第17話死神篇(17)
「なあ、真美さん。いや、真美。ここに来たからには、本気だからだろう?」
「そうね、本気よ」
真美は、口角をあげ、にこやかになる。
「あんたが、あの陰気くさい、マチルダって女を、あんたのいう通り、リンチにしたが、本当は殺してやってもよかったんだぜ。ム所に入ってもどうってことなかったぜ」
「マチちゃんを、なぜ殺さないでといったかわかる?」
「さあてなあ、同情って奴か? あの女の子、美形だからなあ」
「そう、話すのはそんなことだけなの? 銀八さんについて知りたかったんじゃなかったの?」
「それも、聞きたい。一体、銀八の話してたⅯって女、誰なんだ?」
「あなたは知らなくていい。何しろ、もうじき死ぬんですから」
「何だって? 俺と対決しようってことか? だけど、あんた、俺に勝つ自信あるのかよう?」
「あってもなくっても、どちらでもよいことね。あなたは、死を選ぶんですから」
結城真美が、田代貢をやんわり微笑みで包み込む。真美の視線から波紋が出た。それは、マチルダにしかわからなかったものかもしれない。なぜって、それは、明らかに異能力だからだ。
田代貢は、自分の手で自分の首を絞め、喘ぎ苦しみ、躰をのたうち回り、壁に躰を打ち付け、転がるとバルコニーに出て、乗り越え、地上へ落ちていった。呆気ないものだった。
結城真美は、自分の衣服を引き裂き、下着も脱がされたように細工し、バルコニーに出て叫び声をあげた。真美は、田代貢の部屋の電話から警察へ通報したらしかった。
マチルダは絶句した。あれほど、おとなしい性格の真美が人殺しをやってのけるなんて。しかし、これは、妄想かもしれないと、マチルダは、自分を抑えた。
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