第55話 神と巫女(10)
三人がフロアの入口に立っている。
「あーっ、二人ともどうしたのその格好」
実菜穂が声を上げて陽向と霞を見た。服が派手に破れているのに今更ながら気がついたのだ。実菜穂の指摘で改めて気がついた二人は、顔を赤くしていた。
「ちょっと待って・・・・・・」
実菜穂がなにやらゴニョゴニョと口ごもっている。どうやらみなもに確認をしているようだ。
「よし、分かった。やってみる」
実菜穂が二人を抱き寄せると水色の光で包み込んだ。陽向と霞の服が元通りになるのと共に疲れも一気に消え去った。
「わっ!身体が軽くなった。はれれ、服も元に戻ってる」
『こらあ、霞。服ならわたしも戻したぞ~』
感激している霞に中にシーナが入り込んできた。
「わあ。そうでした。でも、本当に身体は軽くなったよ。ここに来るときよりも調子いいみたい」
『そりゃそうよ。それが、みなもの力だもん。どんな酷い怪我でも治癒ができる力。身体だけでなく心まで回復する力は神の中でも希少な存在よ』
「ああ、そうなんだ」
(なあんでシーナがみなものことをこんなに自慢しているのだろう?う~ん、もしかして何だかんだとみなもが、好きなのかな)
『霞、何か言った?』
霞はプルプルと首を振ると、実菜穂と陽向が、ジーッとシーナとのやりとりを見ていた。霞はその視線にすぐさま顔を下に向けてモジモジしていた。実菜穂と陽向がクスリと笑い、ゆるんだ空気が廊下を満たした次の瞬間、
キリ
空気が固まったかと思う音を三人は聞いた。
『三人とも、この先は御霊を持った神がおる。ご丁寧に三柱もおる。よいか、いまのお前たちなら十分太刀打ちできる相手じゃ。すぐに片づくじゃろう』
「そうなの」
実菜穂が拍子抜けした声で返事をした。陽向も霞も同じ声を聞いた。みなもの声である。ただ、陽向は軽く首をひねっていた。
「待って、実菜穂。シーナはこのビルに入る前に情報を与えないようにって、みなもに言ってなかった?何か変だよ」
「そうです。こんなときはシーナがすかさず割り込んでくるはずなのに変です。なんだか、みなもの話し方じゃないよ」
陽向と霞が首を振り、実菜穂に確認する。
「確かにそう。声はみなもの感じだけど、話し方が違う。どうやら、私たち閉じこめられたみたい。霞ちゃん、シーナに声かけてみて」
霞がシーナに呼びかけるが応答はなかった。陽向も同じだった。
三人は互いに見合い、頷いた。
「これが神様の力なんだ」
今までにない緊張した空気が三人を包んでいた。その様子を楽しんでいるかのように、フロアから女の子の可愛い声が聞こえてきた。
『さあ、三人の可愛い巫女。ここに入ってきて。私たちと一緒に遊ぼうよ』
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