第18話 錬金術と生命の水①
魔術書の印刷下請けや商品券に使われた魔力に反応する特殊インクの共同開発の件もあってモルガン商会は最近魔術師ギルドとも深い縁ができている。
どうやら魔術師ギルドは慢性的に金欠らしく、いつも研究資金の捻出に苦労しているらしい。魔術書の販売や各種ポーションの卸売なども行っているが、魔術に利用する魔石や錬金術の材料などの仕入れも高価なため全然足りていないようだ。
今回の特殊インクの生産や関連する魔道具の作成は魔術師ギルドに継続して委託したので、資金繰りに目処が立ったとこちらが申し訳なくなるぐらいお礼を言われた。
この世界の魔術師というのは魔術や錬金術はもちろん、科学や数学、物理学なども取り扱うインテリ集団のことである。
僕が扱える精霊術というのはこの世界に存在する精霊に対してイメージしたことを依頼するような形で作用させる。強力ではあるが細かい操作は苦手だ。
対して魔術師の取り扱う魔術というのは世界に存在する魔素というエネルギーを精霊を介さず体系的に発達した高度な学問を利用して直接制御する。マッチの火みたいなちょっとしたエネルギー操作や天候を操るような強力なことまで、やろうと思えばなんでも(理論上は)できるらしい。
一人前の魔術師になるためには小さい頃から勉強漬けで毎日修行し、正式に認められるには魔術学院という大学のような機関に通いかつ試験に合格しないといけない。
そんな選抜されたエリートな彼らであるがそれから先も前途多難だ。
魔術学院の教授の枠は限られているし、教授の研究の補佐についてもその後枠が空くかもわからない(教授になるような熟練した魔術師は長寿が多いのもある)。
王室や貴族付きの宮廷魔術師になるにもコネがいるし、しょうがなく個人で研究を続けようにも結果をすぐにだすのは難しく資金繰りに窮する。
そんな世知辛い世の中で、研究費を稼ぐため既存の魔術書の複製や翻訳をしたり、錬金術でポーションを作って店に卸したりして普段はなんとか暮らしているらしい。
新大陸にいる魔術師も研究の資金調達のため冒険者として出稼ぎしに来てそのまま定住した人たちが多い。
話を聞いていて前世のポスドク問題などを思い出して辛くなってきた。
そんな優秀な頭脳が金欠で研究を続けられないなんて実にもったいない。
僕は彼らのパトロンとなって資金援助し、かつもちろん商会としても利となるような状態にしようと強い決意をしたのであった。
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