箱と兄妹とてのひら怪談

弓長さよ李

美術室の箱の話

 従兄弟で、小学校一年生のA君の学校では美術室の後ろの棚に卒業生の作品が置いてあります。篆刻のハンコとか、オリジナルのお菓子のパッケージが印刷された紙箱とか、針金で作られた人型とか、そういうものが並んでいて、A君は授業終わりにそれを見るのが好きでした。


 ある時A君は、その中に見たことのない作品が増えていることに気づきました。

 とは言っても、多分他の生徒が置いたのか、それとも棚と壁の隙間とかに落ちていて、先生が拾ったのか、そんなところだろうと思っていました。


 小さな箱でした。


 本当に小さな。


 寄木細工の綺麗な模様のついた、手のひらに乗るほどの小さな木箱。


 A君はその箱をそっと持ち上げました。


 からん、と小さな音がします。


 もう一度からん、と鳴らすと。


 おにさんこちら、って。


 もごもごと、女の子の声がしたそうです。


 A君はなぜか怖くなくて、ああそうなんだと納得しました。


 それ以来、卒業生の作品を見るのはやめたそうです。

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