第13話 入学試験①

「……まだかよ爺さん。幾ら何でも遅すぎだろ!」

『ま、待つのじゃ! やっぱりこれは必要で……いや、これは必要ないかも……でもこれ必要———』

「全部要らん! と言うかそろそろ入学試験に間に合わなくなるから無理やり連れて行くぞ!」

『ああっ!? い、嫌じゃああああああああ!!』

 

 契約を結んで数日。

 遂に入学試験の日が来た。


 因みに入学試験を受けるには開始2時間前までに受付を済ませていなければならず、現在は開始2時間半前。


 お金は既に持っているので問題ないのだが……このジジイが中々身支度を終わらせないのだ。

 そのせいで1時間前には着いておく予定だったのだが……今は遅刻さえもあり得る時間。


「爺さん……確か契約者が呼んだら問答無用で召喚されるんだよな?」

『ああそうじゃが———ってあああああ!! やめてくれ! 雷電纏って最速で出発しないでくれぇえええええええ!!』


 俺はその後、ある程度進んだ末に爺さんを強制召喚した。

 どうやら最終手段として固有精霊界に家ごと入れたらしい。


 それが出来るなら最初からしてろよ。と思うのは決して俺だけではないと思う。










「———着いた……!」

『ほぉ……中々成長しておるのぉ』


 森を出て僅か数分。

 俺達は精霊学園のある大国———バハムート王国へと到着した。

 

 俺はストーリの舞台であり、自身が推しと同じ国にいることに、言葉では表し切れない歓喜と期待が俺の中で渦巻いていた。


 もしかしたら推しに会えるかもしれない……!


 別に話さなくても、認知されなくてもいい。

 ただヘラの姿をこの目に収められたのなら取り敢えず今日はそれで十分だ。


「爺さん、さっさと行くぞ。爺さんのせいでこんなギリギリになったんだからな」

『わ、分かっておるわい。取り敢えず儂は家に居るからな』

「分かった」


 俺は爺さんが固有精霊界に戻ったのを確認すると、少し本気を出して検問を走り抜ける。

 一応住民登録はしているが、今は時間がないので検問に並んでいる暇はない。


「学園は…………あったっ!」


 俺は学園の門を潜り、受付へと直行。

 美人の受付嬢は物凄く人が並んで居たので、誰も並んで居ない強面の男———武術教師のドバン(モブ)の方へと並ぶ。


「———入学試験の受付をお願いします……!」

「ん? 受験生が俺の所に来るなんて珍しいな。名前は?」


 まぁモブの彼には名を名乗るくらいいいだろう。

 メインキャラクターにはあまり関わらない方がいいと思うが。


「シンです」

「よし、じゃあシン。住民票か、自分の身分を証明できるものは?」

「住民票があります」


 俺は予め作っておいた住民票を受付の机に置く。

 ドバンは俺の住民票を魔道具に触れさせると、『本物』と言う表示が出た。


「偽造じゃないな。シン。15歳。傭兵経験ありか。契約精霊は中位雷精霊……珍しいのと契約しているな」

「まぁたまたま契約できたんです」

「まぁ頑張れよ。受かったら俺の所に挨拶くらいしてくれ。名前はドバンだ」

「分かりましたドバン先生。必ず受かって会いに行きます」

「ガハハハ! その意気だ! 頑張れよ!」

「はい!」


 俺はドバンにお礼を言って試験会場に向かう。


 やはりドバンさんはゲームと同じく物凄いいい人だったな。

 彼には武術も習いたいし、仲良くしていて損はないだろう。


 因みに俺は学園では常に敬語で話す。

 理由は平民であることと、目立たないようにするためだ。

 精霊は後で爺さんに言って中位の精霊を連れてきて貰えばいい。


 俺はこの学園で目立つような事はしない。

 ひたすらに陰に徹する。

 陰からヘラを護り、助けるのだ。


 その為に———


「———一先ず目立たないように入学試験を終わらせる」


 俺はそう意気込んで試験会場に歩を進めた。








「———それでは筆記試験開始!!」


 俺達受験生は学園の中で1番広い講義場で筆記試験を開始した。

 勿論筆記試験の内容はゲームに出てないので知らないが、この世界のことは殆ど知っているので多分なんとかなるだろう。


 俺は筆記試験の問題用紙に目を通す。

 

「……よし、この程度なら余裕だ……」


 問題は主に、中学終了程度の数学に、基礎的な魔術理論、精霊ととこの国と世界の過去についての知識を問われるものが殆どだった。

 これなら点数の操作は容易だ。


 俺が狙うは中間辺りの点数。

 この筆記試験はMAX100点で、確かこの時の平均は57点だったはずだ。

 なので、此処は無難に60点を目安に調整すればいいだろう。


 俺は全ての単位を一貫して50〜65パーセント程の得点率に調整。

 後は時間一杯ゆっくりと問題を解くだけだ。

 早く終わらせるとかいうテンプレもあるが、そんな事すれば目立つこと間違いなしなので、敢えて頭を悩ませているように演技をしながらやり過ごすだけである。


 そして———


「———試験終了です! これから少しでも何か書いた人は失格とします」


 試験官の言葉と共に一斉に試験用紙が空中に浮かび、一気に集められた。


 お、おお……流石魔法を習う学校だな。

 めちゃくちゃ手足の様に便利そうな魔法使うじゃん。


 俺も少し使ってみたいと思いながら、試験管の指示に従って、今度は魔力測定をするべく移動を始めた。


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 第15話まで1日2話投稿!


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