case.9「仕事すら…」
私の名前は、神谷恭子。
ただのアパレル店員。
そう、ついこの間までは
私は、ショッピングモールの中に入ってる
テナントで働いていたアパレル店員だった。
裕福では無いが、暮らしに困らない程度には
お給料もいただけてたし、彰という彼氏もいた。
私は、幸せだった。死ぬほどに。
こんな日々が続けばいいと思っていた。
彼には惹かれていけばいくほど
私にしか明かしてない夢を教えてくれた。
それは世界で自分の個展を開くこと。
彼はその夢のためにいつも頑張っていた。
私は、陰ながらその夢をいつも応援していた。そんな何年か経ったある日の事だった。
記念日に、彰に高級レストランに呼び出され
プロポーズをされた。
私はとてつもない幸せを感じていた。
「ようやく、個展が開けそうなんだ。自分の夢を叶えたらプロポーズしよう。ってそう決めてたんだ。」
「うれしい」
私は、すぐにプロポーズにOKした。
ついに彰のお嫁さんになれる。
彰も夢を叶えるんだ。私がもっと頑張んなきゃ!
プロポーズされた3日後。
彰から電話があった。
個展の会場の代金が決まったとのこと。
それは一週間で1000万。
彼が最大で直ぐに出せるのは500万。
しかし、その場でキャッシュで渡さないと
予約は取れないとのこと。
「頼む!恭子!一生の頼みだ!500万貸してくれないか!」
何を悩むことがある。
大好きな人が夢を叶える寸前なんだ。
お金なんていくらでも出す。
支えるってあの日決めたから。
「うん、いいよ!取り来て、500万下ろしておく。」
貯金の半分以上のお金を私は、彰に渡した。
そして、それから1度も彰からの連絡はなかった。
二度と彰からの連絡は来なかった。
そう、私は結婚詐欺にあったのだ。
最初私はその事実を認める訳もなく
返ってくるわけもない連絡を待ち続けた。
そんなある日のこと
うちのショップが倒産した。
それに伴い、私はその日職を失った。
恋人も職も全て失った。
私はどうすればいいのか分からなくて
あまりお金も入ってない財布の中をぼーっと覗いた。
そこには、彰と行こうとしてた
ドリランのチケットがあった。
私の人生ここからどうなるかわからない
地獄に突き進んでいくだけだ。
だったら最後に1人でドリランでも行こう。
そう思って私は今日ドリランに来ていた。
お腹がすいた私はたまたま来てたキッチンカーに並んだ。
かれこれ1時間ほど待たされてるが
どうやらガスがつかないらしい。
きっと、元栓だよなぁって思いながら私は
時間だけはあったので
ボーッと待ち続けた。
『恭子?』
誰かに呼ばれた気がした。
ふと目線を上にやると、キッチンカーから私を呼んでいる声がした。
その声は私の昔からの大親友の光希だった。
「え、光希?なにしてんの!」
『キッチンカー!』
「あれ!キッチンカーなんかしてたの!?」
『うん!最近やっと軌道に乗り出したんだ!』
「そうなんだ!すごいね!光希すごいわ」
『へへっ!でもさ、ガスつかないんだよね、、』
「あのさ、元栓じゃない…?」
『私もそう思う!だけど違ったら詰むから見たくない!』
「わかった、私が見る!」
元栓を確認すると、やっぱり元栓が原因だった。
元栓をひねり、すぐに火はついた。
「よかったね、光希」
『ありがとう!恭子!恭子はタダでいいよ!』
なんだか、親友の光希のその声が
私は安心できて
心が穏やかになった気がして涙がこぼれそうになった。
『ごめん、恭子、待ってるお客さんにさそろそろ料理渡せるって言ってくんない?』
「あ、わかった」
言われるがまま私はキッチンカーを降り、
待たれているお客さんに声をかけた
これじゃ私店員さんじゃんw
え……?
その時だった1番後方に彰が見えた気がした。
もう一度確認しようとして振り向くと
その男はもう居なかった。
でも確実にあの男は彰だ。
私は最大に喉を開いて最後に並んでる
ドリランのスタッフの人に叫んだ。
「あのすいません!先程あなたの後ろにいた人どこに行きました!?今すぐあいつを捕まえてください!」
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