第196話 巫女と見習(1)
「何が来たのかと思えば、
女は、
「あなたが、この神社の宮司ですか?」
秋人が打ちつけられた痛みに堪えながら、立ち上がると女に訊ねた。
「いかにも。この
志希名が背を向け、秋人たちを迎え入れた。隼斗も立ち上がり、志希名について行こうと秋人と息を合わせて足を出したとき、鎖が無いことに気がついた。お互い足元を確認し顔を見合わせてから、自由な歩幅で志希名について行った。
鳥居をくぐると、広い敷地に朱色の拝殿が見えた。参道には
秋人たちは、拝殿からそれた大きな家屋へと案内されていった。家屋は、本殿と渡しの通路で繋がっており、神社全体で見るとさながら豪商の屋敷を思わせた。
(大きい。陽向の神社の倍以上はある。こんな山奥にあって、氏子も多いとは考えられない。
志希名の後で秋人が周りを見渡している。鳥居からここに来るまでに、何人かの巫女を見かけた。その巫女たちはまるでこの神社を警護しているように、秋人たちを見送っていた。
「背の高い男。お主、いま見えぬはずのものを見たであろう。神より賜ったものを身に着けておる。差し詰め、
志希名は振り向くことなく声を掛けた。
「お前、何か見たのか?」
隼斗が隣に来て小声で秋人に訊ねると、秋人は首を振った。
「怪しいものは見ていませんよ。何人かの巫女とすれ違っただけじゃないですか」
「おいおい大丈夫か。ここに来るまで、巫女さんなんて見かけていないぞ」
「えっ!」
秋人は驚いて振り返った。遠くに巫女の立つ姿が見えた。
「漣さんは見えましたか」
秋人はすかさず漣に耳打ちした。
「見えている。あれは、この社の護りだ。おそらく鉄鎖の神の代々の巫女たちだろう」
漣が秋人の顔を見上げていた。
屋敷に招かれると十畳ほどの広い部屋に通された。
「その
志希名の隣には巫女姿の女の子がいた。髪を後ろに一つに束ねている。内気で大人しそうな様子が窺え、年齢は霞と同じように見えた。その巫女が大きく頭を下げた。
秋人も隼斗もゆっくりと頭を下げた。ただ、漣は黙ったまま巫女の顔を見つめていた。
(この子、間違いない。
漣は巫女から志希名の後姿に視線を移していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます