第11話 さまようよろいがあらわれた③
「すいません……あのこれ……気持ちです。役立てて下さい!!」
打ち負かされた顔をして敷地の隅に移動した募金活動のおじさんたち。
孝之はせめてものお詫びとして2000円札を箱にねじ込んだ。
「やぁ……お兄さんは優しいねぇ……。……おじさんってそんなに信用なく見えるかなぁ……? ……動く鎧よりも、怪しく見えるかなあ……?」
「僕たちって……みんなの迷惑になってたの? そうなの……?」
「ねぇ、風俗ってなに? お父さんが知ってるのかなぁ?」
わずか1分ちょいで道義心をへし折られたおじさんと、善行に疑心を植えられた少年。お父さんへの時限爆弾を持たされた少女が生まれてしまった。
「いえ、とっても誠実に見えます!! 活動頑張ってください!! 迷惑じゃないよ!! みんな喜んでいるよ!! それはもう忘れなさい!! 絶対お父さんに喋っちゃだめだよ!! ひっぱたかれるよ!!」
「……かわりにお母さんに聞いてみると良いぞ。お父さんが電話で喋ってたとか付け加えるとなおベターだ、痛だだだだだだだだだだっ!!」
よけいな爆弾を追加しようとする慎吾。
孝之はそんな慎吾の鎖骨の真ん中『
「これ以上よけいな罪を増やしてくれるなバカヤロウ!! じゃ、じゃあ行きますんでさようなら、今日のことは全部忘れてください!!」
謝りながら、店内にいる
「あ……あの……お客様……本日はどのようなご用件で?」
店名のロゴが入った
店長のバッジを付けた中年男性が、冷や汗を流しながら鎧の進路を塞いでいた。
脇には体格のいい大学生らしきバイトの男も二人いる。
三人とも顔は笑顔だが、あきらかに優衣菜の入店を拒否していた。
「コーホー……。買い物以外にここへ来る人間がいるのか? それとも強盗にでも見えたかな? コーホー……」
いや……怪しすぎて、もはや強盗にすらも見えない。
純粋に、何を仕出かすかわからない変質者だと思ってやってきた。
……などと言えるはずもなく、店長はできるだけ刺激を与えないよう、朗らかに笑顔をつくる。
「そ、そうでございますか、お買い物にいらして下さったんですか。……そ、それはそれはありがとうございます……。……で、え~~~~と……よ、よろしければ必要なものをお教え頂ければ、こ、こちらでご用意させて頂きますが……?」
「コーホー……気遣いは無用……じっくりと歩きながら品定めをさせてもらおう。……久しぶりの外だ、新商品も見てみたい……コーホー……」
「は? あ……い、いえ、お見受けしたところ随分と歩きにくいごようす。ここは我々に任せて頂ければ……」
久しぶりの外とか……まさか刑務所帰りの変質者!?
店員たちの顔がますます青くなる。
「コーホー……不要と言っている」
ガシャコン。
「お、お、お待ち下さい!!」
一歩を踏み出したところで三人の腕が優衣菜の甲冑を押し止めた。
「コーホー……我に触るな、斬られたいか……コーホー……!!」
ガシャガシャと慌て、剣の柄に手をかける優衣菜。
刺激を与えてしまったと、一触即発の事態に緊張感を上げるバイトの青年たち。
店長はポケットからチラシを取り出し、
「お、お決まりになっていないようでしたら、ほ、ほ、本日はこちらがお安くなっております!! ただいま健康料理レシピのご案内をさせて頂いておりまして、い、いかがでしょうか!?」
「コーホー……うむ。それは見てきた、大変興味深い。……実はすでにあるていど目星を付けてきたのだ。コーホー……」
盾の裏から同じチラシを取り出す優衣菜。
そこには健康スタミナフェア特別レシピ『うなぎと牛レバーのニラにんにく煮込み、スッポンの生き血ユンケルソーダ割り』と書かれていて、そこにマジックで大きく赤丸が記されていた。
「コーホー……とりあえずこれだけは押さえておこうとやってきたコーホー……」
「さ、さようでございますか、いやぁ~~このレシピに注目されるとはさすがお目が高い!! こちらは特別にこだわった産地より直接仕入れた天然素材を使用しておりまして、鮮度、お値段ともに大変お得にご提供させていただいております。お、お、お、おい!! 早くお持ちして、早く!!」
事態を遠巻きに見ていたパートのお姉さんが、慌てて商品を取りに走っていった。
「コーホー……なんだか申し訳ないな。ではついでに……コレも気になっているのだが……」
追加に、鋼鉄製のガントレットで指し示したのは――――牡蠣・アボカド・オクラ・ショウガ・ほうれん草・セロリ・オートミール・チョコレート・カボチャの種・松の実・マムシ・高麗ニンジン・オットセイ・ムイラプアマ・サンショウウオ・バロット・蜂の子・ポンテギ・鹿の◯丸・童子蛋。
「……を、いただきたいのだが? コーホー……」
「も、もちろん全てご用意させて頂きます!! はい、皆さん急いで!!」
パンパンと手を叩く店長。
慌てて散る店員さん。
商品を手にし、次々とレジを通過させている。
どうあってもこれ以上進ませないと一致団結していた。
どんどん買い物袋に詰め込まれていく怪しげな食材(?)。
頭を抱える孝之の後ろで慎吾が、
「……あれって全部精力剤……的な……おまえ……やっぱりお前ら~~~~!!」
「違うっつってんだろ!! てかなんであんなもん置いてるんだこの店は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
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