勇気



人って変われると思う?



簡単には変われない?

それは違うの。


変わる勇気がないだけ。踏み出す勇気がないだけ。


声を上げて自分の気持ちを伝える勇気がないだけ。


そう自分に諦めてるだけ。


私がそうだった。


人は独りではいけない?

群れなければ生きていけない?


独りは寂しいよね。嫌われると辛いよね。

私がそうだった。


でもね。万人に好かれるわけが無いんだよ。

皆に好かれるわけが無いの。

そんなこと分かってる。そうだよね。

私も気づくのが遅かったな。


嫌われてもいいの。

嫌われる勇気を持てばいい。


貴方が貴方でいればいい。



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数年が経った。





あれから私は結局死ねなかった。目が覚めてから初めてかかりつけの精神科に行った。


「真波さん。死のうとして得たものはありますか?」

「え?」

「死を選んで君は実行した。君にとっては残念かもしれないが君は死ぬことは無かった。そこで、君は得るものはあったかい?」

「……分かりません。死ねなかった。なんで死ねなかったんだろうと後悔ばかりが残っています。」

「……君には勇気がある。実行する勇気。変わろうとする勇気。」

「私に?有り得ません。私は臆病者です。何も変わることなんてできない。変われなかったから、人に好かれることも無く、仕事もまともに果たすことが出来ず、こうして死ぬことを選んでるんです。」

「違うよ。勇気は君の中にある。」


流石の私もこの先生は何を言ってるんだと思った。何が言いたいんだこいつは。ふざけるな。


「なんなんですか!!!何が言いたいんです!私はダメな人間で、疾患を持ってて他の人とは違うんです!」

「いいですか、真波さん。貴方は勇気を持っているが、その勇気の使い方を間違っているんです。貴方は嫌われる勇気を持っていない。自分が自分である、自分を認める勇気を持っていない。」

「……。」

「自分を認めなさい。出来ないのが人間だ。初めからできる人間なんて誰もいないんです。人は皆から好かれる事は難しいんです。」

「確かにそれはそうですけど……」

「貴方は大丈夫。変われます。そして統合失調症も治せない病気では無い。これから少しづつ自分を認めていきましょう。考え方からです。」


そんな話をして診察は終わった。


考え方か。


勇気。勇気。勇気?


そう考えていくうちに段々心は軽くなった。



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仕事を辞め、今は違う病院で働いている。

私の、ずっとやりたかった精神科だ。

今も残念ながら疾患とは戦っている。


でもこの疾患があり苦しみを理解できるからこそ職場で活かせるものがあった。



人は皆苦しんでいる。

その苦しいという感情を自分で選んで生きている。


でも、楽だという感情も自分で選び生きていくことが出来る。


感情を選びとり、変わる勇気を持ち生きていく。



私は私。


それでいい。



白衣に着替え髪を一つにまとめて括る。


今日も私は生きていく。






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