第55話 自爆スイッチ
「……やりましたね?」
「さて、なんのことやら?」
突っ込んだ極太ソーセージをそのままに、額にマジックで〝じゃに~〟とイタズラ書きをしながらシラを切る
孝之はそんな慎吾の姿を後の武器にできるよう、ちゃっかり写真に収めながら追求を続けた。
「とぼけないでください。寝ている間に勝手に俺たちを動かして偽装工作したんでしょっ!?」
「さてはて?」
「さてはてじゃないです。あの晩、こんなイタズラができるのは
「このギクシャクした格好!! 誰がどう見ても無理やり動かしてますよね? それに目もつむって完全に寝ちゃってるじゃないですか!? ほら慎吾、見てみろ。もう一度落ち着いて確認するんだ。不自然すぎるだろう!?」
そう言って慎吾に写真を突きつける。
見せられた慎吾は泣きそうな目でしばらくそれを確認していたが、やがて冷静になったのか安心した顔でコクコクうなずいてきた。
さっきは興奮状態だったので、この違和感にも気づかず力いっぱい暴れてしまった――――すまない孝之。
そんな目をしている。
「…………ふ~~ん、まぁそりゃそうだよな。バレちまっちゃ仕方ねぇ。しばらくからかって遊ぶつもりだったんだけど……やっぱクオリティが足らなかったか……」
悔しそうに頬杖をついてタバコに火を点けた。
ちなみにこの店〝
「当然ですよ……!! まったく……。おかげで俺、昨日今日とえらい目にあったんですからね……」
これで優衣菜との不純行為疑惑は晴れた。
孝之は心底安心して、深ぁ~~~~いため息を吐き出した。
なんだか都合の良いように解釈して舞い上がっているいる馬鹿姉にも引導を渡せる。
しかし
いくらイタズラとはいえ、これはさすがにやり過ぎだ。
文句の一つも言ってやらねば気がすまない。
そう思い、睨みつけてやると、
「でもさ葵少年? ……私最後にこんな写真も撮ったんだよなぁ~~♪」
ニヘラ、といやらしい笑いを浮かべて慎吾にまた新たな画像を見せている。
「――――っ!??」
それは孝之と優衣菜が素っ裸になって絡み合っている場面。
もちろん
「「――――なっ!??」」
目を飛び出させて驚く孝之に慎吾。
慎吾はさらに大量の涙と鼻血を噴出させている。
画像の秘部にはしっかりと黒塗り加工を施して隠してはいるものの、これはもう行為写真と言われてもおかしくない画像。
もちろん孝之に意識はなかったのだから、間違いは起きていようはずもないのだが、しかし偽装だと吐き捨てるにはあまりに問題が過ぎる。
「いやぁまぁ……これは私もやりすぎたと反省しているんだけど。……まぁほら妙に芸術家魂が燃え上がるトキってあるじゃん? お前らイジってたらそうなっちゃってよ。気がついたら色々やらかしてたハハハハ」
「ハハハハじゃないでしょ!!!! 止めろ!! 消せっ!! なんたナニ考えてんだよ!! こんなことまでヤッてたのか!??」
「いやらしい気持ちはなかったぞ? あくまで芸術。美の探求をだな」
「うそつけよぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
起きたとき素っ裸だったので嫌な予感はしていた。
していたのだが……まさかこんなドギツイことまでやらされていたとは。
「っていうかコレもう犯罪ですよねっ!? あんたやってること犯罪だよ!??」
途中で起きなかった自分にも落ち度があったかもしれないが、しかしこれはどう考えてもイタズラレベルを超えている。いくら若い女でも、男を無断でひん剥いて良い法律なんてない。
「いやいや、だから謝ってるじゃん。それにさ――――」
この後、
「優衣菜に見せたらさ。
「なぁにぃいぃいいぃぃぃいいぃぃぃいいいぃぃぃいいぃっ!????」
ドガタン!!
思いっきり立ち上がると、椅子やテーブルにドカドカぶつかりながら店を出ていく孝之。
店の窓越しに、自宅に向かって全力疾走していく姿を見送りながら
極太ソーセージをくわえながら鼻血まみれで涙している〝じゃに~慎吾〟
そんな彼に
問題写真を含めた全データ。
それを譲ってほしいかと尋ねているのだ。
慎吾は眉毛を男前に濃くすると――ムグムグムグムグ。
ソーセージをみるみる平らげ、
「最後の写真だけ――――十万円で買い取りましょう」
少女漫画のヒロインのようにキラキラした目でそう応えた。
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