夢をみるのは?
アカネ 「おーい!みんなー!」
アオイ 「アカネ無事だったんだね。よかった」
アカネ 「え?」
マル 「まあ、詳しい説明は省きますが、私達は先程不思議な体験をしたので」
アカネ 「フシギな体験?」
マコト 「恐らくだが、夢の妨害だ」
クウタ 「夢の妨害?」
タケル 「そうそう幽霊みたいなのをだしてタチがワルイよね~」
クウタ 「それはこわいね」
アカネ 「でも、それがどうしたの?夢の影響ってことかな?」
マル 「いえ、恐らくですが《もうひとり》いるんです」
アカネ 「もうひとり?」
マル 「はい、《夢をみている人物がもうひとりいる》んです」
アカネ 「えっ!?」
クウタ 「それってぼくのことじゃないのかな?」
マル 「私もはじめはそう思っていました。ですが、気づいたことがありまして」
アカネ 「気づいたことって?」
クウタ 「クウタくんって夢箱に触れましたか?」
アカネ 「え?触れてなかったっけ?」
クウタ 「え?ぼく箱には触ってないよ?」
マコト 「なに!?」
マル 「やはりそうでしたか」
アオイ 「え!?どういうこと?」
マル 「私もアカネの言葉が少し引っ掛かっていたんです」
アカネ 「わたしの?」
マル 「アカネは箱に触れたのはアカネ、私、キノセさん、ミズキくん、《クウタくん》、トウマくん、タケルくんと云っていましたが恐らくその前提が間違っていたんです」
タケル 「あれ?でも、ならなんでクウタはここにいるのかな~?」
マコト 「そうだ、箱に触れてなければこの場所にいないはずだ」
マル 「私もはじめは気付かなかっただけでクウタくんは箱に触れていたと考えていました。ですが、先程の答えで確信しました。やはりクウタくんは《箱に触れていない》と」
アカネ 「えっ?ええ!?」
アオイ 「ちょ、ちょっとまって!?ということはこのクウタくんは《ニセモノ》ってこと!?」
クウタ 「に、ニセモノ…!?」
マル 「いえ、それは恐らく違います」
タケル 「でも、キノセちゃんみたいに無意識に幻を造ってる可能性もあるよね」
マル 「私もその可能性を考えましたがキノセさんの造りだしたメガネくんは何故かすべてを知っていました。それは、何故でしょうか?」
アオイ 「それは《その時》に造ったから?」
アカネ 「え?どういうこと?」
マル 「その時つまり状況把握をした上で造ったのとせずに造ったのじゃ大きく考えが変わると思います」
タケル 「まわりくどい言い方をするな」
マル 「では、クウタくんと会った時の状況を思い出してください」
アカネ 「確かわたしたちがこの状況に驚いていたんだよね?」
マル 「その時なにを考えていましたか? クウタくんの事を考えていましたか?」
アカネ 「頭がパンクしててなにも考えられなかったよ」
アオイ 「あっ!ということは!」
マル 「はい、その時誰もクウタくんの事を考えてないのにクウタが現れたということは彼は本物です」
クウタ 「よ、よかった」
マコト 「だが、待て!じゃあ、何故こいつはここにいる?」
マル 「ここは思った事を実現出来る場所ですよね?」
マコト 「は?御託はいいからハッキリいえ」
マル 「なに簡単な事ですよ。答えは単純明快です。《誰かがクウタくんを連れて来た》んですよ」
マコト 「なにぃ!?」
アオイ 「ということはつまり…」
マル 「ここまで云えば解りますね?そろそろ出てきてください!」
マルは誰かに向かいいう。すると、ひとりの人物が姿を現す。
語り手S 「おや?バレちゃったみたいだね」
アカネ 「キミはだれ?」
語り手S 「さあ?誰だろうね?」
マル 「しらばっくれるのはやめてください」
アオイ 「え?マルは気づいてるの?」
語り手S 「え~アナタに気付いてもらえないなんて軽くショックだね~」
アオイ 「え?」
マル 「アオイさん貴方のよく知る人物…いえ、よく知る子です」
アオイ 「わたしの?」
マル 「私の考えた結論ですが、恐らく夢箱の影響を受けるモノは、《人だけではない》可能性があります」
アカネ 「人だけじゃない?」
マル 「アオイさん昨日貴方はどこに箱を置きましたか?」
アオイ 「あの時は確か机の上に置いてその近くに…あ!」
マル 「気付いたようですね」
アオイ 「もしかして、《シロ》!?」
語り手S 「せいかーい!そうワタシはアナタの飼い猫シロなのです」
アカネ 「ええ!?」
マコト 「はあ!?猫にも影響するだと!?」
タケル 「つまりキミは擬人化してぼくたちを持て遊んだってことかな~?」
シロ 「まあ、正しくはワタシのカラダを貸してるかな」
アカネ 「貸してる?」
シロ 「キミ達が夢箱って呼んでいるその箱には本当はナニかが入っていたんだよ」
アカネ 「え?なにもはいってなかったよ?」
マル 「なるほど、あの光ですか」
シロ 「そう!あの光の中には本当は《魂》が入っていたんだ」
マコト 「魂だと?」
タケル 「でも、その魂はどこに?」
クウタ 「あ!もしかして!」
シロ 「そう、その魂は今、《ワタシの中》に入っているんだよ」
アオイ 「シロの中に?」
シロ 「そうだね、ひとつずつ説明するのは面倒だから一通り説明しようか」
シロ 「ことのはじまりはアナタの飼い猫のシロが夢箱に触れたところがことのはじまりだね。そして、あいことばを云ったことにより夢箱が開いてしまったんだ。そして、その中に入っていたワタシこそ『夢の魔物』がシロの中に入ってきたんだよ。そして、夢の魔物の意志にしたがってワタシはキミ達を夢の世界に閉じ込めたのさ」
マコト 「なんでそんなことをしたんだ?」
シロ 「夢の魔物は昔から様々な人々の『夢』をみてきたんだよね。それが、彼の『存在理由』だから」
アオイ 「存在理由?」
シロ 「そう、例えば人間の生活には『生きる為のモノ』がいるよね?家に住む為には家を造る大工がいる。食べ物を買う為にはスーパーがいる。寝る為には布団がいる、そして、それを作る人がいるみたいに日常を過ごすつまり生きる為に必要な人達、仕事っていうのは絶対あるんだよね。その人達の『存在』が絶対生きていく為には必要なんだ。つまり、『夢をみること』もそれと同じなんだよね」
マル 「つまり、夢をみること、『夢をみせる』ことが夢の魔物の仕事ということですか?」
シロ 「そう、本来夢っていうのは寝ている人『だけ』がみれるものなんだけど。夢の魔物はそれらを『繋げる』のが仕事なんだよね」
アカネ 「つなげてどうするの?」
シロ 「繋げることで人々の夢って広がっていくんだよね」
アカネ 「どういうこと?」
マル 「他人に影響を受けるつまり夢への『憧れ』を創るってことですか?」
シロ 「そうだね、それが夢の魔物の意志だね」
クウタ 「でも、なんでぼくはここにいるの?『夢のない』ぼくが」
シロ 「それだよ」
クウタ 「え?」
シロ 「夢がないと思っている『思い込んでいる』んだよね」
クウタ 「思い込んでる?」
シロ 「キミは気づいてないみたいだけど、それか気づかないフリをしているのかな?」
クウタ 「!?」
マル 「それがクウタくんを呼んだ理由ですか?」
シロ 「いいね!さすがの観察眼だね」
アカネ 「クウタの夢って?」
クウタ 「そ…それは…」
シロ 『みんなが幸せになること』
クウタ 「!?」
マコト 「みんなが幸せだと?」
シロ 「彼は実は誰よりも大きなそして純粋な『夢』を持っていたんだよ」
アオイ 「持っていた?」
シロ 「そう、彼は優しかった。しかし、それが災いして沢山の人にイジメられ夢も否定された。だから、『夢がない』と思うことにしたのさ」
タケル 「なんで、諦めちゃったのさ」
クウタ 「それは、ぼくなんかにはできなかったから…」
タケル 「………」
クウタ 「ぼくは、みんなが幸せになることを心から願っていたんだ………だけど、途中で気づいたんだ………みんなの嫌がることを押し付けられて、沢山バカにされて罵られて殴られて………ぼくの目指してきた『夢』はこんなものだったのか?って」
一同 「………」
クウタ 「だから、こんなに苦しいならいっそのこと『忘れて』しまおうって」
シロ 「これが彼の心のそこに刺さっていたものだよ」
一同 「………」
アカネ 「また、はじめよう」
クウタ 「え?」
アカネ 「また、はじめよう!いちからでもいいここから何度だってはじめれるよ!」
クウタ 「………はじめる?………ぼくにできるかな?」
アカネ 「きっとできるよ!クウタいってくれたよね!完璧じゃなくてもいいって!トモダチと助け合ってこそステキだって!だから、何度転んでも立ち上がればいいんだよ!」
マル 「アカネの云う通りです。転んでも立ち上がればいいんです。ひとつ大人になるたびにわたしたちは成長できます」
アオイ 「そう、人生は苦労が付き物!だけど、それを乗り越えた先に幸せがついてくるよキミのいうみんなの幸せ、そして、キミ自身の幸せがね」
タケル 「まあ、それでもくじけそうならいくらでも弱音を吐いてもいいと思うけどね。進んでるわけだし」
マコト 「これでも、お前は無理だと諦めるのか?」
クウタ 「………………やってみます………ううん、やりたい!もう一度夢に向かって走りたい!」
シロ 「覚悟は決まったみたいだね」
クウタ 「うん!ぼくはもう一度ここからはじめるよ!」
シロ 「さて、ワタシの役目はここまでだ」
アカネ 「え?」
シロ 「彼を連れてきたのはワタシだけどその後は彼の決断は彼にあったからね。そして、キミ達や夢をみた彼たちもね」
マコト 「これはお前が仕組んだことではないと」
シロ 「ああ、最後に決めるのは自分、わたしは夢を見せたに過ぎない長い人生でのほんの一瞬の『夢』をね」
暗転、
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