第143話 呪縛と解放(25)
強烈な威力を持つ
あらゆる物体、邪気、妖気、全てを巻き込んでいき粉砕していく。最後に霞を飲み込もうと
「上に逃げたところで、飲み込まれるだけだ・・・・・・」
少女は声を途切らせ、霞の行動に息をのんだ。
霞は上空に高く飛び上がると、手刀に緑のオーラを
(風を二つに切った。ただの風じゃない。神の力を宿した「破邪の制裁」、
少女は霞の動きに目を奪われていたが、すぐに意識は戦闘の場へと戻った。少女が目にしたのは、霞が右腕を振り上げ指を天に向けている姿だ。
少女の周りに上昇気流が発生した。「破邪の制裁」でまき散らされた様々な残骸が突き上げられていく。少女もまた空へと巻き上げられようとしていたが、下駄をグッと地面に突き立て耐えた。
「こっ、これが風の神の巫女の力なのか。あいつは、本物なの・・・・・・だけどまだ」
少女が
上空に巻き上げられた身体が
(なんて瞳をしている。透き通って美しく、
霞の瞳を見つめながら、少女は空から落ちていく。燃え尽きるのではないかと思えるほどの圧を受け、背中から地面へと叩きつけられた。衝撃波が辺り一面の物をなぎ倒していくと、つづいて爆音が空気を震わせた。
(ああっ・・・・・・だめだ。身体が)
全身がバラバラになったのかと感じる衝撃が走ると同時に、意識が
(指先すら動かせない。止めをするか。願うことなら、この村を神々をその力で・・・・・・)
薄れゆく意識の中、霞が止めをするのを静かに待っていた。だが、少女が思い描く情景はいつまでたっても迎えることはなかった。
ポツ、ポツ・・・・・・
少女の
(どうして、頬が濡れているのだろう。少しずつだが痛みが和らいでいく。身体が
少女が目にした光景。それは、喉元まで数ミリの距離に打ち込まれている拳、そして少女の顔を覗き込む霞の緑色に輝く瞳、さらにその瞳から流れ落ちてくる美しい雫であった。
「お前、泣いているのか・・・・・・・なぜ、止めをしない」
「だって、だって、
泣きじゃくりながら、思いの全てを吐き出していた。
(・・・・・・ははっ、参ったな。霞っていう巫女、強いのか弱いのか分からないや。あの眼はもしかして泣きながら闘っていたのか。その気で打ち込まれたら、この首は飛んでいたな。さすがは、
動かせるようになった右手を胸にあてると、御神体を取り出だした。
微かに震える手で御神体を霞に渡すと、泣き続ける霞の涙をぬぐった。
(霞・・・・・可愛いのに強い巫女だな)
フッと息を吐くと少女は笑みを浮かべた。
「
少女が息を詰まらせながら、霞に聞いた。霞は何度も頷いて見せた。
「それは大丈夫です。残りの二つは、わたしなんかより強くて頼りになる巫女が取り戻しに行ったから。きっともう戻っていると思います」
「霞っ・・・・・・お前より強い巫女っていったい」
「うん。えっと、
(・・・・・・日御乃光乃神、水面野菜乃女神・・・・・・ミナモ、みなも・・・・・・って、ユウナミの神とアサナミの神の
ガバッと少女は起き上がった。
「イッたたたた」
「大丈夫ですか」
「大丈夫だ。もう何とか動ける。それより、こんなこと頼めた義理じゃないが、私も一緒にその神に会わせてくれないか」
少女が霞に頭を下げた。霞はワタワタしながら、ウンウンと頷いた。
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