case.4「食べれないホットドッグ」

休憩になってすぐキッチンカーへと向かった。

昨日までケバブが売りに来てたが

今日はまた変わっているらしい。


4番目に並んだ。

ホットドッグを売るキッチンカー

こういうところに売りに来るキッチンカーは

だいたいそんなに美味しくない。

でも、それがいいみたいなところもあるじゃんね!


休憩が終わるまでにこの順番を待って

そして、さっきのエンジョイサイクルまで戻って食べなきゃ行けない。

それを1時間でしなきゃ行けない。

ずっと加藤を1人にさせる訳にも行かない。


だけど、このキッチンカー

ずっと動かない。何してんだこいつ


そうしてたら、また新たにお客さんが並びに来た。



「あ、先どうぞ」


『え、いいですよ!』


「あ、僕キャストなんで譲んなきゃ行けないんですよ!」


『なるほど!ありがとうございます!』



そう、これがめんどい。

ドリランではキャストはゲスト。つまりお客さん第一。

何があってもキャストはあと。

もう休憩終わりそうとか言ってらんない。


にしてももう40分以上待たされてる。

何してんだこのキッチンカー



「あのー、すいませーん」



1番前の女の人が尋ねた。



『あ、すいません!なにやっても火がつかないんです!』



は?まじ?だるっ、これ休憩終わんぞ



『すいません、ちょっとご機嫌ななめです!』


「あ、そんな報告いらないです!」


「あ、きっとあのガスのことだと思いますよ」


『いえ!わたしのことです!』



私のことなんだ·····

これだめだ、まじ間に合わねえ

昼我慢するしかないか、、、



『きっと!きっと!元栓だと思います!

でも見たくない!違った場合私は詰みます!』



そんなこと言われましても、、、

そうしてるとまた別のお客さんが来た。



「あーも最悪だよ!ほんと!」



なんだよこの客はこの客で



「あの、どうぞ先」


「いや、いっすよ。別にあなたは悪くないんで」


「あ、いやここのキャストなんで、、」


「あ、なるほどそうなんすね」



もちろん、そんなことでその男性客の

機嫌が治まることもなく

静かにピリついた雰囲気が流れていた。


さすがにゲストの苛立ちは

万が一キャストのせいという可能性も有り得る

ここは、僕が受け持とう。




「あの、すいません」


「はい?」


「失礼なんですが、、うちのキャストがなにかやらかしましたか!?」


「あぁ!いやとんでもないです!ドリランのキャストさんはみなさん最高です!」



あれ、この人話してみるといい人なのかも?

僕は続けて彼の話を聞いた。



「あ、そうでしたか。ありがとうございます!キャストもみんな喜びます」


「最高だからこそムカついてるんです·····」


「といいますと?」


「聞いてもらっていいですか!?」


「あ、はい」


「今日友達と3人で来てたんです!で、俺ここ初めて来るから生まれて!すっげえ!楽しみだったんです!ブランチとかちゃんと録画してまでチェックして!でも蓋開けてみたらその2人の友達結婚してて、子供連れてきてて赤ちゃんなんですけど!だから赤ちゃんルートで·····俺まだジャングルパニックにしか乗ってないんですよ!?いや楽しかったですよ!でももっと全種類乗りたいじゃないですか!!!」


「なるほど·····ごもっともです。」


「言っといてほしかった·····子供来るなら来るって·····てか結婚してることすら知らなかった」


「そうなんですか?」


「ありえないですよね!?」


「そうですね·····」



ふと時計に目をやると休憩終了5分前。

あ、もうこれだめだ。食べれない

だってまだ焼き始めてすらないんだもん



「いや!絶対元栓なんです!でも見たくない」



まだ言ってんのかよ。これ


僕は、さっきの男性客に

「でも!頑張って楽しんでくださいね!」という苦し紛れの言葉をかけ

エンジョイサイクルにもどった。


ホットドッグも食べれないまま。



戻るとそこに加藤の姿はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る