第31話 世代交代

 新大陸へ植民を始めてから14年が経過したある日、総督が引退を発表した。


 総督も今年で65歳。体が動かなくなる前に引退して余生は本国の家族と過ごそうと決めたらしい。有能で話の分かる上司である総督が引退するのは残念であるが、年齢のことを考えると無理に引き止めるわけにもいかないだろう。


 総督の引退の件は新聞でも一大ニュースとなり、総督府には花束やお礼の手紙などがたくさん届いていた。総督が善政を布いていた証拠である。

 町をあげて引退セレモニーをやろうなどという話も上がったが、さすがに勘弁してくれと総督が固辞したため近い関係者のみでの引退パーティーとなった。ただそれでもかなりの人数が参加する盛大なものとなった。


 それと時期を合わせて僕も冒険者ギルドの代表を辞めることを決めた。

 最近は商会のほうに時間を取られがちであったし、新大陸も発展してギルドの経営も安定したためリューリクから頼まれていた分は十分達成したと考えたためだ。それにあの有能な総督以外を上司として今後うまくやれるかもわからないし。


 手紙でリューリクにその意思を伝えたところ、一度直接会って話そうということになった。そのためシャーロットと一緒に海を渡り本国のギルド本部へと向かった。ひさびさの本国である。


「おう、ヴィク! 久しぶりだな。お前は相変わらず全然変わらねえなあ」

 ひさびさに会ったリューリクはだいぶ老けていた。髪の毛もすっかり白髪まじりになっている。それでも筋骨隆々で声が大きいところは変わっていないが、さすがに時間の流れを感じた。


 リューリクからは今までのお礼と退職金として結構な額の金貨を頂いた。

 商会で十分稼いでるので気持ちだけでいいと断ろうとしたが「いいからもらっとけ」と強引に押し付けられた。商会の資金としてありがたく使わせてもらおう。


 それでギルドの引き継ぎであるが、シャーロットに頼もうかと思ったら断られた。

 ギルドよりも商会のほうが今は仕事として楽しいし、僕の秘書の仕事は自分が続けないと心配だと言うのだ。個人的には助かるが、そんなに頼りないかな僕。


 最終的に引き継ぎについてはシャーロットが育てたという部下の一人を推薦されたので、その人を次の代表に据えることとなった。リューリクからもまあ彼女が推薦するなら大丈夫だろうとすぐに承認された。

 

 ちなみに次の総督についてだが、総督の軍時代の部下が推薦されたらしい。あの総督が選ぶからにはきっと有能な人物なのだろう。

 ただ初期の開拓時代からの総督の引退は、一つ時代の終わりを感じさせた。

 

 今後がどんな時代になるかはまだ未知数である。

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