第33話 あーーーーーーっ!??
「は、はわわわわ……はわわわわ……はわわわわわわわ」
鎧を引っ剥がされ、真っ赤なビキニ姿になった優衣菜。
部屋の隅にうずくまり、頭を抱えながら小動物のようにおびえていた。
「あ……あの……?」
とりあえず、良さそうな服をみつくろってきた店員さんたちは、そんな優衣菜の姿を見て、どうしたらいいのか戸惑う。
「大丈夫です、
言いながら、剥がした鎧をダンボールに詰めはじめる孝之。
せっかくだから、帰りはちゃんとした服装で帰ってもらおう。
この鉄の塊は宅配便で家に送るか……いや、いっそのこと処分してもらっても良いかもしれない。
「や……やめて……やめて……」
孝之の怪しげな視線に鎧の危機を感じ取り、弱々しいながらも抗議の声を上げる優衣菜。
「あ……あの……? 試着……よろしいでしょうか?」
「――――ひぃぃぃぃっ!??」
しかし、店員さんに話しかけられて、また縮こまってしまう。
どうしてこんなにおびえているのか理解不能な店員さんたちだが、客商売などしていると色んな人間と接するものだ。ここまで変わった人は初めてだが、同じ方向性のお客ならば何度か経験があった。
ようするにこの人は、いわゆる引きこもりオタク系。
人と接するのが苦手で、外に出ることも滅多にない。
ファッションへの興味などは絶望的で、この店のようなオシャレブティックなど天外魔境だと忌み嫌ってる系の人。
そんな人は大抵、見かねた家族か友人が、嫌がられながらも引っぱってくるのだ。
今回もそういうことなのだ。
出会いの衝撃に混乱してしまったが、落ち着いて考えれば怖がることはない。
こういう
見た目も整っていない人が多く、それが故に、世間を遠ざけるところがある。
しかしお任せあれ。
見た目の垢抜けなさなど、着る物次第でどうとでもなる。
アパレル業界〇〇年の我々が、そんなアナタを変えて見せよう。
美人とまではいかないまでも、普通くらいにはさせてあげますとも!!
――――コクリ。
アパレル姉さん三人組は、使命感に燃えた目を交差させ、うなずきあった。
そして縮こまって顔を隠している優衣菜の両腕をそっと開ける。
「「「大丈夫ですよお客様。私たちがきっとお客様を――――ってめっちゃ美人や~~~~~~~~~~んっ!!!!」」」
出てきた優衣菜の顔は、ブサイクどころかアイドル並み、いや、モデルといっていいほど整ったものだった。
まさかの美形に、三人組は同時にのけぞり、さらに混乱を深めた。
え?え?え? なぜにどうして??
こんな美人で、しかもスタイルも抜群な若い女が、フルプレイトメイルにネグリジェなどと頭のイカレタ格好をして弟に泣かされているのだ?
常識的にいろいろとありえないパターン。
やはりこんな客は初めてだ。と頭が真っ白になる。
そんなとき、三人のうち一人が「あれ?」といった顔をした。
「どうしたの?」
「いえ、あの……その。……このお客さん……」
言いながら首をかしげ、優衣菜の顔をマジマジと見つめる。
知らない人に顔を近づけられるのは数年ぶりの優衣菜。
完全に硬直してしまい、うめき声すら上げられない。
するとその店員さんが「思いだした!!」と勢いよく手を叩いた。
「ひぃぃっ!??」
「ん? な、なにが? ……まさかこの人、あんたの知り合いだったとか??」
「ううん、違う違う。そうじゃなくって!! この人あれよ、ほら、あれ何年か前にブレイクしてたモデルの――――」
興奮してそこまで言ったら、もう一人の店員も手を叩いてハッとし、
「ああーーーーっ!! 『
信じられないと口を押さえる。
「え? 三笠優衣菜って……あの……五年くらい前に突然活動休止した伝説の高校生モデルの、あの優衣菜???」
「ええ、そうですって!! 絶対そうです!!」
「「「………………………………………………………………」」」
三人組は真偽を確認すべく、孝之へと振り返った。
視線が合った孝之は、しばし考えたあと。
「………………はい。弟の孝之です」
と、優衣菜の正体について肯定した。
すると三人組はそれまでの混乱を違うベクトルに変換し、
「ぎゃ~~~~~~~~~~っ!!!! マジでマジで!?? わ、わ、わ、私大ファンだったんですよ!!!! うそ、信じられな~~~~いっ!!!!」
「私もファンだった!! めっっっっちゃ可愛かった!! 特集記事いまだに持ってるもん!! うそだ、いまでも超美人!?? ううん、大人になって色気爆増してるわむしろ!! 店長、店長!! ほら、モデルさんですよ!! 超有名な伝説のモデルさんですよ!!!!」
「あ、あ、あ、あの写真撮らせてもらっていいですか!!??」
店長と呼ばれた三人組の一人は、商売人としての目を光らせ、マッハの速さでカメラを持ってきた。
しかし優衣菜は借りてきた猫どころか蝋人形のように固まって動かない。
これも良い社会復帰へのリハビリだと孝之は、
「どうぞ。でも服は着せてやってくださいね」
と
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