商家の娘乱心せし話

 江戸時代の話なんですけれどもね。昔ね、とある商家にそれはそれは仲のいい兄妹が居たそうですわ。妹はいつも兄にぴったりと寄り添って「あにさん、あにさん」と愛し気に呼んでいたそうな。


 んで、その兄が他所のおたなの娘と婚姻を交わすことになった。まぁ、店を大きくするためですわな。兄は最初渋っていたんだが両親に頭を下げられてね、そこまでさせたんならもう我儘を言うわけにもいかないとその婚姻を受け入れたそうな。


 でもね、いざご祝言という時になって妹の方が割って入った。盃を蹴り飛ばしてね、嫁にのしかかり首を締めたんですわ。どうやらこの妹、兄に道ならぬ恋をしていたようで。


 妹は、両親や相手のお店に恥をかかせたというのもあって座敷牢に入れられました。四角い、箱みたいな暗く狭い座敷牢です。


 妹は数日も立たない内に、泣き疲れるように死にました。


 ただ、それからしばらくして店の経営が傾きましてね、最後は両家とも潰れたそうですわ。

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