第6話死神篇(6)

 (3)

 消防に通報が入り、美樹子の家の火災発生は消火されたが、全焼し、焼け跡から一体の焼死体が見つけられた。警察も介入し捜査されたが、神木家から出た焼死体は、美樹子と推察された。

 それが、ごく自然な論理だった。不審火とされたが、美樹子が誰かに恨まれることもなく、母の友里恵の殺人事件も視野に入れられたが、すぐさま、捜査班は解散された。これ以上、突っついても、何も出ないことが、その理由だった。

 遺族もなく、その家に住んでいたのは、神木美樹子本人と、近所界隈では認識されていた。すなわち、焼死体は、神木美樹子であると証明されたわけだ。これほど状況証拠がそろっていると、警察も手を出しにくいのではなかろうか。

 街のうわさにされたが、悪事でもないのですぐに、わすれさられた。


 時は流れる。

 暗闇の中から、急に、光の束が、全裸のセミロングの少女に注ぎ込まれる。

 丸顔の少女が、語りかける。

「もういいぞ。覚醒しても」

 すこし、感情がこもっていないように感ぜられる。

 寝台に横たわった、もう一方の少女は、ゆっくり目を開くと、素早く身を起こした。上半身を起こし、寝台から両足を下ろした。

「私、火事で焼け死んだはず、なのに、なぜ?」

「あたいのこと、覚えているか?」

 丸顔の少女の声には、やはり感情がこもってはいなく、棒読みだ。

「私、なぜ生きているのかしら?」

「すこし、冷静になれ。あたいの名前いってみろ」

「あなたは、滝、滝イズミだったかしら?」

「あたいのことは、イズミと呼んでくれて構わない。

 ところで、おまえは、自分は死んだと思っている。半分当たって、半分不正解だ。この世から、神木美樹子なる人物は消滅した。

 だが、お前はピンピンしている。実は、整形させてもらった。指紋も消した。これからは、”葉月マチルダ”と名乗れ」

 

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