第4話 ゼウスに打ち明ける
「はぁはぁ……ど、どうだ……はぁ……はぁ……」
俺は全身を襲う疲労感に必死に抗いながら、吐息混じりに言葉を紡ぐ。
既に俺の魔力はスッカラカンなので立つ事もままならない。
この世界では魔力がなければ、生物は生きるのが困難な世界なのだと改めて実感させられる。
「はぁ……はぁ……」
俺の目の前には半径数十メートルを優に超える巨大なクレーターが出来ており、周りの木々は燃え尽き吹き飛び、空は未だ雷雲が停滞していた。
その中心であるゼウスのいた場所は、砂埃が舞っていて視界が悪く、雷が帯電しているせいか中々砂埃が収まらない。
「どうなった……?」
俺は過度に魔力を流しすぎた事でダメになった右手を押さえ、ゆっくり近付く。
魔力が少しでもあれば魔力感知を行えるのだが、生憎ないので目視での確認が必要不可欠となる。
俺はクレーターの縁に立ち、中を覗き込む。
中は正しく電気の溜まり場と化しており、普通の人間が飛び込めば即座に感電してお陀仏になりそうである。
これを見せられたら大層危険な技を使ったものだと自分が恐ろしくなるな。
「流石に……死にはしないだろうが……傷くらいは付いていて欲し———」
『———やるのう。久し振りに怪我したわい』
突如、クレーターの中心部で竜巻の様な風が発生し、そこから全身に擦り傷の様なものを負ったゼウスが現れた。
その表情は子供のように嬉しそうである。
「はっ……化け物め……」
俺は最後に『カッカッカッ』と笑うゼウスを見ながら意識を暗転させた。
「———はっ!?」
俺はヘラが闇堕ちする悪夢を見て飛び起きる。
急いで辺りに視線を巡らし、何処か分からない部屋であることを確認して、取り敢えずヘラが闇堕ちしていないことを理解してホッと安堵のため息を吐く。
「いっつぅ〜〜……此処は———」
『———儂の家じゃよ』
声のした方へ目を向けると、そこには2つのマグカップを持ったゼウスの姿が。
家だからか結構ラフな格好をしており、とても先程の作中世界最強の俺を手玉に取っていた最強じーさんには見えない。
「……随分と人間臭い家だな」
『まぁ儂は人間の文化が好きじゃからのう。とても便利じゃよ』
俺の前のテーブルにマグカップを置いて『ホッホッホッ』と笑うゼウス。
その姿は孫の世話をするおじいちゃんの様だった。
「どうして此処に連れてきた?」
『まぁそんな焦るでない。まずはコーヒーでも飲んで気分を落ち着かせなさい』
勿論変な物は入ってないわい。と朗らかに笑うゼウスに気を抜かれ、マグカップを手に取った。
マグカップからコーヒーの香ばしい香りが漂ってくる。
「はぁ……まぁコーヒーに罪はないか……うまっ」
前世も合わせて1番うめぇ。
マジでこれ、どうやって作ったんだ?
俺が驚きに目を見開きゼウスを見る。
ゼウスは俺の言いたいことが分かったのか、コーヒーに口をつけながら言った。
『美味しいじゃろう? 儂もこれを見つけた時は同じように驚いたもんじゃ』
「……これは本当に美味いな」
『そうじゃろうそうじゃろう。お主の前世でも味わったことのない美味しさじゃろう』
「っ!?」
俺はソファーから立ち上がり魔法を発動させようとするが、その前に
「……何故知っている? 誰にも言っていないはずだが?」
『そうかっかするでない。儂はこれでも神じゃからのう。これくらいは見ただけで解るのじゃよ』
「……めちゃくちゃだな、神っていうのは」
『じゃから神と崇められるんじゃ。まぁ儂のことは既に誰も覚えてはいないじゃろうがな』
もう此処に棲み始めて数百年は優に超えておるしのぅ。とあっけらかんと言うゼウス。
俺は少し戦闘を楽しんでいたゼウスの気持ちが分かった気がする。
『それじゃあ儂に話してみ? きっとその前世と、儂に契約を迫るのには何か理由があるのじゃろうからな』
その言葉に俺は返答に詰まる。
……此処で言うべきか?
いや、契約をしてないのに迂闊に話すのは危険すぎる。
もしゼウスに話してストーリーに影響が出れば、俺の原作知識というアドバンテージがなくなることを意味するわけだ。
そうすればヘラの闇堕ち回避が余計難しくなる。
だが———此処で俺が奴を信頼しなければ契約は出来ない気がする。
「はぁ……分かった。言うよ」
『おお!! 久し振りに面白そうな話が聞けそうじゃ!』
そう言って子供のように目をキラキラと輝かせるゼウスに真剣な表情で告げた。
「俺は———この世界に居る1人の少女を救いたいんだ」
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第15話まで1日2話投稿!
次話は19時30分頃に投稿する予定です。
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