第27話 戦争と国債

 新大陸へ植民を始めてから12年が経過した。

 年が明けてすぐに総督から新大陸の主たる商会の代表者達が呼び出された。本国から急ぎの連絡があったらしい。


 とうとう帝国へ聖書派の国々による宣戦布告がされたのだ。


 ハノーヴ王国も聖書派の一国として参戦を表明している。対抗して近隣の主流派の国々は帝国側での参戦をする可能性があるようでかなり大きな戦争となりそうだ。


 商会の代表者達の呼び出しがかかった理由としては国債の購入依頼である。

 本国で戦費補填のため大々的な戦時国債の発行が宣言されたのだ。新大陸でも購入を募ってほしいとの連絡が総督にあったとのこと。


 モルガン商会は新大陸の大手商会としてかなりの金額の国債を購入することにした。これでハノーヴ王国が少しでも有利に戦えればいいし、早く戦争を終結させてほしいとは思う。


 また合わせて新大陸の土地の売却を民間へ開放する法律が制定された。


 新大陸は国の直轄地であり今までは各土地は民間へ貸与という形であったが、戦費補填のため民間への売却を許可することにしたらしい。

 モルガン商会としても商売の重要拠点である森林資源や鉱山資源のある土地が変な持ち主に買われても困るので、それら一帯の土地の権利購入をすることにした。

 さすがに多額の費用になり一括では支払えない額であったが、商会の信用もあるとして総督が低金利でのローンでの契約としてくれた。とてもありがたい。


 多額のローンを商会は抱えることとなったものの、土地の権利を手に入れたため前よりはるかに自由に鉱山の開発をできるようになった。


 関連して今まで国の雇用だったトラヴォグたち鉱山労働者も正式にモルガン商会で雇用しなおすことにした。トラヴォグたちも酒が安く買えるならと喜んでこの話を受けてくれた。たしかに社員割は効くようになるがどんだけ飲む気なんだろう……。


 ◇


 こうしてモルガン商会に新規で製鉄部門及び炭鉱部門が立ち上がったのであるが、ローンの支払もあるし今後は各部門の収益性をより高める必要がある。


 手始めに新規部門である鉱山の現在の状況の視察を改めてすることになった。


 エルミアさんたち研究所の職員と一緒にいろいろと見て回った中、僕が気になったのは運搬の問題であった。鉱山内で掘った土や鉱石などの運搬は袋に詰めたり手押し車などに載せたりして人力で行っていたのである。

 トラヴォグたちが力持ちなのは分かるが、どうにも効率的とはいえない。


 そこで導入したのはトロッコの坑道内への敷設である。

 生産した一部の鉄を線路へと回すようにし、坑道内をトロッコが動かせるようにした。これで土や鉱石の運搬がかなり効率化するはずだ。

 将来的に蒸気機関でのエンジンの開発ができれば更に効率があがる見込みもある。


 あとはダイナマイトなどもあれば掘削効率もあがるのだろうが、僕にはちょっと作り方がわからないのでエルミアさんたちに研究を任せるしかないな。


 部門拡大によりさらに研究の重要性が上がっているし、魔術師ギルドに依頼してもっと人員の派遣をして貰う必要がありそうだ。

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