第2話 友人キャラと隠れ最強キャラ
———アーサー・ウィンドストーム。
この国の国防を担う武闘派精霊士ウィンドストーム侯爵家の次男。
その中でも才能も実力も飛び抜けているが、その力をうまく隠している———謂わば俺のやろうとしている事を十数年間もやり続けている先駆け者だ。
理由としては、長男との当主争いに巻き込まれたくないというのと、貴族が嫌いだから。
しかし、きちんと侯爵家として舐められないほどの実力に調整しており、陰口を言われることもない。
更に長男とも家族とも仲が良いのだ。
彼自体の性格は、正直この世に居ていいのかと思うほど良く、顔も勿論良い。
まぁそれでもメインキャラなので勿論関わりたくは絶対にないが。
「……すぅ……おい、爺さん」
『何じゃ———っと凄い才能じゃなぁ』
爺さんは俺の目を通してアーサーを見て、思わずと言った風に感嘆の声を上げた。
あの爺さんが唸るほどだから、如何にアーサーの才能が飛び抜けているかが分かるだろう。
まぁ才能も努力も
異論は一切、永遠に認めない。
『お主……ヘラちゃんの事になると頑固じゃのう』
『ヘラちゃんって呼ぶなぶっ殺すぞ』
『恐ろしいのう!?』
にわかがヘラの事をちゃん付けで呼ぶことは許されない。
せめてヘラのいい所が20個言えないと認めないぞ。
「よし……取り敢えず離れて座ろう」
俺はそう誓い、対角である1番前の廊下側に腰を下ろす。
俺が意外と来るのが早かったせいか、アーサーを除いて数人しかまだ来ていなかった。
つまり———物凄く気不味い。
俺は元々コミュ強ではないし、誰かとわいわいして遊びたいと言った人間ではなかったので、初対面の人と話すのは苦手だ。
しかし運のいい事に、直ぐに他の生徒達も続々と教室に入って来た。
それとほぼ同タイミングで教師が入ってくる。
「———席に座って下さい。これより朝の
———あの選民意識の高そうな女性教師が。
その顔を見た瞬間———俺と他の数人の顔が固まる。
恐らく俺と同じ平民だろうが、皆が皆、教師ガチャハズレだ……と軽く絶望していた。
そして案の定———
「若干名平民も混じっていますが……まぁ良いでしょう。それではアーサー君から自己紹介を宜しくお願いします」
俺達を見て侮蔑の視線を向けた後、面倒くさそうに嘆息した。
その姿にイラッと来るが、此処で力を発揮する訳にはいかない。
それに———俺が何かやる必要はない。
「どうもアーサーです。一応侯爵家の次男で、風魔法が得意です。上級精霊と契約しています。まぁ兄さんよりは弱いですけど」
笑いながらそう言うと、クラスメイト達から少し笑いが漏れる。
しかしそれは決して嘲笑と言うわけではなく、お笑いなどを見て笑うと言った感覚だ。
そしてアーサーは、今度は少し暗い笑みを浮かべる。
「僕は貴族だの平民だの騒いでいる人はあまり好みません。ですが、それ以外の人とは仲良くしたいと思っています。宜しくお願いします」
敢えてルージュの方を向いて笑みを深める侯爵家の子息であるアーサーに言われ、たじろぐルージュ。
まぁそれも仕方ないだろう。
貴族至上主義そうなルージュが、貴族の大御所の子息に遠回しに『お前は嫌い』って言われたんだからな。
そりゃダメージも大きいだろうさ。
現にルージュは、眼鏡がずれているのを直そうともせず、口元をヒクつかせている。
そんな2人を見て、一部を除いた貴族からも平民からも笑いが漏れた。
どうやらこのCクラスにはそこまで選民意識を持った生徒はいないらしい。
このクラスの皆とは仲良くなれそうだ。
こうして教師であるルージュを初日から放って自己紹介が行われた。
1時限目が終わると、ルージュは逃げる様に教室を後にした。
すると一気に教室は賑やかになる。
「なぁ君の名前は!? 俺の名前はルドって言うんだ! 一応男爵家だが、敬語とか堅苦しいものは必要ないからな!」
「それはありがたい申し出です……ありがたい。俺はシンだ。宜しくな、ルド」
何か物凄く陽キャな男子生徒が俺の下へ来てくれたお陰で、早速友達が出来た。
その後も、何人もの生徒が男女問わず友達になろうと誘ってくれた。
『このクラスは良い人間ばかりじゃのう……』
ああそうだな。
正直差別が最も顕著に現れるこの学園でこんなクラスがある事が奇跡だ。
しかしその雰囲気にしたのは———紛れもなくアーサー・ウィンドストームだ。
彼がいなければこれほど和気藹々としたクラスにはならなかっただろう。
因みにアーサーは、男子からも女子からも———若干女子の方が多いが———囲まれていた。
そして相変わらず爽やかな笑みを浮かべて応答している。
しかし———ふと俺と目が合い、何やら含みのある笑みを浮かべた。
更には口パクで何かを伝えてくる。
「あ・と・で・ふ・た・り・で・は・な・そ・う」
その瞬間———俺の背筋がゾクッと凍ったかの様な感覚に陥る。
『あやつ……恐ろしいのう』
『……そうだな』
俺は取り敢えず、頷いておく事にした。
「それで……俺に何の様ですか?」
「そんなに怖い顔しないでよ」
アーサーは感情の読めない笑みを浮かべる。
こう言った所が俺は苦手なのだ。
ただでさえ対人関係に疎い俺が奴の仮面の奥の真意に気付けるわけがないだろ。
「ただ———少し君に尋ねたい事があってね?」
「尋ねたい事……ですか?」
はてさて……一体どんな事を聞かれるのか。
俺はアーサーの一挙一動を細かに観察しながら身構える。
そんな緊張感漂う空間で、アーサーは口を開く。
「単刀直入に言うけど———僕と手を組まないか? 君も僕と同じ転生者なのだろう? 隠れ最強キャラのシン君?」
…………コイツもかよ……。
俺がウンザリとしていると、固有精霊界でお茶を飲んでいた爺さんが興味深そうに言った。
『此奴……お主と何処か違うぞい。転生者とは少し違うのう……お主の様に魂が2つあるわけではないからのう』
『だがストーリーを知っているわけだろ? なら転生者とほぼ変わらないだろ……』
何故こうも俺の計画を狂わせる人間が立て続けに現れるのだろうか。
俺は、この世の無情さに思わず天を仰いだ。
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現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。
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