第42話 ヌキ打ちテスト
「ふう……」
ランチタイムも終わって客入りも一段落。
今日は『
「ふんふふんふふ~~~~んっ♪」
テーブルを片付けながら先日のことを思い出す。
まさか……あの孝之にあんな趣味があったとは。
まぁ、人の性癖なんて見た目からじゃわからないものだし、いまどき珍しくもない嗜好だからべつにいいのだが……しかし……そのせいで現実の女に興味がないとなると放ってもおけない。
頭はイカれてるが、顔とスタイルだけは天下一品の優衣菜がいくらせまっても反応しないというのは、かなり重症なような気がする……。
優衣菜的には『気が多い男よりマシ』などと言っているが『気の無い男』とはそもそも何も始まりはしない。
「う~~~~~~~~む……」
後輩姉弟の近親恋愛(パワーワード)に首を突っ込む気はないが、ヘタをすればこのまま何も進展しない展開だってありうる。
……それはちょっと面白くないな。
少しは現実の女にも興味が向くようにしてやらなければ……。
というかそもそも、どの程度興味が有るのか無いのか、確認する必要がある。
が、考えたところで良い方法は思いつかなかった。
そもそもそういう趣味の男と付き合ったことがない。
だから確かめようにも未知数すぎて踏み込みようがないのだ。
……ならばどうするか?
本人に聞くしかないな。
至極当然でド直球な考えにいたり、
……午後の授業は睡魔との戦いだ。
それが日本史の授業ともなればなおさらのこと。
孝之は、教師の解説を子守唄のように聞きながら、必死にその誘い沼にあらがっていた。
「おい、寝るなよ」
――――ずくっ。
後ろの席の慎吾が、親切心か嫌がらせか、定期的に背中をシャーペンの先で突いてくれる。そのおかげで辛うじて落ちてはいないが、背中は黒いツブツブで一杯になっていた。
眠気が酷いのにはもう一つ理由があった。
部屋の壁が破壊されて、姉弟部屋が繋がってしまってから、優衣菜がことあるごとに夜這いにやってくるからである。
しかもちょうど寝ついた瞬間を狙ってやってくるのだからたまらない。
おかげで優衣菜自身が寝付く朝方まで、眠ることができないのだ。
夜這いと言ってもどこまで本気なのかはわからない。
昔からこういうセクハラまがいの冷やかしが大好きだった姉。今回も単に、弟の
ともかくその真偽を確かめるわけにもいかず、ただイタズラに毎日の睡眠時間を削られていた。
――――ずくっ。
「うぉっと!??」
また船を漕いでいたようだ。
軽く後ろをみると慎吾が眼鏡を光らせて監視していた。
この男。
普段の言動はキチガイそのものなのだが、学業はピカイチ。
学年ではつねに5番以内の成績を維持している。
「スマンスマン……」
手で軽く礼を伝えて、黒板に視線を戻した。
とたんにゆらゆらと揺れはじめ、また睡魔に負けそうになる。
そんなとき。
――――ヴーーーーンヴンヴンヴ~~~~ン。
ポケットの中で携帯が振動した。
この振動パターンは知り合いからのメッセージ。
誰からだ?
取り出してメッセージアプリを起動する。
と。
「ぐはぁっ!!??」
突如、奇っ怪な声を上げガタつく孝之。
「!? み、
先生が驚いてこっちを見てくる。
孝之は慌てて「なんでもありません!!」と取り繕うと、腕の下に携帯を隠した。
メッセージの発信者は
内容は簡潔に『これどんな感じ?』
画像が一枚添付されていて、そこにはカウンターの裏にしゃがみ込みながらシャツのボタンを外してブラの紐を見せ、ちょっと潤んだ目をした
(な、な、な、なんのつもりだあの人は!??)
やろうとしていることが1ミリもわからず当惑する孝之。
とりあえず『なんの冗談ですか?』と返す。
するとすぐに『感想求む』とのお返事が。
しばし眉間を押さえた孝之は『強盗にでも入られてますか?』と心配してみるが『そうじゃねぇよ、グッとくるかって聞いてんの』とすぐ返ってきた。
ますます意味がわからない。
とりあえず正直に『まぁ……ちょっとはビックリしましたケド』と送る。
しれからしばらく間を開けて、再びメッセージが。
『じゃあこれは?』
添付された写真は――――、
さっきよりももっとシャツを
より胸を強調させた体勢で親指をしゃぶっていた。
「ぶぅ~~~~~~~~~~っ!????」
そしてすかさず『感想求む』
(と、言われてもなぁ~~……)
「
再び教師の怪訝な表情。
周囲の同級生も???な顔を向けてくる。
「い……いやいやその……大丈夫です問題ありません」
何がだ!? と自分で突っ込みたくなるようなテキトーな生返事。
先生は首をかしげると、それ以上は何も言わず授業を続けてくれた。
(なんなんだ?? だからなにしたいんだよこの人!??)
頭を抱える孝之の後ろで、慎吾の眼鏡がますます輝きを増していた。
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