をかきながら苦笑いを浮かべて言った。
だが、誰からも文句が出ない辺り、目の前の部室の凄惨さが際立つ。
きっと今頃、部室の中でドバン先生は沢山の生徒の対応に追われているだろう。
「ドバン先生には申し訳ないが……俺達が対応するだけ無駄だからな! ヘラさんがいる事がバレない内に修練場に逃げようか! 今日は武術部の貸切だしな!」
バージ先輩が先陣を切り、なるべく人の通らない場所を通って修練場に向かう。
その途中で、前回行った修練場のルートとはあまりにも違うことに気付き、俺は思わず質問する。
「もしかして第0修練場に行っているんですか?」
「おっ、新入生なのによく知っているな。そうだ! 俺達武術部の先輩が必死にお金を集めて修繕した、最新鋭の修練場だぞ」
「まぁ校舎からあまりにも遠いのが難点だけどね? 今日に限ってはバレにくいから良いでしょ?」
「そうですね。流石先輩方」
「先輩……なんて甘美な響きなんだぁ……私、卒業してもこの部活に残りたい……!」
「……むぅ……」
アイリーン先輩が嬉しそうにだらしなく笑うと、横でヘラが小さく頬を膨らませてジト目で俺を見ていた。
物凄く可愛いけどどうしたんだ?
ヤキモチ……は無いだろうから、俺が軟派な人に見えたのかな?
俺が軽く傷付いていると、森の木々に隠れる様に建った第0修練場を見つける。
「着いたぞ! さぁお互い着替えたら早速バトルだ!」
そう言って俺の腕を掴んで男子更衣室へと走るバージ先輩に連れられて俺も更衣室へと半ば無理矢理連れて行かれた。
「それじゃあ始めようか! チームは俺とリーン、ヘラさんとシンでいいか?」
「大丈夫です」
「同じく大丈夫です」
ヘラはいつも通り表情で、俺は死ぬほど緊張しながら返事をする。
何となくこんなチーム分けになるとは分かっていたが……分かっていても緊張するのには変わらない。
「宜しくシン君。頼りにしてるわ」
任せてください我が推しよ。
俺が必ずこの試合の陰の立役者になって見せますから。
———なんて俺は言える訳もなく、頻りに首を縦に振るばかり。
それだけでも感情の読めるヘラなら伝わるだろう。
「それじゃあ———始めようか」
バージ先輩もアイリーン先輩もいつもの雰囲気は鳴りを潜め、凍てつくほどの殺気を纏う。
それに倣って俺達も即座に戦闘態勢に入る。
「魔法は禁止、相手が降参と言ったらすぐにやめる事。それだけがルールだ」
「「はい」」
「取り敢えず初手は2人に譲ろう。いつでもかかってこい!」
バージ先輩の言葉とほぼ同時に、俺達は地を蹴って強襲した。
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現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。
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