第4話 隠れ最強と友人と悪役
途中までヘラ視点。
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時間は戻って十数分前。
私———ヘラ・ドラゴンスレイは、どうしても彼の事が気になってしまい、私に群がる虫貴族令嬢や子息を撒いて、放課後を知らせるチャイムと共に教室を出た。
そして彼がいるというCクラスに向かったのだが……その途中の廊下で、彼と貴族のパーティーで何度か見た事のあるウィンドストーム家の次男が何やらコソコソと周りを見渡しながら何処かに向かっていた。
「何をしているのかしら……?」
私は少し離れた柱の後ろに隠れて、悪いとは思っているが2人の様子を盗み見る。
何かを話している様だが、残念ながら此処からでは声は聞こえない。
それにしても……あのウィンドストーム家の子息が邪魔ね。
彼がいなければ私が話し掛けに行くのに……。
そして不思議な彼に私に向けてくれている感情について聞いてみるの。
「あっ……」
私が思考の海に沈んでいると、いつの間にか徐々に離れていく2人に気付き、バレない様に後ろをついて行く。
初めてこんな事をするからか、いつもは感じない緊張感を感じて少し楽しい。
普段なら誰かしら私の周りに居るので直ぐにバレるのでこんなことは出来ない。
しかし、今回は2人が生徒が誰1人通らない道を通っているお陰で誰にも絡まれる事なく追跡は簡単だった。
更に2人が学園の雑木林に入った辺りから、やっと2人の会話が聞こえる所まで近づく事が出来る様に。
「此処からなら誰にもバレずに学園を出れるよ。僕が彼女に会いに行く為に毎回使っているんだ」
「大貴族の家族に内緒で数年間も付き合えるとか……凄いなお前」
「これでも隠し事は得意だからね」
なるほど……通りで私に全く興味を抱いていなかったのね。
まぁ私は興味を持たれない方が楽で良いのだけれど……この情報は後で使えそうだわ。
私は興味深い話しを聞いた後で、木の影から出て2人に声を掛ける。
「———ご機嫌よう。こんな所で何をしているのかしら?」
「!?!?!?!?」
「あ、これはヘラ様。お久しぶりです」
私の目当ての彼は驚きで目を見開いて固まっていた。
その反応に少し面白くて口角が上がる。
そしてこの前のか間違いではないと証明する様に、彼からは前回と同じ感情が流れて来た。
私はその事実が嬉しくて人生で初めて自分から名前を名乗る。
「初めまして。私はヘラ・ドラゴンスレイよ。貴方の名前は?」
意識して笑みを浮かべて。
すると———途端に彼から『尊い』と言う少しよく分からない感情が溢れ出した。
更にはその直後、彼は白目を剥いて後ろに倒れた。
「!?!?」
「シン君!? どうしたんだい急に!?」
私だけでなく、彼の隣にいたウィンドストームも慌てて彼———シン君を起こそうとして、全く反応が無いシン君を担いで、オロオロとしていた私の方へ振り向く。
「ヘラ様も来ますか? 一応僕の彼女の家なのでバレないと思います」
「っ!? ……私に言っても良かったの?」
「もう聞いていたんだろう? 僕は風魔法が得意だから風の流れで分かるんだよね」
そう言ってウィンクをするウィンドストーム。
どうやら私が追跡していたのはバレていたみたいだ。
私は無言でウィンドストームについて行った。
「———あっ」
「———…………え?」
俺が目を覚ますと———何よりも先に俺の目には
復帰して早々再び頭が混乱する。
な、何でヘラが俺の近くに……と言うか此処何処だよ……。
俺は辺りを見回してみるも、見覚えが全くと言っていいほど無い。
強いて分かることと言えば貴族の家では無いと言うくらいか。
俺はチラッとヘラを見る。
彼女は心配そうに俺を見ており、目が合っては首を少し傾げていた。
可愛い……マジでその顔だけで俺の寿命が伸びるわ。
「え、あ、あ、えっと……此処は何処でしょうか……?」
「此処はウィンドストームの彼女さんのご自宅らしいわよ」
「あ、そ、そうなんですね……」
俺は今物凄く達成感に満ち溢れている。
何なら脳内でクラッカーが幾つもパンパン鳴り、全俺が胴上げをしているほどだ。
お、推しに自分から話し掛ける事が出来たぞ……しかも1対1というこの極度に緊張する場面で……!
俺が幸せを噛み締めていると、ギギッと言う音が鳴ったかと思えば、桶の様な物を持ったアーサーとマリアさんと思わしき美少女がやって来た。
「あ、目を覚ましたんだね。彼女が僕の彼女のマリアだよ」
「ま、マリアですっ! 身分不相応な身でありますが、アーサー君とお付き合いをしていますっ! 宜しくお願いしますっ!」
「あ、よろしくお願いします。ついさっきアーサーの友達になりましたシンです」
「し、シンさん宜しくお願いしますね!」
俺達は遠慮がちにお互いに挨拶し合う。
多分彼女も俺と同じく陰の者だと思う。
なんか俺と同じ匂いがするからな。
マリアさんは俺に挨拶した後、『皆さん分のお茶持っていきますねっ』と言って下に降りて行った。
多分この場にいるのが気まずかったのだと思う。
「それでアーサー。ちょっとこっち来て」
「ん? どうしたんだい?」
俺はアーサーを引き連れて部屋の隅に移動すると、小声で囁く。
「どうして此処に
「もしかして……緊張し過ぎて気絶したのかい?」
「いや、それは違う」
「———シン君とウィンドストームは何の話しているの?」
「シンく!?!?」
お、推しが俺の名前を……俺は今日死ぬのかもしれないな。
固まる俺を見てキョトンとして首を傾げる推しの姿を見ながら、俺はボンヤリとそんな事を考えていた。
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限界オタク、推しの名前呼びに限界を超える。
現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。
なので、頑張って欲しい、面白いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
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