第13話死神篇(13)

 田代貢と呼ばれた男の目は異様にギラギラしていた。ピラニアみたいな容姿だ。体格もいかつい。

 マチルダに近づくと、田代貢はペッと唾を飛ばした。唾が、マチルダの顔に飛び散った。

 暴走グループの中の女が、輪姦してやれ、血祭りにあげろ、と騒ぐ。殺せ、殺せ、と吠える者もいる。

 マチルダは、瞬間、マジ切れしそうになった。知らぬ間に皮膚から、異能力が満ち溢れてくる。手加減できないかもしれない。

 暴走グループらは、鉄パイプやら、チェーンを握りだす。田代貢が、怒りをあらわにする。

「今、俺たちは、はらわたが煮えくり返っている。とにかく、銀八の仇を討てればいいんだ。わかったか? 小便ちびるなよ」

 マチルダは、一瞬で動いた。体躯からのび出た、薔薇のつる性を投げるように伸ばして、蹴散らした。つる性の棘が、彼らにあたり、血のしぶきが表出した。薔薇の花を咲かせると精神力で飛ばした。花の匂いがまき散らせられ、眠りへといざなう。匂いに負けて、眠りこくる、数人の男たち。と同時に、花軸(茎)をちぎり取るようにして、薔薇のダーツをも繰り出す。

 ひとりづつ片付けてゆく。チェーンを振り回す奴が厄介だった。ビュンビュン勢いを増し油断できない。薔薇のつる性を手のひらから投げつけ、チェーンの動きを止める。男の全体躯に、薔薇のつる性を巻きつけさせがんじがらめにする。身動きできない状態にさせた。

 ワーッと一群が束になり押し寄せてきた。マチルダは、薔薇のダーツを拳銃の弾薬を発砲するように両指から、断続的に飛ばす。

 だが、彼らの人数におされて、薔薇のダーツをものともせず、突き進んでくる銀蠅ども。目の前に現れた、鉄パイプの男は、マチルダの指から飛び出す薔薇のダーツを、ヘルメットを片手に持ち防いでいた。真横に位置関係をずらした鉄パイプの男の俊敏な行動には、間に合わなかった。鉄パイプが振り落とされ、マチルダはよけきれず、右肩に見事あたった。

 異能力で、薔薇のつる性を全身に巻いておいて、多少はやわらいだが、しかし、絶望的だった。暴走グループは、あまりに野生動物すぎた。

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