case.6「頼んな元カレに」

結局、ホットドッグも食べれず

休憩も終わり、持ち場に戻ってきて

10分ほど経ったが、加藤はまだ帰ってこない。


あいつ、遅いな



「すいません!柴田さん!」



謝りながら走っている加藤の後ろには

何故か見覚えのある女がいた。




「何してんの!?朋花!」


「え、柴田さんお知り合いなんですか?」



そう、だってこいつは俺の元カノ。



『私、修治の元カノ』


「え!柴田さんの!?」


「そうだよ、てかこいつに聞いてなかったんだ」


『言うわけないじゃん』


「じゃお前なにしに来たんだよ」


『私、結婚すんの』



嘘だあ··········

俺まだ引き摺ってたのに、、、

てかこいつ彼氏いたの!?



「え、ほんと」


『うん、ほんと』


「よかったじゃん」


『ほんとによかった』


「相手どんな人?」


『普通のサラリーマン。まあ、あんたよりは収入もあるけどね』


「へぇ、そっか」



なんで、ホットドッグも食べれなかったのに

元カノの結婚情報聞かないといけないんだよ。

あ、そうだ



「悪ぃ、加藤」


「はい?どうしました?」


「フードワゴン並んでさ、ホットドッグ買ってきてくんね?お前の分も食べたいだけ買っていいから!お腹すいてるから俺2個な!」


「あ、わかりました!行ってきます!」



そう言い、俺は3000円を加藤に渡し

加藤をこの場から立ち去らせた。



『え、なんでどっか行かせたの?』


「いや、普通に並んできて欲しくて」


『いやいやいやいや、絶対なんか変な事聞かれると思ったからでしょ』


「別に」


『沢尻かよ。まあ別にいいけどね、あとさ変なこと言わないから』


「あっそ」


『いや、実はさ、少しマリッジブルーというか。いやマリッジブルーでは無いな。結婚はしたい、別に嫌いとか心配とかは無い。ゆくゆくは画家になって海外で個展を開きたいって夢もあるし、まあだからお金はかかるから今私もお金貯めてんのよ!彼氏のために!

喧嘩はあるんだけどこの人じゃダメだとかそんなこと思ったことは無いのよ』



朋花は、少しずつこのドリランに来た訳を

話し出した。



『そのまま結婚しても別に良かったんだよ。でも、ほらなんだろ、結婚式前夜は家族と過ごす。みたいなさ!なんかさあんたに会いたくなったんだよね』


「そっか、でも俺何もしてあげれねえぞ」


『いいよ、それで』


「そっか...」


『でもね、なんかはしたいよね。あんたと最後になにがいいかな』



そう、俺らは元恋人である以前に

昔からの幼なじみで元々大親友。

別れたあとも友達同士で会ったり

別に関係が悪いわけではなかった。



『相撲とる?』


「却下」


『いや、そんぐらいのことしたいんだって』


「なんでお前が結婚するからって最後に俺と相撲とんだよ」


『いや、なんかねほら勝てたらすごい幸せな日々が送れそうとか思えそうじゃん』


「逆を考えて発言しろよ」



少しの間、沈黙が続いたが朋花が

口を開いた。



『私、きっとあんたに会いたかったんだと思う。ちゃんと報告って言うか』


「そっか、ありがとう。」


『後悔とかない?私、違う男の女になるけど』


「……あるよ」


『え…?』


「いや、正直あるよ。出会って20年以上経ってんだぞ。そのうち15年ぐらいお前のこと思っててまたそのうち4年ぐらいお前と付き合えてさ、あぁ、きっとこいつと結婚するんだろうなあって思ってたよ。思ってたけど、だけど…」


『なに…?』


「少し怖くなった、お前と一緒になるってことが。大好きだったからこそ。もしダメになった時に友達としても終わるのが嫌で。だから、あの時別れよ。って言ったんだよ」


『そっか、じゃ最後にぎゅーぐらいしとく?』


「しねぇよ、舐めんな」


『私も、死ぬほど泣いたよあの時』


「は?」


『でも無理なことってあるじゃんって強がってやっと忘れれた。』


「そうだな、」



少しの間ですら私は怖かった。

修治と目が合うのすら怖くて、恥ずかしくて

私は間髪入れずに話した。



『ねぇやっぱ相撲しよ!!!』


「やだよ」


『それしたら全部おしまい!私ちゃんと今の彼氏も好きなんだから!』


「お前ほんとにそれしたら忘れろよ」


『あんたもね』



こうして、私たちはガチで相撲をとった。

どんな元カップルだよって思われるかもしれないけど意外と私たちは昔からこういう関係で

高校の時も普通に思春期なのにガチでプロレスとかしてて、しかも私が勝ったりw

楽しかったなぁ、修治といるの

だから、最後の相撲は勝ちたいとかじゃなくて

本当は、、、、、



「待って無理無理無理お前強すぎる」


『力抜くな!!!』


「おりゃああああああ」



ほんとは、、、、、これだったら

違和感なくこいつと最後にハグが出来たから。

だから、私は結婚する前にこいつに会いたかった。

大丈夫だよ。って感じたくて



「だめだ、お前には勝てねえ」


『さすがでしょ?w』


「昔より力強くなってるわ」


『ねえ!結婚式来てね』


「おう、行くわ。お前のこと奪いに」



絶対だめだし、冗談で言ってるんだろうけど

そんな事言わないでよ。

私、本気にしちゃうじゃん。



絶対だめだし、冗談で言ったけど

本当はもっと真面目な顔で

俺は本気でこの言葉を言いたかった。



『じゃ、私、彼氏のところ戻るわ』


「おう」


『じゃあね』


「じゃあな」


『あ、そうだ。今日パレード何時から?』


「ねえよ、イルミもパレードも」


『あ、そうなの?』


「知らなかったの?」


『あ、いや。無いかもなぁっては思ってたけど彼氏がさドリランのイルミパレードの前でプロポーズしたいんだよねえとか昔言ってたから』


「昨日までなんだよね、そのパレード」


『あぁ、まぁそっか、明後日から休みだもんね』


「そうなんだよね、」


『じゃあの人勘違いしてんだね』


「かもねw」


『私、あそこでプロボーズされるの夢だったんだけどな』


「やり直してもらえよ」


『無理だよ、そういう系伝わんない人だもん』


「そっか」


『とりあえず私行くわ』


「おう」



じゃ俺にしろよ。ってこれだけの言葉が

俺は言えなかった。

朋花が言ったどうしても無理ってこともあるじゃんって言葉がよくわかった気がする。

朋花の彼氏のためにイルミパレードをしてあげることも出来ないし

この結婚を止めることすら出来ない。

無理なことはこの世にはある。



イルミパレード出来たら結婚止めれんのかなw

その為に何億かかんだよ。

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