第34話 民衆と革命

 現在本国で続いている帝国との戦争であるがそこに大きな動きがあった。


 ハノーヴ王国の国王が急死したのだ。本国の新聞で最近体調を崩しているとの報道があったが、医師の奮闘も実らずそのまま亡くなってしまったらしい。

 さらに問題なのは国王に子供がいなかったことだ。そのため王位の長子相続ができず継承順としては王家の最年長者相続となるが、その継承者の宗派がなんと帝国と同じ主流派であったのだ。


 即位後、王は側近を主流派で固め始め、聖書派がほとんどを占める議会と対立。

 本国の新聞によると王権を使って帝国との停戦を強行しようとしているが、議会が当然賛成せずそれを阻止しているらしい。

 王国は帝国との対外戦争を抱えているのに内部にも火種を持ってしまった。


 ◇

 

 そういった状況のまま1年がたったある日、また事態が大きく動く。

 議会と民衆が聖書派である王の弟を担ぎ上げ、クーデターを決行したのだ。


 現王は戦わずに南方のダルトワ王国に亡命したためクーデターはほぼ無血で成功。

 新政府は同様のことを繰り返さないよう、王権の制限や継承権を聖書派のみにする憲法を発布した。またクーデターに協力した民衆を称え、新しく民間の議会を設立することを宣言。王国は新大陸と同様に上院と下院による両院制となった。


 この一連の事件によりハノーヴ王国の絶対王政の時代は終わり、立憲君主制および議会制民主主義の時代へと変わっていくことになったのである。


 ただ帝国との戦争はいまだ続いているし、ダルトワ王国へ亡命した前王は自分こそが正当な王であると主張している。ダルトワ王国もその主張を大義名分として、ハノーヴ王国へ攻め入る構えを見せているようだ。


 また新大陸でも関連した動きがあった。ダルトワ王国がハノーヴ王国の政治的な不安定さの隙を見て新大陸に入植を始めたのだ。


 ニューヨーク等のハノーヴ王国の植民地域からは今のところ離れているが、拡張が続けばそのうちに領土が隣接することは間違いないだろう。戦争の影響は新大陸へも波及してきたのだ。


 当面は大丈夫かもしれないが、新大陸側も本国に頼りきりというわけにはいかなくなってきたのだろう。僕も色々と覚悟はしておかないといけないようだ。

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