第219話 土と蜘蛛(7)
破られた扉の方向から聞こえる声に、全員が注目をした。そこには、一人の少女が歩みを進めていた。純白のワンピースに長い黒髪と大きな黒い瞳。避暑地で涼を過ごすお嬢様といった印象である。
「雪神、このような所まで、いったいどうしたのじゃ」
みなもが声を上げると、
「みなもの
紗雪が、嬉しそうにみなもから送られた短冊を掲げた。
「紗雪、白新地を離れても良いのですか?」
「はい。
見た目とは裏腹にサバサバとし、大胆な紗雪の行動に、実菜穂と陽向は、改めて紗雪の魅力に惹かれていた。
「すまぬが、雪神。先ほどの言葉の意味を教えてくれぬか」
みなもの一言に、紗雪は優しい笑みのまま「はい」と答えた。
「
「えっと、神の御霊と人の御霊を持つ。それって、もしかして、紗雪と同じ感じってことかな。てっ、それは
実菜穂が声を大きく上げ、驚いているリアクションに、
「はい。ご
紗雪は、その様子を見ながらクスクス笑っていた。
「紗雪、何をそんなに笑うのですか?」
事の重大さに対し、面白そうに笑う紗雪に、
「だって、
天上から見通したような紗雪の言葉に、実菜穂たちは自分たちも全体像が見えてきたように思えた。
実菜穂の冷静になった顔つきを見て、紗雪は軽くみなもに頷き、言葉を続けた。
「ああっ、そうそう。
紗雪の問いかける瞳に、三人は頷いた。
「ですから、人の御霊が六つに分けられたら、戻すことができません。ですが、神の御霊は違います。欠けるものがなければ、神の御霊はもとに戻せます。だとすれば‥‥‥」
紗雪は、実菜穂をみなもの前に連れてくると、実菜穂を両手で包ませた。
「六つに分けられたハスナの神の御霊に、六つに分けられた詩織の御霊を包ませ、それを一つに戻せば、神の御霊と一対になり、詩織の御霊は蘇ります。これも、神霊同体のなせる
「その手があったか」
死神が、いままで経験がない御霊の技を知り、瞳を輝かせた。紗雪が、再び頷いた。
「ただ一つ、注意しなければならないことがあります。六柱を討ち、御霊を無傷で取り戻すことが必要です。それで、こちらも有利に戦えればと思い、お伝えします。裏鬼門に入るには神霊同体に成らないと入れません。まあ、他の神に知られて困るのは、天上神の方ですから、助けが入らないようにすることに必死なのでしょう。それと、龍神と化した六柱の天上神の正体ですが、星の神、
紗雪は微かな笑みを浮かべて、語った。
「紗雪は、どうしてそこまで知っているの?」
実菜穂が、呆気に取られていた。
「外から見ていれば、全て分かるものです。私は、天上、地上の事には関わることが許されませんので、ずっと見ているだけでした。でも、みなもが動けば、話が変わります。
紗雪が実菜穂を見つめた。その瞳は、『みなもを頼みます』と伝えていた。実菜穂は、深く頷いた。
「
「はい。お仰せのとおりに」
みなもが粟の神の憂いを祓うように見つめながら、書を差出した。粟の神は深く頭を下げて受け取ると、姿を消した。
「もともと裏鬼門は、閉じねばならぬ場所じゃ。いまより、六柱討伐を決行する」
みなもが声をかけると、火の神、シーナ、死神は頷き、オーラを
霞は、シーナの強く美しく
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