第11話死神篇(11)
(5)
マチルダと真美は、佐代子に使いを頼まれて、近所のスーパーに向かうことになった。真美は、乗用車の運転免許証を持っていたので、軽自動車で夕闇迫る街を走った。マチルダは、少し、軽いドライブの気分で助手席に乗っていた。
真美は、運転に集中しているのか寡黙だった。これほど、何も語りたがらない人物も珍しかった。マチルダは、なんとなく、真美の心境を知りたくてからかってみたくなった。
「真美さん、いい人いるんでしょ? きっと優しい人なんだろうな」
「マチちゃん、大人をからかうものじゃないわ」
ふたりで微笑みあうと和やかな気分に浸れた。そのあとから、暴走グループが迫りくる。
バイクの群れが爆音を立てて、近づきつつある。マチルダは、憎悪とも殺意とも受け取れる感情を心で受け止めた。それは、悪の塊だった。マチルダは、危険を感じ取った。真美が、恐怖の声を出す。
「どうしよう、マチちゃん。私怖い」
「警察署に向かってみて。そうしたら消えるかもしれない」
「でも、警察署って、いってもまだ、ずいぶん先よ」
マチルダは、考えた。私一人ならば何とでもなるんだが、真美がいては、やりようがない。私、独り降りてみるか? マチルダは、強く決心した。
「真美さん、私をここで降ろして、警察を呼びに行ってください」
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