第7話 迷いの森

 第1話の魔神を邪神に変更しました。

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『儂ら精霊の対極にいるモノをお主は知ってるか?』

「あー……名前だけなら」


 ゲームの進行上、精霊と対極にいるモノ———邪霊や邪神と呼ばれる奴らのことをあまり深掘りしない。

 ヘラは確かに邪神と契約するが、その邪神も主人公に倒されるし公式ファンブックでも詳しいことが書いてあるわけでもないので情報はほぼ皆無といってもいいくらいである。


『ふむ……じゃあまずは邪霊と精霊の関係性から説明しようかの。まず精霊は自然が意思を持つことで生まれるのじゃ。しかし邪霊は生物の負の感情から生まれる』


 自然が意思を持つね……生物の負の感情から生まれるというのは幽霊とか怨霊とか前世でもあったので分かり易いが、自然が意思を持つというのが理解できないな。

 自然って考える力ないだろ。


 しかし実際に精霊———それも精霊のトップである神霊の爺さんが言っているのだから間違いないのだろう。

 甚だ疑問ではあるが。


「それで、邪霊はどんな害があるんだ?」

『邪霊は生まれたときの感情のみで動く奴が殆どじゃから基本は知能の低い。それにその程度ならピンキリで、普通に討伐できるレベルじゃから問題ないのじゃが……偶に知能を持ち始める個体もいるんじゃ』

「それが邪神と言う奴なのか?」

『うむ。奴らは知能を持つだけで邪霊とは一線を期す力を得る。それは最低でも上級精霊以上じゃ』


 最低でも上級……そんなの人類の殆どは対抗できないじゃないか。


 この世界で王級精霊以上の契約者は上位1パーセントにも満たない。

 そもそも精霊と契約できる人間も全人口の半分にも満たないはずだから、普通に邪神が現れたらその国とか街は終わりだな。


「それで、ソイツらがどうした?」

『実はのう……その邪神がこの森に居るのじゃ』

「…………は? 何でこの森に居るんだよ? 爺さんがいるじゃん。とっとと消滅させろよ」

『そうしたいのはやまやまなんじゃが……精霊は入れん場所に居るのじゃ。正確に言えば精霊の苦手な魔力が蔓延している場所じゃな』

「……それって迷いの森か?」

『そうじゃ。あそこは儂ら神霊でも様々な悪影響が出るのでな……後普通に面倒』

「おい、思いっ切り本音が漏れてるぞ」


 というか爺さんが行かない理由は主に最後に言ったやつだろ。

 普通の精霊ならまだしも爺さんは神霊なんだから迷いの森位どうってことないだろうに。


 ———迷いの森。


 ゲームのストーリーで主人公達を案内していたシンも一緒に迷い込み、初めてシンが戦闘を行った場所である。

 常に濃い霧が立ち込め、数メートル先も見えない。

 更に言えばその霧が魔力を反射するため魔力感知も機能をなさないので、所謂魔法使い殺しで有名な場所でもある。

 

「……これを解決したら契約してくれるのか?」

『勿論じゃ! お主は既に儂と契約する条件をクリアしておるし、邪神が居なくなれば儂がここに居る理由も無くなるからのう』

「はぁ……分かった。やってやるよ」


 俺は仕方なく、本当に仕方なくやることに決めた。








「じゃあ行ってくる」

『気を付けての。まぁお主がやられるとは思わんがのう……』


 俺はあの後数時間体を休め、食事を取ってから出発する。

 一応直ぐに帰ってくる予定だが、何があるか分からないので食料と寝袋も持っていくことにした。


 俺は全身に身体強化を施して木々に飛び乗る。

 最近は地面を走るよりも木々を飛び移って移動することの方が多かったせいか、森の中ではそちらの方が移動速度が速くなってしまった。


 俺は全速力で迷いの森の方向へと駆ける。

 

 しかし、まさか迷いの森に邪神が居たとは……仮にヘラが契約していた邪神だったら絶対に跡形もなく消滅させてやる。


「……此処か?」


 俺は濃霧が視認できる距離まで辿り着いた。

 これまでに掛かった時間は僅か5分程度。

 モンスターにもバレる事なく進めたので、相当な時間短縮が出来た。


「ふぅ……よし、入るか」


 俺は濃霧の中に飛び込むと同時に、眩い光を放つ雷を濃霧に反射させて拡散させる。

 途端———


「「「「———ギャアアアアア!?」」」」


 何処からともなくモンスターの悲鳴が辺りに響き渡る。

 更にその悲鳴が鳴り止む頃には俺を覆っていた濃霧が前方数十メートルが見えるくらいまで薄くなった。


 そう———この濃霧はモンスターが発生させた現象なのだ。

 ゲームではカクレザルと言う名前のモンスターがおり、霧を発生させて姿をくらまし奇襲をするという結構怖いモンスターである。


 しかし、既にそいつらとは何十回と戦っている俺は勿論対処法を知っていた。

 まぁ対処法と言っても、範囲攻撃で先制攻撃をするという至って単純な方法だが。


「ただコイツら普通に強いんだよな……」


 俺の目の前には全身の毛を焦げさせ、色んな所を怪我している数匹のクレザルの群れ。


 コイツらの単体のレベルは120。

 こんな奴に奇襲でもされればひとたまりもないだろう。

 つくづくこの世界の知識があってよかったと思ってしまうな。


 俺がそんなことを思っていると、自身のテリトリーを侵させたカクレザル達が連携を取ってに攻撃を仕掛けてきた。

 まず2体のカクレザルが霧を発生させ、その間に、俺が2体の邪魔を出来ないように接近戦を挑んでくる。 

 その2体も息ぴったりで、同じくらいの実力、又は多少上程度では余裕で負けるだろう。


 しかし———俺には当て嵌まらない。


「ふっ———!!」


 俺は軽いフットワークでカクレザルの攻撃を避けると、反撃とばかりに手刀に魔力を込めてカクレザルの首を同時に斬り飛ばす。

 2体は声を出す間もなく胴体と首が亡き別れをすることとなった。


 更に俺はその流れで魔法を発動。


「《雷轟》」


 雷鳴を轟かせて敵へと瞬時に向かう雷電が、カクレザルの数メートルの巨体を軽々と包み込んで消滅させた。

 辺りには未だ雷電が帯電しており、絶えずカクレザルへとダメージを与えていたために、意外とあっさりと攻略してしまった様だ。


「よし、肩慣らしには丁度良かったな」


 俺は現時点彼らの様な巨大な生物を飼う事は出来ないので倒すしかない。

 しかし仮にこいつらの素材を売れば、余裕で落ちぶれた家門を復興させることが出来るだろうな。


「まぁそれは今はどうでもいいとして……とっとと先に進むか」


 俺は森の奥へと進んだ。

 

 

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 第15話まで1日2話投稿!


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