第2話 新世界へ

「ヴィク、新世界だ。新世界へ行ってほしい」

 と、今回ギルド長に就任した友人、リューリクは会うなり僕に言い放った。


 おもわずなんだそれ、というような顔をしてしまう。前世の世界へのポータルでも開いたとかなら願ったり叶ったりなんだが。


 怪訝な表情をしている僕を見てリューリクは咳払いして言い直した。

「ああ、すまんな。つまりは新大陸ってことだよ、新しい大陸が見つかったんだ」


 ◇


 その後の彼の説明を要約すると、この国――ハノーヴ王国――では昨今新しい型式の船が開発されたらしく、それにより航続距離が飛躍的に伸び、夢見る船乗りたちが新天地を求めてさらなる外洋へとどんどん探索に出ていたらしい。


 国が新たな発見に報奨金を出したのもそれを後押しした。

 その甲斐もあってか今回新たな大陸を発見した一団が出たらしい。


「で、それがなんで僕が新大陸へ行くって話に?」

 そんな国家事業に自分が選抜される理由がわからない。ギルドの仕事に関して言えばこの道何十年のベテランではあるが、彼のように国家公務員というわけでもない。

「まあ当然の疑問だろうな」

 と言ってリューリクは愉快そうに笑う。荒くれ者たちの長だけあってか体も態度もでかい。いいやつではあるんだが面倒事を押し付けられそうな気配がすごい。


 彼は簡易的な地図を机に広げ、新大陸らしい土地の海岸を指差す。

「新大陸だがざっと近場を探索した範囲では他の国の入植はまだらしい。つまり今なら我が国の独壇場というわけだ」

 彼は楽しそうに話を続ける。

「そこで本格的な入植をしていく際に現地の危険を露払いする仕事がうちのギルドにやってきた。軍隊ももちろん駐屯するが、未開の地の調査や魔物退治はうちのほうが専門だからな」

 なるほど、嫌な予感がしてきた。


「国家事業だけあって大規模な予算が継続的に付く予定だ。本件は確実に成功させたい。信頼できて長期の任務にも耐えられる人材が必要だ、そこでお前だ」

 僕はため息をつきながら言う。

「で、結論。僕になにをして欲しいって?」


 彼はにやりと笑うとこう言った。

「ヴィク、お前には新大陸でのギルドの代表を務めてほしい」

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