第14話死神篇(14)

 二度、鉄パイプを喰らった。激痛が躰を駆け抜けた。痛みをこらえ、マチルダは、二歩下がったが、遅かった。鉄パイプの激痛で躰がいうことを聞いてくれなかった。ひざを曲げ、しゃがみ込む。能力は万全ではない。

 もう少し、時間があれば、五分でもいいから時があれば、異能力の治癒能力で回復できたが、無駄だった。

「おい、殺すなよ。痛めつけさえすりゃあいいんだ」

 遠のく意識の中で、マチルダは、田代貢の狂気の声を耳にした。

 滅多打ちにされた、マチルダは気を失った。

 その有様を、凝視している女がいた。それは、警察へ向かったはずの結城真美だった。車を停止させ、降りてみていた。彼女は、平然とした態度をとっていた。無表情のままで、マチルダが私刑に出くわしたのも、当たり前のことだというように。


 (6)

 うなされながら、ようやくマチルダの脳みそが働き始めると、気が付いた場所は、喫茶セシリアの自分の個室だった。そばに、喫茶ママの佐代子と真美が覗き込むようにしてこちらをうかがっている。佐代子が、安どの声を漏らした。

「マチちゃん、運がいいわ。『稲妻』の奴ら、手加減してくれたのかしら? 真美ちゃんが、喫茶に運び込んできたとき、死んでいるのかしら、と思ったわ」

 マチルダは、頭の回転が働くようになると、一つ不思議に思って聞いた。

「どうして、警察や病院に通報しなかったの?」

 佐代子は、少し渋っていたが、話し始めた。

「どうしてって、逆恨みで、また、リンチに遭遇したら嫌じゃない? わたしも真美ちゃんも、そして、マチちゃんだって、あんな連中とは関わりあうのは、ご免でしょ? それにしても、マチちゃん、すごい回復力が早いわね」

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