第46話 ピーラーとケチャップ
モルガン商会が火付け役となって最近はフライドポテトが一大ブームである。
今や大通りではジャガイモを揚げた香ばしい匂いが常に漂っている。
モルガン商会としては今の加熱したブームが去ったときが怖いので直営店の拡大は控えめにして、加工済みジャガイモや豚脂の卸業務に集中することにした。
ジャガイモや豚を取り扱っている農家へのコネクションを活用して仕入れを行い、新たに作った食品工場でフライドポテトの材料を加工。作成した材料は最近増えたフライドポテトの
ジャガイモの加工はけっこう面倒なので需要は高く、売上は直営店よりも卸業務のほうが今は安定している。
金を掘るよりつるはしを売れ。なにごとも中間業者が一番儲かるのだ。
そんなわけで食品工場ではジャガイモをひたすら加工してフライドポテトの素を作っているわけなのだが、工場を稼働する際に大事な物がないのに気が付いた。
ピーラー、つまり皮むき器がないのである。今の時代はみんな包丁で頑張って野菜の皮むきしていたのだ。自分も長い冒険者生活の関係でナイフでなんでもやりくりしてたので失念していた。
提携している鍛冶屋にすぐに発注し、工場で使用するT字型ピーラーを調達した。
ジャガイモの芽をくり抜くための出っ張りもちゃんとついているタイプだ。
これで食品工場でのジャガイモの皮むきもかなり効率的になったのだが工場で働いているおばちゃん方がピーラーのあまりの便利さに感動してしまい、家で使う用にも売ってくれと強くせがまれてしまった。たしかに家でも使えると便利なのは確かだ。
そういうわけでモルガン商会の小売店でもピーラーの取り扱いをするようになったのだが、これが大ヒット商品になってしまった。ちょうど家庭にジャガイモが普及し始めていたのもそれに拍車をかけたようだ。
ピーラーについては特許も忘れずに申請したので、ライセンス料だけでもかなりの収入になりそうだ。これでご家庭の料理が楽になるなら良いことだ。
フライドポテト関係でもう一つ手を出したのがケチャップだ。
個人の好みはあると思うが僕はフライドポテトにはケチャップが欲しいタイプだ。あの独特の酸味のある味がポテトによく合う。トマトについては南方大陸で見つかっていたらしく、苗を輸入して新大陸でも育て始めた。
トマトの調達自体は問題なくできたのであるが、大変だったのは前世の記憶にあるケチャップの味の再現であった。味は憶えているが原材料や作成方法についてはよく知らなかったのだ。前世の自分はそれほど料理好きというわけでもなかったらしい。
協力者の料理人の方とああでもないこうでもないと試行錯誤した結果、トマトソースをベースに玉ねぎ、ニンニクや酢を煮詰めて混合したものがかなり近くなった。
やっと出来上がり成功を喜びあったが、料理人の方には「食べたことのないソースの正解がなんで分かるんですか?」と疑問を持たれてしまった。さすがに別の世界の記憶があるなどと説明するのは面倒なので適当にごまかしたが。
トマトケチャップのレシピは完成したもののトマトの生産量がまだ少ないのでしばらくはモルガン商会の直営店限定のメニューとしてケチャップを提供することにした。値段もちょっと高いので知る人ぞ知る裏メニューみたいな扱いになっている。
トマトの生産量が安定したら一般販売ができるようにしたいところだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます