第8話 人助け
〘ウォータースコープ〙を開発した数日後、カイナは最近の趣味である、窓から外を〘ウォータースコープ〙で観察をしていた時だった。
「なんだあれ?」
数キロ先の森の中の少し開けた場所に、全く動かない馬車を見つけた。
「見えないなぁ」
カイナが〘ウォータースコープ〙を調整してよく見てみると、どうやらその馬車は横転しており、そのまわりにはが赤い虎がいるようだった。
「魔物だ!」
これまでの観察で、森の中にはかなり魔物がいるのがわかっている。
どれも色とりどりなのだ。
カイナがアルフに聞いたところ、魔物は魔力を身体に貯えており、他の魔物を倒すことで、魔力が増えるらしい。
なので、目立つ色をして、戦いを多くしているのではないかとこの世界では考えられている。
そして、その魔物がよく攻撃や防御に使う場所は、魔力がよくたまっていて、武器防具の素材として最適なのだそうだ。
それはさておき、どうやらあの赤い虎と戦っている人がいるようだ。
しかし、何人か倒れている。
これを無視するのは心苦しいと考えたカイナは、助けに行こうとした。
しかし、その馬車とカイナの部屋はかなり離れている。だいたい1キロ程だろうか。
この距離を行くには、空でも飛べないと間に合わないだろう。
「どうしよう?」
カイナがとりあえず精霊に魔力を渡そうとした時、
「あっ!精霊か!」
人が手に入れた精霊には、実体がつき、人が触れることができる。
そのため、精霊に乗って移動することも可能であるのだ。
「ウォルテナ!行くよ!」
カイナがそう言うとウォルテナは少し光って反応を返した。
早速ウォルテナに乗って空を飛ぶと、想像以上に空気抵抗が大きかった。
そこでカイナは、水を使い、円錐の形を作って、体の前で固定した。
「ッ!」
そうして倒れていた馬車の近くまで行くと、赤い虎が急に正面に現れ、爪を使ってカイナを攻撃した。
しかし、円錐の水を貫通できず、カイナに攻撃が及ぶことは無かった。
「こっちの方が上らしいな!」
カイナはそう叫び、〘ウォータージェット〙を虎の首に向けて上から加速させて流した。
グガアァァァ!
断末魔の声を上げ、虎の首は地面を転がった。残った体はドシャッ!と音を鳴らして下に落ちていった。
「大丈夫ですか?」
カイナが先程まで虎と戦っていたいかにも騎士といった風貌の男に聞いた。
「空から降りてきた…?何者ですか?」
「ヴァハトゥン家の次男のカイナです。
どうやら致命傷の人はいないようですね」
「あなたがあの辺境伯家の神童ですか!」
「神童?」
どうやらカイナが、あっという間に言葉を覚えたことなどが知れ渡っており、そのように呼ばれているらしい。
「すみません、
私たちはヴァハトゥン家に向かう途中でしたが、魔物に襲われてしまったのです。
護衛していただけますでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「すみません!ありがとうございます!
もう安全ですよ!シャルさま!」
「ほんとですか?」
そう言いながら馬車から出てきたのは、白髪で緑色の目のカイナと同じ年齢くらいの女の子だった。
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