第14話 入学試験②(推し発見)

「これより魔力測定を始める。番号を呼ばれたら俺の前にある測定器の前に来て、手を置くんだ」

「「「「「「「はい!」」」」」」」」


 どうやら魔力測定の試験官はドバン先生らしく、その強面の威圧感に受験生達は緊張気味だ。

 俺の周りの受験生も口々に『あの試験官怖えぇ……』『絶対ダメ、絶対』とか言って恐れているしな。


 本当はこの人、めちゃくちゃ良い人なんだけどなぁ……。

 因みに俺の番号は1970番なので、2000人中だと物凄く後と言う事だな。

 

 俺は辺りを見渡してヘラがいるか探す。

 先程の試験では3箇所に分かれていたので、ヘラの姿は見当たらなかったが、今回は同じ会場なので探せばあるはず……。


 一体何処に———あ、居たぁああああああああああああああああああ!!


 今の俺はきっと子供の様に瞳を輝かせていると思う。

 しかし今だけは許して欲しい。


 ゲームの初登場の時と同じ、白銀でサラサラな美しいストレートの長髪に少し吊り上がった力強い真紅の瞳。

 恐ろしく整った冷酷な美人と言った感じの顔立ちは、皆の視線を奪うには十分だった。

 

 更には丁度ヘラの順番だった様で、会場に居るほぼ全員の人達が彼女に注目している。

 俺は推しのこの目で見れた事に涙が溢れそうになるが、流石にそれだとヤバい人なので何とか抑えたが。


 何かもう……彼女の周りだけ物凄く華やかなオーラで一杯なんだけど。

 神々し過ぎて目が潰れそう。


 そんな俺に追い打ちをかける出来事が起きた。


「それじゃあ受験番号3番、魔力測定器に手を置いてくれ」

「分かりました」


 ヘラの渓流の湧き水の様に澄んだ声が聞こえてきたのである。

 その声は数多の音を掻き消して俺の耳に届いて来た。


 ……やっぱり声も可愛い。  


 俺が感動している間にも、ヘラは測定器に手を置く。

 するとホログラムの様な画面が頭上に現れ、数字がどんどん跳ね上がる。


『10……100……1000……10000…………100000……554500!』

「じゅ、55万4500だ……これは凄いな……」


 ドバンが驚きに目を丸くしながら惚けた様に言った。

 その言葉を皮切りに、生徒からも教師からも大歓声が上がる。


「マジかよ凄過ぎだろ!?」

「55万は幾ら何でもヤバいって!」

「前年度は確か25万くらいがMAXだった筈だぜ!? それにソイツ、他国の国随一の天才だって話だぞ!?」

「流石ヘラ様ですわね……」

「私もヘラ様の様な立派な淑女になってみせますわ!」


 生徒からはひたすらに驚愕と憧れの声が漏れ、

 

「……流石神童と呼ばれるヘラ様だな」

「ああ、間違いなく此処数十年で1番だ」

「これは私達も教え甲斐がありますね」

「まぁ殆どは家庭教師に教えて貰っているとは思いますが」

「既に超越級精霊とも契約しているのだとか」

「ほぉ……それは凄いですな」


 教師からも期待の声が相次いで上がっていた。


 ヘラは、巷では100年に1人の神童と呼ばれている。

 勿論神童ではあるのだが、本当はそれ以上に努力しているのだ。

 彼女は魔力を扱える様になってから毎日欠かさず魔力切れになるまで魔法の鍛錬をしていた。

 しかもノルマを達成できていない日は、魔力切れを起こしてもポーションを飲みながら魔法を放つ徹底ぶり。

 

 皆彼女の才能だと思っているが、そんな事全くない。

 全てヘラの努力の結晶なのだから。


 俺が彼女の努力していた姿を思い出してジーンと涙目になっていると、ふと煩わしそうにしていたヘラと目が合った気がした。

 更には少し驚いた様に固まった様にも。

 しかし一瞬だったので、恐らく俺の見間違いが自意識過剰だろう。


「此処にいてもヘラしか見ないし、どうせまだまだ暇だし、今の内に中位精霊との契約でもしておこうかな……」


 俺は人の波に揉まれながら何とか脱出し、人目の少ない場所へと全力ダッシュで向かった。





「彼は何故私に……」


 神童と呼ばれた少女が見ているとも知らずに———。









「———次、1970番」

「はいっ!」

「前に来い……ってシンじゃないか」

「また会いましたねドバンさん」

「頑張れよ……それじゃあ測定器に手を置け」

「分かりました」


 遂に俺の番となり、少しドバンと話した後で測定器に手を乗せる。


 俺の魔力は固有精霊界の魔力も含めればヘラの約20倍———1200万ほどある筈だ。

 後、ついさっき中級精霊とも契約したので、もう少し増えているかもしれない。

 ヘラも固有精霊界の魔力も含めていると思われるので、超越級と神級では途轍もない差がある事が分かる。

 

 因みに人間の限界は9999だ。

 だから人間は精霊と契約して精霊界の魔力を使う事で力を得ている。


 そして今まで見た感じ、受験生の魔力量平均はおよそ40000。

 流石天才達がこぞって入学する名門と言えよう。


 因みに俺は魔力量に関しては既に対策しているので、何の心配もない。


『10……100……1000……10000……41680!』

 

「41680か……そこそこの魔力量だな」

「ありがとうございます!」

「次は実技試験で会おう」

「はい!」


 俺はドバンに頭を下げた後、モブらしくそそくさと人々の視線から逃げる様に人気の少ない場所へと移動する。

 まぁモブらしくと言っても、元々注目を浴びるのが得意ではないので通常運転だが。


 俺は近くのベンチに座り、ゆっくりと息を吐いた。


 取り敢えず目立つ様なヘマは今の所していない筈だ。

 後は実技試験だが……傭兵経験ありって書いたから、多少は試験官に善戦しとかないといけないか?

 まぁそれも他の受験生のレベルを見て決めるか。


「次———2000番」

「はい」


 その声を聞いた途端———全身が一気に粟立つ。

 勿論奴が居るのは分かっていたが……何かがおかしい。

 雰囲気もそうだが……他にも……。


 俺は急いでベンチから立ち上がり、苦手な人混みの中に飛び込んで奴が見える位置まで辿り着くと、最後の受験生へと目を向けた。


『100000……1000000……1200000!』


 測定器に表示された数値に響めきが会場を支配する。

 かく言う俺も驚愕に目を見開いていた。



「———カイ…………?」



 この世界の主人公———カイは、俺の思っていた以上に強くなっていた。

 俺はカイの強さを目の当たりにした瞬間に、自分の愚かさを責める。


 どうして気付かなかったんだ俺はッ!

 もしかしたらこの世界に俺の他に転生者が居るかもしれないと言う事を……!


 これは早急に調査が必要だ。

 仮に転生者でなくても、この原因を知らなければ、確実に俺の計画を狂わせる。

 ストーリーでは全てにおいてヘラが1位だったのだから。

 

「これは余計に俺の力を見せることが出来なくなったな……」


 俺は言い知れない不安に、大きく舌打ちをした。

 

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