第80話 問答無用
「ぐほぁっ!! な、な、なんっ!??」
――――ドンガラガッシャンッ!!!!
吹き飛ばされ、ゴミだらけのアパートの軒先をぶっ転がる孝之。
そこに間髪入れず、
「んどりゃぁああぁぁぁああぁぁぁあああぁぁぁぁっ!!!!」
林檎のジャンピングボディプレスが追撃される。
――――ドシャンッ――――ぶちっ!!
「ぐっはぁああぁぁっ!! ――――ぐふ……!!??」
まるでキングス◯イムばりの押しつぶし攻撃に、孝之は為す術もなく気を失ってしまった。
――――そして数時間後。 ――――むっふっふっふ……。
「――――はっ!??」
目を覚ました孝之。
目に映る見慣れない天井に視線を泳がせた。
キョロキョロ周囲を見回すと、そこは古ぼけた昭和臭漂う六畳和室。
年季の入った丸ちゃぶ台の上には湯気の上がっていない湯呑が二つ。
部屋の真ん中にはなぜか首◯り用のロープが垂れ下がり、その下にはミカンの木箱が転がっていた。
――――なんだこの不気味な部屋は!?
飛び起きようとした孝之だったが、なぜか体が言うことを聞いてくれない。
見ると両手は後ろ手に縛られ、両足も同じくトラロープで縛られていた。
(はぁ!? な、な、なんで!?? なにが一体どうなって!??)
意味が分からず、もがきまくる孝之。
しかし動けば動くだけロープが肌に食い込んで、よけい自由が奪われていく。
――――こ、これはプロの仕業だ!!
嫌な確信をしたところで、
「……やあ、お目覚めズラか?」
「っ!???」
背後から声がかけられた。
ゴロンと寝返り見てみると、そこにはさっき襲いかかってきた女(?)と、心配そうにこっちを見ている優衣菜の姿が。
「ね、姉ちゃん!! 無事だったのか!?」
「うん、ありがとう孝之。心配してくれてたんだね。お姉ちゃん嬉しかったよ」
「…………とか言いながら、何だそのローソクとムチは……?」
「これ? これはいまから始まる審理会用に用意した小道具よ」
可愛らしく言う優衣菜の目は完全に闇落ちしていた。
手には特殊遊戯用に使うのであろう巨大な赤ローソクと、ヒラヒラ状のビニールムチが握られている。
「――――あ……あの~~~……」
どういうことなのか? なにが始まるのか?
まともに会話できそうにない姉の代わりに、林檎を見る孝之。
林檎は眼鏡をクイと上げ、咳払いを一つ。
「え~~ではこれより第一回『三笠優衣菜虐待教育事件』の審理を始めるズラ」
そしてトンカチで畳をドン。
「し、審理……?」
「え~~~~被告人、三笠孝之は原告人、三笠優衣菜の弟と言うことで間違いありませんズラか?」
目をシロクロさせている孝之に、
「答えて孝之」
――――じゅっ!!
ロウソクから熱々のロウを首筋に垂らしてくる優衣菜。
「熱っつぃ!!!!」
「弟で間違いないズラか?」
――――じゅっ!!
「ぅあっ熱っつぃってだからっ!!!!」
「弟で――――」
「ああはいはいそうですそうです!! 弟です!! なんなんだよ!!!!」
「よろしいズラ」
サラサラと言葉をノートに記入する林檎。
書紀も兼任しているらしい。
「では、原告人。あなたは弟である被告人に教育と称しムリヤリ服を脱がされ、破廉恥極まりない姿で一般大衆の前に晒されたということで間違いないズラか?」
「間違いありません」
「いや、違うそうじゃない」
微妙に違っている証言に文句を言おうとする孝之だが、
――――ばしんっ!!
「痛い!!」
今度はムチが飛んできて背中に炸裂した。
「嘘をつかないで孝之!! あなたお姉ちゃんをムリヤリ裸にしてこんなワレメがクッパリ開いた服を着せたじゃない!!」
「最低ズラな」
「してないしてない!! 裸になんてしてない!! その服はあのサラリーさんが持ってきたモノだ!!」
――――ばっしーーんっ!!!!
「痛ったいってっ!!??」
「そして……嫌がる私を引っ張って、不特定多数のイヤラシイ男たちがいる場所へ連れて行ったわよね?」
「ど最低ズラな」
「言い方よ!! だからあれは訓練みたいな――――」
――――じゅ、じゅ、じゅっ!!
「熱っ熱っ熱っ!!??」
「言い訳なんて聞きたくないわ!! あなたのせいでお姉ちゃん……どれだけ怖い思いをしたことか……。ここに逃げ込んで林檎さんに匿ってもらえてなければ、今頃あのチンピラに……よよよ」
「勝手に走って行ったんだろうが!! 俺だって探してたよ!! ていうか逃げながら暴れてただろ!? 道中オッサンは転がってるわ女子高生は泣いてるわ爺さんは妙な髪型に気づかずに歩いてるわカメラはぶっ壊れてるわで大騒ぎだったんだよ!!」
――――じゅ~~~~~~~~~~!!!!
「熱ぁぁぁぁぁぁぁぁっいっ!!!!」
「え~~~~……被告人はシスコン変態ドスケベ責任転換男……と、ズラ」
「いやだからアンタ誰!? なに勝手な解釈してるの!? とにかく縄を解いてくれ!! これじゃただの魔女裁判だ!!」
ギッコンバッタン暴れる孝之。
だが林檎は聞く耳持たず。
優衣菜は思いっきりムチを引き絞って、
「え~~~~では被告人に判決を言い渡しますズラ』
「は……判決……?」
「え~~~~、犯行は極めて身勝手な判断と浅はかな独断により行われたものであり、被告人には一片の反省と後悔の色も見られないことから、本審理会は情状酌量の余地なしと判断。被告人三笠孝之に対し『鞭打ち100回、ロウたらし100回の刑』を言い渡すズラ」
そして畳をドン。
優衣菜の目がキラーン。
――――スパパパパパーーーーーーーーンッ!!!!
――――んじゅ~~~~~~~~~~~~ぅ!!!!
「ふんぎゃぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!」
かくして。
響き渡る少年の絶叫を生贄に。
女どもの感情重視・復讐目的の理不尽裁判は一旦の幕を閉じた。
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