第7話 学園紹介
午後の授業も無事に終わり、
帰りの
今日の放課後は特に
夜六と夏八に関係することはなく、
二人は自由な時間を手に入れた。
なので、これから二人は
もう一度PC室に行き、
調べられることを
片っ端から調査しようと思っていた。
だが、思わぬ所から
邪魔が入ってきてしまう。
「夜六と水都さん。
学校探検とかしたくない?」
そう明るい様子で
二人に話し掛けてきたのは、
茶髪を横に流してキメている男子生徒。
名前は
難波は他に男女の生徒を
二人ずつ引き連れて、
夜六と夏八の前に立つ。
その面子の中には、
他の生徒と比べてやや関わりがある
近藤陸と元木愛がいる。
「いやー、二人は今日来たばかりだろ?
だから学校の中を
一通り案内しようと思ってな。
皆もそう思うだろ?」
難波が同意を煽ると、
他の生徒達は頷く。
確かに、難波達の言い分は正しいことだ。
転校してきた人に学校の案内をするのは
どの学校でも常識としてある。
ただ、彼らが内心怯えながら
夜六と夏八に向き合っているのは、
今日の朝に質問で捲し立てて
夏八を怒らせてしまったという
負い目を抱えているからだろう。
今も実際、夏八の顔色は良くない。
それに元々、夏八はいわゆる陽キャが
あまり好きではないのだ。
夏八曰く、うるさいから嫌い、
ということらしいし、
【POISON】の中でも
完全なる陰キャの夜六と
任務に参加するのが
最も活躍できているくらいだ。
しかし、これからのことを
長期的に考えるなら、
ここでの選択はかなり重要になる。
だから、夜六は無理矢理にでも
夏八を連れていく必要がある。
「まぁ、きちんと学校のことを
把握しておかないと、
後々になって苦労するだろうからな。
ここは皆に甘えようか」
夜六は夏八に視線を向け、
短いアイコンタクトをする。
行くぞ、と。
夏八はそれで露骨に嫌な顔をすると、
小さく息を吐いて立ち上がる。
「…図書室って、どこにあるのかしら?」
夏八は夜六の言葉を理解した。
もちろん、夜六の言葉は
学校生活をする上で苦労するから、
という意味もあるのだが、
同時にスパイ任務においても
学校の中を自分の目で
見ておくに越したことはない。
だから嫌々でも夏八は同意したのだ。
「よし!そうと決まれば、
皆で二人を案内しよう!
皆も準備はいいか?」
「「「おー!」」」
学校の案内をするのに
何の準備が必要なのかと思うが、
彼らの心の準備ということで
ここは消化しておこう。
中には不安そうにしていた
生徒もいたようだが、
夏八が断らなかった時に
安心したようだ。
彼らは夜六と夏八を囲み、
7人という人数で
学校を探検することになった。
「この汚い色の教室が美術室」
夜六達が在籍している2年2組の他、
1年生から3年生は全5組まである。
クラスの教室がある棟(教室棟と呼ぶ)の
端の方に行くと、
芸術授業で使う教室がある。
今、夜六達がいる2階には美術室、
1階に書道室、そして3階に音楽室。
「楽器が置いてある音楽室」
この学園では入学する際に
美術、書道、音楽から
2つの科目を選ぶことができ、
選んだ2つの科目のうち、
その時の気分次第でどちらかの
授業を受けるシステムとなっている。
そして夜六が音楽と美術、
夏八が美術と書道を選択している。
「墨汁の臭いが充満する書道室」
かなり特殊なシステムで、
時折人数が偏って大変なのだが、
それでも上手くいっているらしいので、
やはりこの学園の先生達は優秀だなと
思い知らされる。
ともあれこれで、
教室棟の案内は終了だ。
──芸術室の反対側には
何があるのかって?
まぁ、空き教室とか文化部の部室とか
体育祭や文化祭で使うような
資材の物置部屋とかだな。
見てもつまらないし、
別にわざわざ案内するような
教室は一つもないぜ?
そんなことより、特別棟に行こう。
「空き教室か…」
せっかくの機会なのだから
芸術室の反対側の方も
見ていきたかったのだが、
難波は面白くないからと
そちらの方には行かなかった。
他のクラスメイト達も同意のようで、
夜六と夏八を特別棟
(教室棟とは2階の渡り廊下と
1階の吹き抜けの道で繋がっている、
職員室や学園長室がある棟)の方に
行くように促してくる。
そんな彼らに意見して
無理矢理に見にいくことはできるが、
変に疑いを持たれても困るだけだ。
ここも、素直に従っておこう。
「ケガをしたらここ、医務室」
教室棟よりも綺麗な廊下や壁。
来客が来るとすれば
こちらの特別棟がメインになるので
当然といえば当然だが、
教室棟の廊下もこれくらい
綺麗にならないものか。
生徒達の掃除にも限界はあるのに。
「ほとんど来ない事務室」
夜六と夏八が学園長に連れられて
初めて校舎に入った時のあの来客用の
玄関の正面にある事務室。
一体普段はどのような
仕事をしているのか知らないが、
この学園を調査する中で
判明するだろうから、
今はパソコンに向かって
何かしらの作業をしている
女性を一瞥するだけだ。
「使ったこともないし、
使われたという話すら
聞いたことがない応接室」
高級そうな木製の扉の先には、
どんな景色が広がっているのか。
それはこの学園にいる
ほとんどの生徒が知らないことだ。
いつか、この部屋を使う時が
夜六や夏八に来るだろうか。
「1階の最後はここ。
あの超エリートっぽい感じの
我らが学園長の学園長室」
夜六と夏八は転校初日の朝、
つまりは今朝入ったばかりだが、
やはりこの部屋は他の部屋に比べて
雰囲気に趣きと重みがある。
前を通り過ぎるだけで
思わず吸い込まれてしまいそうになる。
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