第11話 林業の拡張

 モルガン商会設立後の最初の大型案件は林業への進出であった。


 この世界の林業は危険な職業である。

 単純に木材の取り扱いが重労働というのもあるが、動物やなにより危険な魔物が森には存在しているからである。


 森を切り開くのはそこに住む魔物を刺激する。

 林業に従事する労働者を魔物が襲うことも珍しくないため、林業の作業場の近くには即応するための兵士がいくらか常に駐屯しているし、派遣された冒険者が森を探索して安全確認に務めている。


 そんな危険があるとはいえ家屋の建設には当然木材を使用するし、日々の炊事や冬の間の暖房など年間を通して木材の需要は常にある。

 そのため従事する労働者としては危険に見合った額を稼げる職場でもある。


 そういうわけで危険な割には人気のある林業ではあるが、鉄鋼業の開始による莫大な需要増を賄うには現状どう考えても供給が足りていない。


 そのため総督にも許可をとりモルガン商会が参入してテコ入れすることになった。


 とはいえやることは単純。資本と人を投入して効率化するというだけである。

 まずは個人事業主として働いていた既存の林業従事者を商会の林業部門の正社員として雇うことにし、彼らには新人の教育に業務として携わってもらうことにした。

 また総督には新規の入植者を優先して林業に回してもらうようにお願いした。


 そこに加えて設備投資も行う。

 斧などの消耗品は商会が備品として提供するようにしたし、道具のメンテナンスのための鍛冶屋も専属契約を結び常に整備が行き届くようにした。


 木を加工するための製材水車も追加で建造。

 加工した木材の運搬もモルガン商会の既存の部隊を活用するようにした。運輸部門は商会の要としてしっかりと給料を払っているので皆よく働いてくれる。馬車だけでなく川を利用した運輸も整備した。


 森の魔物からの警備もモルガン商会の警備部門を拡充して対応させた。

 警備部門はその日暮らしをやめたい冒険者たちの正規の就職先として最近人気となってきている。就職した元冒険者からも「これで安心して家庭を持てます」とがっちり握手されてお礼を言われたりもした。

 これまであまり実感はなかったが社員の家族を支えるとなると責任重大だなという感覚が強くなってきた。経営をちゃんと頑張らないといけない。


 そんなこんなでモルガン商会林業部門の進出も完了し、鉱山都市への木材や木炭の安定供給も目処が立つ用になったのであった。

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