第206話 愛情と情愛(1)
「まあ、私の巫女なら当然の結果だけど、霞はまだ危なっかしいなあ。
シーナの口調は柔らかく聞こえたが、実のところは、ヒヤヒヤさせられたという想いがかなり
「う~ん。まだ慣れないのかなあ。
(シーナは、何もかもお見通しか。でも、躊躇いが自分を傷つけるのは何となくイメージできるけど、相手を傷つけるってどういうことだろう)
霞は色々と考えを巡らせた。
「ねえシーナ、どうして躊躇いは相手を傷つけるの……!?」
霞が言いかけた瞬間、シーナの瞳が光り、
首元で手刀を止めたシーナの眼が、鋭く光っていた。
「いまの一撃で首を
霞は、突然鋭くなったシーナの気迫に固まったまま動けなかった。
子どものようにジッと見つめる霞の顔を見ながら、シーナの表情は徐々にいつもの柔らかな笑顔に戻っていった。
「やだなあ、霞。間違わないでね。霞は私にとって、
いつものようにフワフワしながら、シーナはフフーンと笑った。固まっていた霞もシーナの笑顔に表情を緩めた。
二人は学校にたどり着いた。グラウンドは
「おーっ、これは派手にやったね」
荒れ果てた学校を見て、シーナはワクワクと目を輝かせていた。
「これは、
「いや~。そっかそっかあ」
霞が申し訳なさそうに、頭を下げている。シーナは荒れた学校を見ながら満足な笑みを浮かべていた。
シーナにとって破壊とは、一つの務めでもある。だが、シーナが見ている荒れたグラウンドは、風の神の巫女として務めを果たしたということではなく、霞の必死の立ち回りを見ることができたということの方に心を躍らせていた。
「あっ、そうだ。シーナ、
一人でいたときは時間が無いうえ、いきなりの
「いまは開けない方がいい。呪われた人の末路だ。もう、生きてはいない。呪いで辛うじて御霊が繋がっているだけの人だ。いや、もはや人でもない。みなもでなければ、どうにもできない」
シーナは体育館の方をチラリと見ると、首を軽く振って沼地の方向に顔を向けた。
(ここに来てから、シーナの言葉が少しおかしいなって思ってた。私、いま分かった。シーナは、ここに来るのは初めてじゃない)
シーナの横顔を霞は色で見ようとしたそのとき。
キーーーーーーーーーーン
金属を引っ張るような高く張り詰めた音が、霞の耳に届いた。
日が沈まぬ校庭に一人の影が浮かび上がっていた。
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