第25話 軍需産業の隆盛
新大陸へ入植し始めてから11年が経過した。
本国と東の帝国との軍事的な緊張状態が高まっているが、今のところまだ戦争開始まではしていない。
ただそれも時間の問題でありいつ始まってもおかしくない状況のようだ。
本国の新聞も聖書派よりの戦争を煽る言説で
関連して「本国から要請があった」と総督から依頼されたことがある。
何かというと軍需物資の生産依頼である。つまりは武器や防具を中心とした戦争のための物資をモルガン商会でも生産してほしいということだ。
戦争に加担するのはあまり乗り気ではなかったが、故郷の森やリューリクを始めとしたお世話になった人々もハノーヴ王国には存在するし彼らを守るためには仕方がないと割り切った。
今の時代は剣や槍、弩などを持った常備軍の兵士が戦争の中心である。
銃の技術はすでに発明されているが、まだいわゆる火縄銃のような前装式の銃であり弩や魔術のほうが天候に左右されにくく即応性があるため優勢だ。
ただ鉄鋼業や火薬が発展してきて銃も生産が安価になりつつあり、数を揃えられれば農民中心の徴募兵でも鍛えた常備軍を倒せることがわかっているため銃が戦争の中心となる日もそう遠くないだろう。
モルガン商会には剣や槍、弩の矢などの他に大砲の生産なども依頼された。
大砲は強力だが移動や弾込めに時間がかかるため、対人兵器というよりは攻城兵器としての利用が多いようだ。
大砲の弾も合わせて生産している。前世の記憶でこういった弾は先の尖った円錐形のイメージがあったが、まだ砲丸という丸い玉の形状が主流のようだ。
鉱山都市でも稼働を上げて生産に取り組んでいるが、トラヴォグなんかは砲丸を見て「なんでこんなただの塊に貴重な鉄を使うんだ」と憤慨していた。
◇
そんな軍需品の特需もあり、新大陸は好景気に湧いていた。
以前不足していた硬貨などの貨幣も潤沢に流通し始めたぐらいだ。鉄工職人たちも儲かってるのか酒場で大盤振る舞いしている光景をよく見かけている。
新大陸の新聞も「戦争は嫌いだが金が儲かる」なんて呆れた論説を展開しているし、新大陸側としては本国の問題は対岸の火事としてあまり深刻な様子ではない。
帝国で迫害されているらしい聖書派の住民たちも新大陸へ続々と移住してきている。聖書派であるハノーヴ王国が彼らの移住を支援しているようだ。
なんにしても戦争の被害が少なく済むように祈るしかない。
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