第14話 植民地議会の日常

 冒険者ギルドと商会だけでも忙しいのだが、僕にはもう一つの仕事がある。


 そう下院議員である。

 とはいえ議会は毎日というわけではなく、今ところ毎週末に議員が総督府の横に建てられた議場に集まり各団体の意見を取りまとめて出た議題を話し合うようになっている。


 ちなみに進行役を務める議長はなんと僕である。

 総督からとりまとめを頼まれたのもあるが、前回の第一回選挙で選出された民間議員はほとんど政治は素人であり最初はまともな議論どころか進行すらできなかった。

 そのため僕が議論のやり方や進行ルールを整備したり、とりあえずの議長を務めたりしていたら完全に固定化してしまった。

 まあ僕はそもそも所属している冒険者ギルドが国の機関だし、あと商会が手広くやりすぎで発言権が大きすぎるという問題点もあるためこのような進行役がちょうどいいのかもしれない。


 選挙で選出された議員には給料がもちろん支払われるが、それとは別に政治活動費が必要だろうということで議員にはグループ、つまりは党を組んでもらってそこに対して政党交付金が支払われることになった。


 ちなみに今の主要な政党としては、農民党、労働者党、商人党がある。これらは名前のとおりである。あとは教会勢力の聖書党、兵士と冒険者代表の剣と盾党、魔術師ギルド代表の魔術党なんてのもある。


 各党はイデオロギー的なまとまりではなく各種利益団体の代表という感じである。

 そのうち民主党とか共和党みたいにそこらへんがあいまいな境界になるのだろうが、今のところはそんな単位で政党が作られている。

 僕は党としては一応商人党に属してはいるが、農民党、労働者党などへの利害関係もあるためこのままだと微妙な感じではある。


 毎週の議題としては食料の配給問題であったりとか、新規入植者の受け入れ問題、賃金問題に、町の区画整理や衛生問題など多岐にわたる。それらの優先度を勘案し具体的な実施項目をまとめて議決した後、上院にて再議決してもらう。

 それで上院でも許可がでれば予算がついたり、新規で法律が制定されたりする。


 意図した訳では無いが予算がつくと結果的にモルガン商会に依頼が降ってきたりするので、政治って難しいなあと思う今日このごろである。

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