第5話 修行(改)

『なるほどのう……この世界の事をゲームとやらにした物があるのか……』

「実際はそれを忠実に再現した世界がたまたまあったというだけかもしれないけどな」


 俺自身、本当にこの世界があのゲームと全く同じかと言われると答えることができない。

 

「ただ、この世界にヘラが居る事は既に確認済みだ。ヘラは神童と呼ばれるほど優秀だからな」


 実際、最終的には超越級の精霊と契約をしているので、神童と呼ばれるに値するだろう。

 この世界では超越級ですら30人も居ないからな。


『ふむ……お主は儂ら以上に未来のことを知っているということじゃな? 儂らも未来までは分からんからのう』

「俺というイレギュラーを抜いたら、な。俺が入学することでどんな影響が出るか分からないからな」


 だが、彼女の闇堕ちを阻止するには入学は必須。

 何としても入らなければならない。


『お主……何歳かの? 見た所15歳は過ぎているようじゃが……』

「18」

『年が違うのはどうするのじゃ?』

「15歳でもこの位の身長の奴は腐るほどいるだろ。親もいないし、経歴誤魔化せば何とかなる」


 俺の身長は180にギリギリ届かない程度。

 この世界は前世とは違い、15歳の平均身長が175位なので、俺くらいの人はメインキャラクターだけでも何人もいる。

 そもそも主人公が181センチだし。


『お主……見かけ通り大胆なことをする人間じゃな……』


 ゼウスが俺のことを若干引いた目で見てくるが、この程度無視無視。

 彼女のためならどうせ1度亡くなったこの命、喜んで差し出そう。


「それで、俺と契約してくれるのか?」


 俺は先程からずっと気になっていたことを訊いてみる。

 最も重要なのはココだ。


 改めて分かったが、俺の今の力では殆どの神霊に勝てない。

 そんな事ではヘラの闇落ちを回避する事は不可能だ。

 彼女の闇堕ちを手助けする奴らには2人程神霊契約者がいるからな。


『結論から言うと……現時点では無理じゃな』

「……何?」


 ……?


「……俺に何が足りないんだ?」

『お主、雷魔法ばかり使っていたじゃろ?』


 まぁゼウスと契約するにはある程度の雷魔法の熟練度が必要だからな。

 恐らくあの口ぶりからして雷魔法の熟練度は満たしているのだろう。

 と言う事は———


「———他に何か必要なのか……?」

『正解じゃ。お主は無属性魔法を殆ど使っておらんじゃろ? そのままじゃと儂と契約するには身体が持たんぞ?』

「…………」


 そうなのか……コイツと契約するには無属性魔法も必要なのか……。


 因みに無属性魔法とは、身体強化や魔力障壁、果てには魔法無効化マジックキャンセルなどの魔法の総称の事だ。

 魔力があれば誰にでも使える魔法であるが、その分難易度は高い。

 魔法無効化マジックキャンセルともなると何十年も無属性魔法を追求し、様々な魔法を受けてきた者にしか扱えないとされている程だ。


 確かに俺は大体身体強化を少し使う以外は無属性魔法というのを殆ど使っていない。

 主な原因は全て雷魔法で事足りたというのと、シンプルに無属性魔法の種類を殆ど知らないという点だ。

 

 ゲームでは身体強化以外は基本使わないし、魔法無効化マジックキャンセルも10回受けた魔法でなければ無効化出来ないという面倒な枷もあったので、1度も使っていない。

 

「なるほどな……じゃあ俺に無属性魔法を教えてくれ。5ヶ月の間に」


 正直此処から学園までは雷魔法を使えば数分も掛からず着くので、ギリギリまで修行が出来るはずだ。

 

 俺が真っ直ぐゼウスを見つめてお願いすると、ゼウスは少し笑みを浮かべた。


『最近は暇しておったからよいぞ。1200年振りに儂と契約できるやもしれぬからの』


 どうやらゼウスの前の契約者は1200年前に死んでいるらしい。

 幾ら何でも契約しなさすぎでは?


 基本4属性の神霊は大体100年に1度くらいで契約者を変える。

 そして公式では氷の神霊であるスカジが500年もの間契約者を取っていないとされているが、それの2倍以上となると、流石に契約しなさ過ぎではないだろうか。


『儂は縛られるのが嫌なんじゃよ。面白ければ別じゃがな。その点、お主と一緒に居れば楽しそうじゃ。それじゃあ早速始めるかの』


 そう言って椅子から立ち上がり、玄関を出て行くゼウス。

 俺はそんなゼウスを見逃さないように後を追った。








「……これは?」


 俺は自分の手足と背中に付けられた重りを見ながら懐疑の瞳をゼウスに向ける。

 そんな俺の視線を向けられたゼウスはあっけらかんと言い放った。


『今から儂特製の重りに魔力を込める。そうすればその重りは最大10倍にまで重たくなるじゃろう。それを背負って木をへし折らないように木々の枝を渡って儂についてくるのじゃ』

「じゅ、10倍だと!? このままでも総重量300キロくらいはあるぞ!?」

『ん? 身体強化を使えれば余裕じゃよ。今のお主の身体強化では厳しいじゃろうがな』


 いやどう考えても無理だろ。

 人間が3000キロ(約3トン)を背負って木の上に登れてたまるか。

 象一頭分くらいの重さだぞ。

 

『あ、勿論身体強化以外の魔法を使うのも禁止じゃよ』

「…………鬼畜ジジイめ……」


 俺はそう毒付きながらも、ヘラのためと何度も心に言い聞かせて身体強化を全身に施した。




—————————————————————————

 第15話まで1日2話投稿!


 ☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

 執筆の原動力となりますので!


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る