第2話 全ては神の名のもとに

                 ※2

「バカ過ぎて笑うしかねぇーーーーー」

「こんなのが勇者候補とは」

「ひ弱そう」「事務系じゃしな」

「頭も悪いだろ」「前のは良かったわね」

「○×△□☆〒!!!!!!!」

 何が何やら分からないが、貶されているのだけはよく分かるので、怒って叫ぼうとしたけど声は出なかった。

「我らに何か言いたいならまず種族を決めよ」

「これは異世界転生だぜ、アニメ好きのお前なら分かるだろ?」

 俺がいる所は白いプラスチックの様な板に囲われた、そこそこ広い部屋で天井のガラス板から明かりが室内に差し込んで来ている。

 俺に話し掛けるのは前に並んだ3体の石像で、それぞれドラゴン・長髪の女神様・頭からフードローブを被った魔導士の姿をしていた。(俺は夢でも見ているのか? 体はきっと暖かい布団の中にいる筈だ!)等と現実逃避をしても意味がない。

「×△■◇〒………」

「ここは【転生の間】である、まず転生の水晶に触れて種族を決めるのだ」

 種族とか意味が分からん、異世界転生とか本当にある訳がない。ある訳が無いのだが早くやれやるんだと石像達が煩いので俺はそれに従うことにした。

「【転生の水晶】はほれ、儂らに向かって左側にあるであろうが」

 (左側とな)言われた方向へ意識を向けると、確かに金色のテーブルに載せられた紫色の水晶玉がありその側には全身鏡が一つ立っていた。

 (あっ、あーーーーーーーーーーー)

 俺は何に驚いたのか?

 驚いたのは全身鏡の方でありそこにはなんと! 青白い魂が一つフワフワと映っているではないか。(これが今の俺なのか? ああそうだ……)

 頭がボーッとする感じがしていたが、自分の姿を見て我に返った俺は底なし沼に引き込まれて死んだんだと思い出す。騒いだり暴れたりしたい所だが魂の状態では何も出来ないので、言われた通りにまず種族を決める事にした。

 (魂の身体でどうやって触るんだ? 触ると言うより接触する感じかな)

 慣れない体を動かして転生の水晶に魂を触れさせると、それが光り出して水晶玉の上に何やら文字が浮かび上がりそれがスロットの様にクルクルと回転し始める。

「お主の種族はランダムに決まるのだ」

「貴方は転生の意味が理解できていますか?

 貴方は死者なので現世との繋がりや未練は、全て断ち切らなければなりません。人間やエルフ等既存の人型にはなれませんが、動物や昆虫に鳥類・モンスター・ドラゴンとかレアですが伝説級の種族もありますよ」

「ワクワクするだろ、そのスロットが今後の人生を決めるんだぜ」

 (人型になりたいーーー)とか、(好きな種族を選ばせろよーーーーー)と叫びたいけどは声は出せない。

 【俺は運を天に任せるしかないのである。】

 (モンスターは嫌だ、動物でもいいがモンスターだけは嫌だぞ!)と最初は心の中で願ったりしたのだが———(違う逆だ!)と閃いた。

 (触手でもいいがスライムがいいな、スライム来いーースライムーーーーー)

「……可愛らしい種族ですね」

 (神様に邪なお願いを叶えて貰える筈がないと)

「【ただの子犬】ーーーーーーーーーー」と、俺の第二の人生・種族が決まった後に笑い出すのはドラゴンの像。

「これは運命なのじゃ、1度決まった種族を変更するのは神にも許されん」

 種族が決まると魂である俺の体が輝きだし、光が収まった後に全身鏡へ体を映すと薄茶色の毛につぶらな瞳、クルンと愛らしい尻尾が付いた動物の体が映し出される。

 【体重6㎏程になる中型犬LVワン、俗に言う柴犬の子供というやつだ】。

「ワンワンワンワンワン!」

 (こんな弱い体では魔王と戦えない! やり直してくれーーーーーーーーー)と四本足で床に立っている俺は、前に並んだ3体の石像に向かって吠えまくる。

「吠える姿も可愛いですね」

「えーーーーい煩いぞ犬」

「駄犬は保健所に送っちまうからな」

「ワンワンワンワンワン!」

「どんなに怒ってもやり直しは出来ません、運命なのです」

 神様は神様らしく犬の言葉が理解できるようで、毛を逆立てた俺はウーーーーーーーーと牙を剥きながら睨んでやった。

「例え子犬であったとしても、魔神や魔王を倒すための戦力である事に変わりはないので頑張るのだ。素直に諦めて我らの話を聞くがいい」

 (こんなの認められるかーーーーーーとその前に……)

「ワンワンワンワン」

「我らか? 我らは【GHS】だ」

「それじゃ分からねぇって」

「God・Different world・hero・dispatch・consulting system、神による異世界勇者派遣コンサルティングシステムですよ」

 (分かるような分からないような……)

「これだからじじいと女は無駄に長いし難しいんだよ。神様が全宇宙のために勇者派遣業をやってまーーーーす、ぶっちゃけただの雇兵なんだが気楽に【勇者システム】と呼んでくれ。相談料は金銀財宝に宝石とか酒や喰いもんでもいいぞ」

「神は見返りを要求しません!」

「するだろ普通に」

「神とは無条件に与え続けるだけの崇高な存在なんです!」

「それだと俺らが飢えるし、ただより高い物はないってのは宇宙常識だろうが」

 (神様にも色々あるんだなぁ)と俺は思った。

 神様だか何だか知らないが石像と話すのはやりにくいので、そのお姿を見せて欲しいとお願いするもそれは無理だと断られてしまう。

「神の姿は人に見えず、ただ崇め奉られるのが常識と言うものだ。お主がいるここは四次元世界のどこかにある【転生の間】だが、機密なので場所は教えられない」

「そんないい加減で信用されるかよ」

「信用しなさいただの子犬」

「無理だよなぁただの子犬。イダダダダダ……」

「此からお前の派遣先に付いて話すのだが、その前に少し話を聞いて貰いたい……」

 

 《物に恵まれて働かなくていい神様の世界は、退屈極まりなく時間をもて余しており不老不死かつ不死身であるが故に、それは地獄にも似た苦しみであるという。

「そこでだな……」

 国を作って戦争させてみたり、神の名の元に美男美女を集めたり、豊かになって煩くなった国に天罰を下して滅ぼしたりとか、およそ考えつく事は全てして来たそうだ。

「やり過ぎて儂らも滅び掛けたりした訳だが、今も昔も暇で暇でしようがない」

 今の神達は聖神族・魔神族の2つの勢力に分かれて争っている。この様に争う意味など神達には無いのだが、対立勢力がないと生きていても楽しくないんだとか。

「ワンワンワン」(そんなの分かりたくない)

「平和など野山に生えてる植物の生活と変わらず、ただ堕落するのみだ。理解して欲しいとは思わぬが神達は、自分の勢力を応援したり手伝ったりする事で生を実感し、生きててよかったぁーーーーと思うようにしておる」》

 【神様って案外酷いんだなぁと俺は思った。】

「ワンワンワンワン」(神様の娯楽のために戦うなんて俺は嫌だ)

「そうか、なら死ね今すぐに」

「あなたは一度死んだ身なのですよ。エインヘリアルと言うのはですね……」

《エインヘリアルになれる魂は全宇宙にい数百億だかの人口の内、死んだ人の中からランダムに選ばれるそうだ。その当選確率は数千万分の1で宝くじより低い、つまり俺は超ラッキーな人になるらしい。(何だかなぁ)

 【エインヘリアルとはーーーーーーーー】。

《1.【無条件・無報酬】で神の為に戦うヒーローである!

 2.戦場で死んでも直ぐに復活し【永遠に戦い続ける】のが使命!

 3.役立たずや捕虜とかは【鉱山で重労働】になるそうだ。

 4.【神様に逆らっちゃだめーーーーーーーー!】

 5.神に逆らう魂は【予測通りに即抹消……】だって。》

 【酷いシステムだなオイ! と俺は思うが神様に逆らうのは止めておこう】。》


「ワンワワンワンワーーーン」(俺はただの子犬だぞ、戦えないぞーーー)

「昔は楽で良かったなぁ」(華麗にスルーーーー)

「人権、権利、金、金って時代が進むと煩くなって敵わん」

「余計な知恵をつけると面倒ですが、知恵をつけないと使えない訳でそろそろリセットしようかなぁとか考えたりするのです」

「ワンワンワワン」(そんな話を俺に聞かせても大丈夫なのか?」

「知った所でお主には何も出来まい」

「私たちは暇を持て余しているのです。少し付き合いなさいそうそう……」

 最近どこかの星が一つ消えたらしい数十億の命を道連れにして。もう少しで戦争に勝てそうだった我らの指示に従わないからだとか、残酷な事をするなぁなんて俺は思ったりするのだが壁際に並んだ石造達は口を揃えてこう言った。

「我らは強制などしておらん争いはお前たちが望んだことだ」と。

「何もしなくても勝手に争い始めるものです、それが生きるという事」

「争いが始まったら俺達は、勇者候補とか兵器を揃えて売り込みに行くんだ。後は適当に煽りながら力を授けたり、やり過ぎないように止めたりするが暴走して星ごと消えたりなんて事も偶にある」

「中々上手くいかないんですよね。光を司っている温厚な私達と違って魔神族側は酷いんですよ残酷かつ狂楽家で例えば……」

 あることない事を吹き込んで戦争を誘発したり、生活環境を悪化させて人々が争うように仕向けたりする。適当に選んだ人を呪って暴れさせたり、ピーーをしながらピーーーしたり、ピーーーがピーーーになってピーーーーーーしちゃったり……

「魔神族って酷いと思いませんか?」

「奴らが暴れると儂らの出番になるのじゃ」

「マッチポンプとも言うけどな。元を正せばみんな同じ神様なんだぜ」

「そういう事は教えなくていいんです!」


 光の女神様、思慮深そうな魔導士に、自由主義なドラゴンと、初対面の俺が3人に抱いたイメージはこんな感じ。そうそう……

「ワンワンワン」(皆さんの名前を教えて下さい)

「儂らか、儂はだな……」

「全宇宙でもっともイカシタ最強神と言えば俺様だぜ!」

「イカレタの間違いでしょ」

「格好良く気さくで頼れるナイスガイ!」

「野蛮で適当に生きているドラゴンです」

「広げた翼は町より広く、地面からビルを引抜ける怪力を持ち、口から吐きだす光線は一撃で大都市を焼き尽くす! そんな全宇宙で最強かつ最も素晴らしく立派で偉大な神の名前は!!!」

「ゴーちゃんです、ゴズウィル・レイ・ブラストドラゴン。長いのでゴーちゃんと呼んであげて下さいね」

「喧嘩売ってんのか堕女神ああ!」

「私を差し置いて最強とか言うからですよ」

 理由は分からないがゴーちゃんと女神様は、仲が悪そうだなと俺は理解した。

「儂はな……」

「私こそ全宇宙、最強にして最も美しい女神なのです」

「石像は美化されてるから勘違いするなよ本体はおばあちゃんだからな」

「おばあちゃん……こほん、いいですかただの子犬……」

 〘ゴーちゃんと違って女神さまは人間サイズだが、パワー、魔法力共にゴーちゃんを遥かに凌いで素手で星が割れるとか自慢してきた。(嘘っぽいなぁ) その姿は宝石が自らを恥じて身を隠すほどに美しく、万人を虜にする芳香を放つ汚れを知らない全宇宙に崇められる清廉な光の女神様らしい。〙

「やりまくりの癖に清廉とか恥ずかしくねぇのか?」

「私の名はアテナイ・フレイム・キレイです」

「キララちゃんて呼ぶんだぞ。頭と体がキラキラでちょっとイッちゃってる女だ」

「向こうで話しましょうかゴーちゃん」

「いいぜやってやるよ!」

 (神様がこんなんでいいのかな?)思考が追い付かない俺は、石像の前でお座りしたまま黙って話を聞いている。すると突然、ドッゴーーーーーンと爆音が天井から聞こえてグラグラっと床が激しく揺れた。

 (地震が来たーーーーーーーーーーーーーーーーー)

 慌てたワンちゃんはここから逃げようとするも、四方は全て壁なのでどこにも行けず困ってしまった。行き止まりな白壁の前でオロオロしていると、「いつもの事だから慌てなくてよい石造の前まで戻って来るのだ」と落ち着いた声音が聞こえてくる。

「ワンワンワン」

「本当に大丈夫なのじゃと? 心配せんでもよい。お主のいるこの部屋は核ミサイル程度では傷一つつかぬ、オリハルコンより強固な宇宙最強の金属【ゴッドアイアン】で作られておるのだ。あの2人が少々暴れた位で壊れたりはせんよ」


 (最強、最強って……まぁいい、それよりもだ)

「ワンワンワンワン」

「儂の名はオーディナルじゃ。聖神族を纒ておる正真正銘、最強にしてもっとも賢き偉大な宇宙神である。さてただの子犬よお主に此れからして貰う仕事じゃが……」

 子犬でどうやって魔王と戦うんだ俺? と不安に思ったりしたが、そうはならなさそうなので安心したりしなかったりする。

「魔神や魔王の討伐はプロ、修行を積んだ本物の勇者がするので今のお主には全く関係がない。勇者を見かけたら最大限の協力をするのじゃぞ」

「ワォーーーーン」(えーーーーーーそんなぁーーーーーーーー)

「まぁ関係なくは無いのじゃがお主にして貰うのは、モンスターハンターつまり儂らの食料集めがメインの仕事になる。ただこれが少々厄介でのう……」

 耳がおかしくなったのかな俺?

 【全高40m越えの怪獣を狩れ】とか無茶苦茶が聞こえた気がしたんだが、聞き間違えじゃないよね? ここは夢の世界じゃないよね?

「小さな動物をチマチマ育てるのは効率が悪い! マンモスでもまだ小さ過ぎるのじゃもっと効率的かつ機械的に量産し安く提供せねばならん」

 《お肉を必要としている人は全宇宙で【数百億人もいる】もいる。

 【どうすれば美味しいお肉を効率よく短期間に、沢山育てられるのか?】と神様がうんうん悩んだ結果、【そうだ怪獣を育てよう!】と言う結論に至りました。

 何故こんな結論に至るのか今一理解できないが、もっと恐ろしい話がある。

 なんと!!! 怪獣はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 【育てるのが面倒なので放し飼いにされている、それも沢山だ。】

 【俺がこれから行かされる惑星は丸ごと一つの超巨大な養殖場であるらしい】

  〘怪獣が町とか軍事基地を襲っています!〙

  〘飛行船やら貨物輸送船が襲撃されて大被害!〙とか、

 勇者システムにメールや電話で抗議がよく来るそうだが、此れらは英雄になる為の訓練だとかエインヘリアルらしく戦えなどと、神様は無視をしているそうだ。》

「お主らの世界にも昔は沢山いたじゃろう恐竜が。数が増え過ぎてちと困っておるがあれより遥かに強くて大きい獣を倒す命がけの仕事じゃ、〘頑張れば何とかなる〙」

 【冗談ではない! と俺は吠えて神に猛抗議を開始した】

「まぁそう吠えるでない。羽虫みたいにプチっとやられるかも知れんがお主はエインヘリアルなので何回死んでも大丈夫じゃし、成果を上げれば褒美も出してやるぞ」

「ワンワンワンワン?」(褒美って何ですか?)

「元の世界に若返って復活できたり、ハーレム生活をしたりとか、宇宙戦艦をゲットして冒険旅行なんてのもある。努力次第でウハウハの豪遊生活なのじゃ」

「ワンワンワン?」

「怪獣は魔王より強いのか? そういう事もあるかも知れん。エインヘリアルが闘争心を燃やせるように怪獣にはしっかりと戦闘能力を持たせておるから期待せよ。人間死ぬ気になれば何でも出来るものなのじゃ」(ふざけるなぁ!)

「ワンワンワン!」   「元事務員だからどうした!」

「ワワンワンワン!」  「子犬だからなんだと言うのじゃ!」

「キャンキャンキャイン!」

「戦闘経験は実戦でどうにかするがよい! ええい情けない事を言うでないわ」

「ワンワンワーン……」(そんな過激な仕事は無理! 理不尽だーーー仕事の変更を要求するーーーーーーーー)

「戦うのが嫌なら愛玩動物になるかの? 冥界の女王とかどうじゃ、スケルトンやゾンビに囲まれて可愛がられる人生も悪くないかも知れん」

 (滅茶苦茶だこのじじいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)


 耳をうなだれ尻尾を降ろし、嫌だと言う態度をしっかり表しながら俺は「ワンワンワンワン」(どうしてもやらないと駄目ですか?)と聞いてみる。(転生なんかせずあのまま死んでいた方が幸せだったかも知れない……)

「人生諦めが肝心じゃ納得した所でこれを授けよう」(納得なんかしてないぞ!)

 《オーディナル様がこう言うと俺の頭上が光って、そこから金のチェーンに緑の宝石が付いたペンダントが落ちてきて、首輪のように俺の首へピッタリと収まった。

「それは【S(ステータス)ペンダント】じゃ。呪いの力で首から外れんように作られておるが、前足で触れて使い方を確かめるがよい」

 (やる気でないなぁーーーーーーー)まっいいか。

 言われたとおりに前足で触れると、ペンダントから光が照射されて半透明の画面が空中に表示される。四角い管理画面に表示されているのは能力、四次元BOX、カスタマイズとヘルプに3D通信欄とそれに付随するメール・SNS機能。

 3D通信とは話し合っている人の前に自分の立体映像が表示されて、まるでその場にいるかのように話せる未来的な通信システムの事。

 他は元の世界でやっていたゲームとそんなに変わらないようだ。》

「4次元BOXには50㎏まで自由に物を入れられる、ヘルプに転生先の国や仕事について纏めた資料があるので後で読むがよい。ではそろそろ転生するとしようかの」

「ワンワンワン」(転生ってどうやるんですか?)

「ちょっと待ちなさい!」

「どうしたんじゃ綺麗なアテナ?」

「いい忘れていましたがただの子犬は、子犬であって子犬じゃないんです」

 話が終わりそうになると女神様が割り込んで来るので、座り直した俺はまだ続くのかなぁーーと後ろ足で耳を掻きつつ静かに待つ。

「分かる様に話すのじゃ、清廉潔癖で全宇宙に崇められる偉大な女神キララよ」

「キララと呼ぶのは止めて下さい、オーディナル様を差し置いて最強を名乗った事は謝ります。ただの子犬はですね……」

「何とそうじゃったのか! これはめでたい誇るが良いぞただの子犬」

 《今一分かりにくいのだが俺は、【エインへリアル5万人キャンペーン】に当選してしまった凄いワンちゃんであるらしい。

 神様達は凄いパワーと技術を授ける方法を知っている。

だがエインヘリアル全員にこれを授けると勇者だらけになって宇宙のバランスがおかしくなる。なので5万人に1人の割合で特別な力を授ける事により、秩序を維持しつつ真のスーパーヒーローを育てているそうだ。》

「なぜキャンペーンかと言うとですね……」

 《【神様は絶対公平で無ければならないから。】

 戦場を戦い抜いたプロだろうが、ノーベル賞を貰うような天才であろうが、俺みたいな凡人・ニートでも差別しない。犯罪思考を持つ者は排除されるが、アニメのヒーローがビックリするような超能力を戦闘経験の全くない俺が貰えると言う。》

「毎日々数万人も死んでいく死者の中から選ばれた3人×5万人に1人で、数千億分の1という超低確率キャンペーンにあなたは当選したんです。ハイ拍手ーーーーー」

 女神様の像が高らかに宣言すると突如として頭上にくす玉が出現し、それが割れて紙吹雪と共に『当選おめでとう!』の垂れ幕が落ちてきた。そして太鼓を叩く音がどこからか聞こえて来るとパチパチパチと神様たちが手を叩いてくれる。

「……」

「なんだか反応が鈍いですね」

「もっと驚いていいんだぜ」

「ワンワンワンワン」(驚き過ぎてどう表現すればいいのか分かりません)

「そうかそんなに喜んでくれたか。では儂が直々に力を授けようぞそーーれ……」

 オーディナルがそう言うとSペンダントを貰った時の様に、頭上が光ってそこから七色に光る星形のペンダントが振って来て俺の首輪に引っ掛けられる。

「それは七星ペンダントじゃ。余りにも強すぎるので魔王や怪獣等と戦うとき以外は反応せぬが、1週間に一度だけ神獣に変身して圧倒的な力で戦えるようになる」

「使いたい時はそのペンダントに触れつつ」

「ゴッドチェーンジ! ってポーズを決めながら格好よく叫ぶんだぜ」

「ではそろそろ惑星ミーティアに転生させてやるとしようかの」

 オーディナルがこう言うと俺の体がふわりと浮き上がり、輝きながら宙に浮いた子犬である俺は暫くすると、どこかにワープさせられてしうのだった。

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