夢の誘惑とキミの思惑

タケル 「ねえねえ、マルちゃんの夢ってなにかな~?」

マル  「いきなりですね」

タケル 「気になったからね~」

マル  「そうですね。わたしの夢はおじいちゃんの様な探偵ですかね。

タケル 「探偵って事件とかをビシッと解決するあれ?」

マル  「世間からしたらその認識で間違いないと思いますが、本来は人探しやペット探しが多いいと思います」

タケル 「地味だね」

マル  「まあ、そんなものですよ。だけど、私はその地味なことでも真剣にやるおじいちゃんに憧れたんです」

タケル 「ふーん」

マル  「タケルくんはどうなんですか?」

タケル 「え?」

マル  「私に答えさせておいて自分は答えないなんて無しですよ」

タケル 「か~こりゃまいったね~」

マル  「さあ、答えてください。さあさあ」

タケル 「《命を救う人》かな」

マル  「命を救う?お医者さんとかですかね。それか、レスキュー隊もありますが」

タケル 「後者かな」

マル  「レスキュー隊の方ですか?」

タケル 「マルちゃんも知ってると思うけどぼくって、《もう家族がいない》からさ」

マル  「…はい、昔とある災害事故でタケルくん以外のご家族は亡くなってしまったと…」

タケル 「ぼくって普段のんきぶってるけど本当はただの怖がりの弱い奴なんだよね~」

マル  「………」

タケル 「あの時救えなかった命をぼくは救いたいあの時ぼくを助けてくれた人みたいにね」

マル  「………」

タケル 「………」

マル  「タケルくん、私は君を道を選べる人だと思っています」

タケル 「え?どういうこと?」

マル  「先程君は自分はのんきぶっているただの怖がりだといいましたがそれは自分の弱さを理解しているということです」

タケル 「それってかっこわるくない?」

マル  「寧ろ逆です。自分の弱さを知っていればどっちの道を進めばいいか分かるつまり道を踏み外さないということだと私は考えています。だから、自分を信じてあげてください」

タケル 「…ありがとう、マルちゃん」

マル  「辛いことを思い出させてすみませんでした」

タケル 「全然いいよ、むしろ話したことですっきりしたかな~」

マル  「なら、よかったです」


語り手S 「なるほどね、じゃあちょっと面白いことをしようかな」


 突然なにもないところに出るタケル後ろを向くがマルの姿がない。


タケル 「あれ?マルちゃん?」

 

 もう一度周りをみる。


タケル 「どこにいったんだろう。野糞かな?」



カケル 「よお!タケルこんなとこにいたのか」

タケル 「…え?………なんで?」

カケル 「なにがだ?」

タケル 「だ、だって…に、にいちゃんは…いや、かあさんだって…」

カケル 「かあさんなら家で飯つくってまってるぞ」

タケル 「!?…いや、違う…これは夢だ」

カケル 「夢でもいいんじゃないか?」

タケル 「え!?」

カケル 「人間誰しも夢をみたくなるものだ。夢の中だけでも自由にしていいんじゃないか?」

タケル 「…自由に…」

カケル 「お前はよくがんばったよ。なにもかも失って一人になったんだからな。だから、もう自由になろう」

タケル 「…そうだよね…もう、なにも抱えこまなくていいんだ」


 タケル、カケルの方へ歩み寄ろうとするが脳内でマルからいわれたことを思い出す。


マル  『タケルくん、私は君のことを道を選べる人だと思っています』


タケル 「………」

カケル 「どうした?」

タケル 「にいちゃん悪いけどまだそっちには行けないや」

カケル 「!?」

タケル 「ぼくはまだここに残りたいな(力強く後ろをみる)」

カケル 「…そうか。…ひじょーにざんねんだな~ひさしぶりに家族との時間を過ごせると思ったのにな~」

タケル 「かあさん達に謝っといてくれないかな」

カケル 「気にするな。ちゃんと伝えるよ、《自分の居場所をみつけた》ってな」

タケル 「ごめんね」

カケル 「謝るな。自分の決断を恥じるな」

タケル 「ありがとう」

カケル 「もし、自分の行動や生き方を信用出来ないっていうなら幽霊になって説教しに行ってやる」

タケル 「はは、出来れば今回だけにしてほしいな~」

カケル (何も云わずに微笑みながら消える) 


 立ち尽くすタケルのもとにマルが駆け寄ってくる。


マル  「タケルくん大丈夫ですか!?」

タケル 「え?」

マル  「急にいなくなるものだからびっくりしました」

タケル 「あはは、ごめんね~野糞野糞」

マル  「夢の中なのにしたくなるものなのでしょうか?」

タケル 「あいかわらず鋭いね~」


語り手S 「なかなか面白い結果になったね。では、今度はあちらにちょっかいを出してみようか」



アオイ 「ねえ、マコト」

マコト 「なんだ?」

アオイ 「素朴な疑問なんだけどさ、なんで、夢箱をみつけたの?」

マコト 「なんでそんなことを聞く?」

アオイ 「いや、深い意味はないけどなんか気になって」

マコト 「そうだな、結論からいうとおれにも分からん」

アオイ 「え?」

マコト 「自分でもなにを云っているのか分からんが呼ばれた気がしたんだよ」

アオイ 「箱に呼ばれたとでもいうの?」

マコト 「もしかしたらトレジャーハンターの性かもな」

アオイ 「キミって昔っから財宝だのお宝だのいってたもんね」

マコト 「お前こそ骨董品で喜ぶ古臭い奴だったじゃないか」

アオイ 「そんなこといったら財宝もお宝も似たようなものじゃないか」

マコト 「バカをいうな財宝は男のロマン骨董品は腐ったマロンだ」

アオイ 「キミ今すごい冒涜をしたよ、今度覚えといてね。かなり本気でメッタメタにしてあげるから」

マコト 「ふん、やれるものならやってみろ」

アオイ 「ほう、キミはわたしがキミに勝てないとでも思っているようだね」

マコト 「おれが本気を出せばお前なんか古壺の様に粉々にできるぞ」

アオイ 「面白い冗談いうね」

マコト 「…」

アオイ 「…」


 二人睨み合うがアオイがなにかに気づく。


アオイ 「ねえ、マコトあれ!」

マコト 「なんだ?そんな分かりやすい手におれが引っ掛かるとでも?」

アオイ 「キミじゃないんだからそんな小賢しいマネはしないよ」

マコト 「甘いな、おれはそんなことでは…」

アオイ 「いいからみろ(無理やりマコトの首を後ろにむける)」

マコト 「ぐう…首が!お前はゴリラか!おれの首をもぎ取る気か!?…ってなんだあれ?」


 マコトとアオイの目の先になにかの建物がある。二人はそこに近づき確認する。


マコト 「なんだ?なにかの店か?」

アオイ 「『アンティークトレジャーショップ』って書いてあるね」

マコト 「遊園地のアトラクションかよ」

アオイ 「ちょっと気になるしはいってみようか」


 二人ショップにはいる。


アオイ 「へえーなかなか面白いものがおいてあるね」

マコト 「ふん、あいかわらず古臭い奴だ…お!これは高そうなものだな」

アオイ 「キミこそ光ってればいいなんて考えが青いんだよ」

マコト 「おれにはその価値が分からんからな、分からんものを語られたところで到底理解出来ん」

アオイ 「まあ、強要させるつもりはないけど否定はしないでほしいな」

マコト 「否定なんてしていない思ったことを云っているだけだ」

アオイ 「その考え方は否定しないけどたまには寄り添ってもいいんじゃないかな?

マコト 「しかし、ここはなんなんだ?」

アオイ 「聞きたいことがあるんだけどさ、これってさキミの、《夢》だったりする?」

マコト 「は?どういうことだ?」

アオイ 「いや、わたしはこんなこと、《想像》してないからさもしかして、キミの、《想像》かと思ってさ」

マコト 「おい、まさかとは思うが…」

アオイ 「その、まさかかもしれないね」



語り手S 「なにかに気づいたみたいだね。さて、お次は…」


アカネ 「後はみんなと合流すれば万事解決だね」

クウタ 「そうだね」

アカネ 「いろいろ驚いたけどちょっと楽しかったね」

クウタ 「うん、みんないろんなことを夢みてるんだなって思ったよ」

アカネ 「そうそう、わたしも夢にむかってがんばらないとね」

クウタ 「いろのさんの夢?」

アカネ 「うん、わたしの夢はね《すてきなおとな》になることだよ」

クウタ 「すてきなおとなってなにかな?」

アカネ 「え?えっとそれはね、背が高くてキレイですてきな人かな?」

クウタ 「ほかには?」

アカネ 「えーっと、運動ができて頭がよくてだれかに助けてもらわなくてもなんでもできる人かな?」

クウタ 「…それってステキっていえるのかな?」

アカネ 「え?」

クウタ 「あっごめんね!いろのさんのいうことを否定したいわけじゃなくてそれはそれで《寂しい》なと思って」

アカネ 「寂しい?」

クウタ 「うん、うまくいえないけど完璧でなんでもできちゃったら周りからこの人は助けがいらないんだなって思われちゃって、本当に助けてほしい時に助けを呼べなくなっちゃうかもしれないと思って」

アカネ 「…」

クウタ 「それに、ひとりでなんでもできるようになりたいっていわれてちょっと寂しくなちゃうな。だから、頼りないかもしれないけど困ったときは頼ってほしいな」

アカネ 「ありがとう、クウタ。わたしちょっとだけ勘違いしてた。そうだよね!なんでも自分でできるようになるよりトモダチを信じて頼るのがステキなことだよね」


語り手S 「なるほどね、なかなか面白い考えだね。完璧にならなくてもいいきっと彼はそういいたいんだね。なんでもできることが完璧ではない。助け合っていくことで完璧とはいわなくても人は成長できるってことだね。さて、もうそろそろみんな集まるみたいだね。最後の仕上げといきますか」

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