第39話 巫女と物の怪(13)
霞は長老の邪鬼が言っている意味が分からず、必死で言葉のかけらを集めていた。頭のなかは、テスト勉強の比ではなくフル回転していた。
(落ち着け。みなもは、『邪鬼はもとは人が生まれし前にこの世界に和を保つために、生み出されたもの』って言ってた。つまり、人の先輩ってこと。邪鬼さんのこと知らないのはダメだ)
「あのう、どうして邪鬼さんたちはこのいるにいるのですか?どうしてここに入る人を傷つけるのですか」
「事情を聞いたところで、どうにかなるものでもあるまい。我々はここに押し込められたのだ。ここにむやみに入るのは危険だから追い返したまでだ。人を襲う気などはじめからない。我らは、ただ現実を受け入れここを
「押し込められた?誰にですか??どうしてですか」
霞が沸き上がる疑問を次々に口にしていく。悪気はなく、それだけ興味を持っている証拠でもあるが、長老の顔は冷めていた。
「それはいまは言えぬ。お前、本当に巫女か。その力を疑うわけではないが我らのこと知らぬのか」
「あの、ごめんなさい。知らないです。だから知りたいです」
巫女である霞が邪鬼に頭を下げた。どの邪鬼も呆気にとられてみているが、長老にいたっては失望の色を見せていた。
(我らの事情を知っておれば、少しは話が出来ると思うておったが何もあてには出来ぬか)
長老が頭領を招くために席をつくるが、霞の手を握り離れようとしなかった。邪鬼たちはその光景に目を疑った。
「なんと。頭領が巫女に親しみを持っておられる。なりません」
長老が声をあげると、頭領は霞の足に抱きついてきた。
「なりません。頭領、巫女は人のなるもの。我らを消す存在ですぞ」
長老を囲う邪鬼たちが、すぐさま頭領を霞から引き離した。素早い動きに頭領はあっけなく長老のもとへと連れて行かれた。
「あのう。巫女が邪鬼を消す存在なんてしりません。どうしてですか?私、「邪鬼は人の先輩」だと教えられました。それなら消す必要はないのでは」
「お前は、本当に何も知らぬのか。我らのことを。知れば、ただでは済まさぬであろう。ならば、この場はもう何もせぬ。だから、引き下がられよ」
「待ってください。ここからは、退出してもらえませんか」
「我らは人を思えばこそ、ここにいるのだ。我らはどこに出て行くのだ。おまえが住む世界を与えてくれるのか」
「住む世界?いくところがないという事ですか」
「そうだ。外にでれば、人は我らを消すであろう。お前が我らを護るとでもいうのか。出て行けば、お前は人と邪鬼、どちらを護るのだ」
長老の眼が霞を刺す。その鋭さは、頭領を、群を頑なに護ろうとする思いが込められていた。霞もその思いの色が見えていた。頭領は霞の瞳に救いの色を求めていた。
「一つだけ教えてください。どうして、人がみんなを消そうとするのですか。それが分かれば、助けられるいい方法が浮かぶかもしれません」
霞は必死に説得の糸口を見つけようとするが、長老は霞の真意を受け入れられないでいた。
(この巫女。事情を知らないのは本当であろう。だが、しょせんは人。我らと相容れることなどできはせぬ)
「どうかお願いです。どうして人があなた達を消すのですか?」
「それは、邪鬼が失敗作だから。この世界の和を保つはずが、世界の
突如、フロアに声が響くと、霞も邪鬼も声の方に注目した。ドアの前には陽向が紅雷を持ち、容赦のない瞳で邪鬼を睨みつけていた。
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